Aさん(51歳・男性)は、夜眠っているときに突然、右上の奥歯に強い痛みを感じました。
「突然ズキーンとした痛みが出て、いきなり歯が痛くなりました。それから一睡もできませんでした」
翌朝、歯科に駆け込みますが、歯に異常は見つかりませんでした。それでも処方された痛み止めの薬をのむと、次第に痛みは和らぎました。
ところが、やがてまた異常が現れました。それは不快な臭いでした。
「とにかく臭い。においのかたまりみたいなものがあって、それをずっと吸っているような感じ。何を嗅いでもにおいがしないし、ご飯を食べても味がしないんです」
さらにひと月後、今度は突然、鼻水がダラダラと出るようになりました。
「マスクをしていると、マスクの中に薄緑がかった色の鼻水が出てくるんです。かなり不快です」
大量の鼻水に悩まされたAさんは、耳鼻科を受診しました。診断の結果は副鼻腔炎でした。
そして意外なことに、その原因は歯だというのです。
歯性上顎洞炎とは?
Aさんは、10年ほど前に奥歯の虫歯の治療を受けていました。そのとき治療した歯の根元が何らかの原因で炎症を起こし、その炎症が奥歯のすぐ上にあり、上顎洞と呼ばれる副鼻腔にまで広がっていたのです。Aさんの上顎洞には、炎症によってできた膿がたまっていました。この状態を歯性上顎洞炎といいます。
Aさんの治療は、歯科医と耳鼻科医の共同作業で一気に行われました。まず、歯科医が炎症を起こしている歯を抜き、膿を出します。続いて耳鼻科医が、副鼻腔の腫れた粘膜や、残った膿を取り除きます。あわせて2時間ほどの手術でした。
治療を受けたAさんは、すっかり回復しました。「全然不快感がなくなりました。くさいにおいもないし、呼吸もしやすくなったし、楽になりました」