Aさんは5年ほど前、食べたり飲んだりすると口の中に痛みを感じるようになりました。
「ものをかんだりすると、ときどき痛みが出たんです。下の歯も上の歯も両方ですね。しみるっていうこともあったしね。冷たい水なんか特にしみる感じがしてましたね。」
痛みをなんとかしたいと思ったAさんは、近所の歯科を受診しました。すると歯が何か所か、すり減っていることがわかりました。
歯がすり減る原因は主に3つあります。
1つは「酸蝕(さんしょく)」。かんきつ類や酢などの酸性の食品を食べたり、逆流性食道炎で胃酸が口まで逆流したりすると口の中が酸性となり、その酸によって歯が溶け、すり減りやすくなります。そして「摩耗(まもう)」。研磨剤入りの歯磨き粉を使って歯を強く磨き過ぎると、歯がすり減ります。さらに、寝ている間の「歯ぎしり」や「食いしばり」によって歯がすり減ることもあります。
Aさんの歯は酸蝕歯でした。それに加え、寝ている間の歯ぎしりもあり、歯がすり減ってしまったと考えられました。
近所の歯科医から「手に負えない」と言われてしまったAさんは、別の歯科を受診。そこで、すすめられたのが、「コンポジットレジン」と呼ばれるプラスチックにセラミックスを混ぜた材料を使って歯の修復を行う治療でした。
コンポジットレジンは、もともと虫歯の治療に多く使われているものです。虫歯の治療に使う場合、まず虫歯の部分だけを最小限、削ります。そして削った部分に接着剤を塗り、その上にコンポジットレジンを充填しながら形を整えます。コンポジットレジンはLEDの青い光をあてると固まる素材です。再び歯に接着剤を塗り、コンポジットレジンを充填(じゅうてん)します。この作業を何回も繰り返し元の歯と同じようになるまで修復していくのです。
特殊な技術を持った歯科では、このコンポジットレジンを使って、虫歯の治療だけでなく、すり減った歯の修復を行うことができます。Aさんは、上の歯を13本、下の歯を3本、コンポジットレジンで修復してもらいました。すると痛みはすっかりなくなりました。
「今はもう全然痛くない。年にしたら歯がきれい過ぎるんじゃないかと言われます。先生様々ですよ。」
Aさんは、歯ぎしりで再び歯がすり減るのを防ぐため、現在はマウスピースをつけて寝ています。