ひざの痛みのために、日常生活がままならなくなった場合は、手術を選択することがあります。
手術には、大きく分けて「骨切り術」と「人工ひざ関節置換術」の2つの方法がありますが、特に高齢者の患者さんは「人工ひざ関節置換術」を選択する人が多いです。
人工ひざ関節置換術とは?
簡単に言うと、すり減って変形してしまった軟骨の表面を、人工的な部品(人工関節)に置き換える手術です。
人工関節は、関節の滑らかな動きを再現できるように、大腿骨部(だいたいこつぶ)・脛骨部(けいこつぶ)・膝蓋骨部(しつがいこつぶ)の3つの部分からできています。
大腿骨部と脛骨部の本体は金属製ですが、脛骨部の上面と膝蓋骨の表面は耐久性に優れた硬いポリエチレンでできていて、これが軟骨の代わりになります。
次に、手術の手順について説明します。
①まずはひざの前面を切開し、大腿骨(だいたいこつ)、脛骨(けいこつ)、および膝蓋骨(しつがいこつ)の痛んだ部分を削ります。
②金属の形にあうように骨を形成していきます。
③最後に専用のセメントなどを用いて、金属やポリエチレンでできた人工関節を骨に固定します。手術は1時間半~2時間前後で終了します。
最先端のロボット支援手術
これまでの人工関節の手術は、医師の経験や腕に頼る部分もありましたが、最近では、ロボット支援手術の導入によって、かなり精度が向上しています。
具体的なメリットとしては、これまでは、すべての患者さんに、ほぼ同じ角度で人工関節を入れていたのに対し、ロボット手術では患者さんそれぞれにぴったり合うように角度を細かく調整することが可能になりました。例えて言うなら、制服からオーダーメイドの服に変わった状態と言えます。
また、人工ひざ関節全置換術のまれな合併症の一つに、関節周りの神経や血管の損傷がありました。しかし、ロボット支援手術では正確に骨だけを切ることができるので、ひざの後ろ側の神経や血管はもちろんのこと、関節周りの靭帯や腱の損傷も防ぐことができ、術後の回復も早いといいます。
そして、手術をすることで、痛みがほとんどなくなって、歩けるようになり、O脚だった足もまっすぐになる人が多いといいます。そのため患者さんの満足度も高まっています。
しかし、人工関節手術後は、まれに傷から菌が入り、感染症を起こしたり、血栓を作ってしまうこともあるため、注意が必要です。
このロボット支援手術は2019年には保険適用になり、導入する病院が増えてきています。2023年9月現在、全国で約70台が導入されているとされています。患者さん個人にカスタムメイドされた手術が行えるため、今後のさらなる発展が期待できるでしょう。
下記は、ロボット支援手術の手術現場を撮影した貴重な動画です。人工ひざ関節置換術のロボット支援手術が実際にはどのように進められるのかがよく分かる映像です。帝京大学の中川匠教授による手術です。