半月板損傷の症状と治療法 縫合術と部分切除術それぞれのメリット・デメリット

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変形性膝関節症ひざ痛足・脚

40代以上は要注意!半月板損傷

半月板の場所

「半月板損傷」と聞くと、スポーツ選手のけがなどを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?確かに、スポーツ選手のけがで多く起こりますが、実は、スポーツをしていない人でも加齢によって起こる可能性のある病気なのです。ひざは、曲げたり伸ばしたりするだけではなく、ねじり・すべりなどの動きも同時に行い、複雑に動きます。そのため、40歳を過ぎた頃には、半月板は劣化していると言われています。

ひざの関節には、太ももの骨「大腿骨(だいたいこつ)」と、すねの骨「脛骨(けいこつ)」があり、それぞれ骨の端の表面は、「軟骨」で覆われています。その骨と骨の間で、衝撃の吸収とひざ関節を安定させる役割を果たしているのが「半月板」です。「半月板損傷」は、その半月板が破れたり、切れたりするひざの病気です。

ひざの痛みだけじゃない!半月板損傷の特徴的な症状

半月板損傷が起こると、「ひざの痛み」、「ひざのひっかかり感」、「ひざに水が溜まる」などの症状が起こります。また、ときに、衝撃によって裂け目が生じ、ささくれたような状態になった半月板は、関節の骨の間に挟って、急にひざが動かなくなる「ロッキング」と呼ばれる症状を起こす場合もあります。ロッキングが起こった場合、激痛が伴うことも少なくありません。

X線には映らない「半月板」

「半月板損傷」と診断するために有効な検査は、「MRI検査」です。X線検査では、半月板が映りません。

半月板損傷のMRI画像
半月板損傷のMRI画像

半月板損傷のMRI画像

これらは、右ひざを横から見たMRI画像です。 どちらも同じ画像ですが、左図は赤い三角で半月板の位置を示しています。右図を見てみると、黄色い矢印の先に白い亀裂が見えます。これが半月板の損傷箇所です。

半月板損傷の治療~手術は温存が主流に

半月板損傷の治療には、「安静」、「痛み止めの薬」、「ヒアルロン酸注射」、「足底板」、「運動」、「手術」などがあります。「痛み止めの薬」は、痛みや炎症を抑える目的で「消炎鎮痛薬」の、のみ薬・塗り薬・貼り薬を使用します。「足底板」は、医療用の靴の中敷きのことで、損傷した部分に負荷がかからないようにして、悪化を防ぐために用いられます。手術には「縫合術」と「部分切除術」の2つがあります。

縫合術

切れた半月板を縫い合わせる手術

切れた半月板を縫い合わせる手術です。

【メリット】

  • 縫い合わせて元の状態に戻すため、半月板の機能を温存できる
  • 比較的 激しいスポーツでも、また楽しめるようになる

【デメリット】

  • 半月板は血行の少ない組織なので、回復まで時間がかかる(術後4〜5週で全体重をかけられ、術後3か月でランニング開始、術後6か月でのスポーツ復帰が目標。)

部分切除術

半月板を部分的に切り取る手術です。

半月板を部分的に切り取る手術

【メリット】

  • 回復が早い(手術直後から歩行が可能。手術後1週間ほどで日常生活に支障がない程度まで回復。)

【デメリット】

  • 将来、変形性ひざ関節症になりやすくなる

部分切除術は、損傷が複雑で「縫合術」の条件を満たさない場合に行われます。回復は早いのですが、関節への安定性を保つ半月板の機能が失われるため、軟骨がすり減って骨が変形してしまう「変形性ひざ関節症」になりやすくなります。そのため、可能な限り縫合術を行って、半月板の機能を温存するという考え方が最近は主流となっています。

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年5月 号に掲載されています。

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