【第3回】発災時 データで命は守れるか ~電力データ編~
二瓶(東京理科大学):元に戻るような話になってしまうかもしれないんですけども。「どういう形でこのプロジェクト・検討会の内容を広めていくか」というお話だったと思うんですけど、多分それは中身によって相手先は絶対違うだろうと。論点の1つ、個別のデータが、新しく災害の被害軽減に使えるんじゃないかっていうのが人流であったり車の流れであったり、他にも色々出てくるんでしょうけども。多分それを全部一緒くたにして意見をまとめるというのは難しくて、個別に、それこそいろんな学会、学者等の検証を経て、色々な事例、研究をどんどん増やしていくんだろうなあと思います。多分、この検討会の1番の大元っていうのは「いい事例があるんだから、ちゃんとデータを一元管理しようね」っていう提言が、この検討会の本丸なんじゃないのかなって思うんですよね。それをこう、無限のデータに対して全部言うっていうのは無理がありすぎるので。本日参加いただいている、さまざまな車のデータをお持ちの業界の皆さんとか、もしくは人流データなども、各社バラバラじゃなくて、やはりある程度どこかで管理できるものですよね。さっきの電力の話も素晴らしいと思うんですよね。それがいろんな場所にまたそれぞれのデータをとりにいくんじゃなくて、防災科研さんかわかりませんが、どこかでデータがまとまっているとかですね。そういう提言をするのが、この検討会なのかなと思うので、どこでアピールするかって言うのは中身によってもちろん変わってくると思います。
関本(東京大学):データの管理という意味でも大事なのが、車の業界はITS Japan様から第2回の検討会でお話をいただいたように、ちゃんと車の業界自体では標準化を進めてきていらっしゃるし、今日のスマートメーターの話も業界で、まとめるっていう作業を始めている。でも例えば人流でいうと若干微妙かなという部分もあったり。業界によってそれぞれっていう部分もあるから、例えばせめて、「業界ごとにはちゃんとまとまりましょう」っていう提言をするとか。そうすると、プラットフォームなどで集める時もやりやすいですよねとか、そういう話はあるかもしれないですね。特に災害は、1つのデータソースではすまないので、マルチなデータがやっぱり必要なので、そういう意味で、ある程度、業界単位くらいではまとまると使いやすいですっていうのも、よい提言だろうと思います。
朝倉(レスキューナウ):プラットフォームを考える上では、「防災・災害だから国や行政が先で、まずそこを固めましょう」ではなくて、官でも使うし、民でも使うし、っていうのを一緒に、同時並行で進めた方がいいかなと思います。けっこう民間でもいろんな取り組みをされているんですけれども、同じテーマで国主導で走ってしまうと、そこって競争みたいになってしまうので、連携がうまく進まない事例っていうのもあるのかなと思うので、「国でやるから」っていうことだけに絞らずに民間で利用するっていう視点も当初から想定として入れて検討すべきかなと思います。で、そういうコメントが入ると嬉しいなと思いました。
関本(東京大学):そうですね、確かに、あんまり国主導感が出てしまうと、民間業界側で行っている災害時の対応の検討が無視されてしまうので、初めから民間も関わってやっていくという感じですね。
朝倉(レスキューナウ):国主導でも構わないと思うんですけれども、民間で使うシーン、使う場合、活用の場合っていうのを同じテーブルで議論されるといいのかなあと思います。
関本(東京大学):ありがとうございます、重要な視点だと思います。
柴山(Agoop):コロナ禍において実際、飲食店が活動を活発化しているかを分析するには電力データは重要です。電力データが民間で活用できるようになると、地域ごとの経済指標分析などで普段使いできるようになります。地域ごとの経済指標を見ることは、不動産業界、金融業界には非常に重要です。スマートメーターでリアルタイムにわかるデータは民間活用でも欲しいデータだと思いました。ただ、やはり自治体さんへの提供が前提になっているので、個人情報を秘匿化して電力の増加減状態を見ることで、地方自治体が地域の経済復興の状態は把握できるかなと。
またデータプラットフォームについては、あるかないかといえば、別目的利用、要するに災害目的ではないところで存在はしています。そういったものをもう少しブラッシュアップして活用していく検討も必要だと思います。
関本(東京大学):確かに既存で既に多くのデータが集まっているところもあるので、有効活用、連携する形でうまく使うという視点、とても大事だと思います。
村上(損害保険ジャパン):データを入れる方のモチベーションについての提言も入れた方がいいかと思っています。やはり、社会貢献的企業がこういうデータを供出する時ってコストもかかるので、社会貢献的意義だけでは、インフラを継続的に維持していくっていうのはかなり厳しいと思っています。災害復興以外の利用にも使われて、それが使われるプラットフォームを維持するだけじゃなくて、データを供出する側にもきちんとメリットがあるような形で運営していくっていうことをきちっと考えていかないといけないということを提言に入れてほしいかなというふうに思いました。
地方創生的なものっていうのは、その地域が活性化すれば、そのデータを使って活性化したことでそのデータを供出した企業が恩恵を受ける事もあるでしょうし、あるいは復興をすると、私は災害保険の会社ですけど、その地域の復興が早ければ、被災された地域のお客様の日常が1日でも早く戻るということで、利点になったりというような、そういうモチベーションっていうのが各会社でそれぞれあると思うんですね。もちろんプラットフォーマーが全部考えることはできないにしても、ユースケースをシェアしたりだとか、そういう活動っていうのはきっちりやっていくというのを提言に入れておくといいかなと思いました。
関本(東京大学):重要な視点だと思います。やっぱり保険会社さんから見ると、それぞれ被災地が早く日常に戻るというのは、会社的にも大きなモチベーションだと思ってよろしいんでしょうか。
村上(損害保険ジャパン):そうですね、お客さまの満足度っていうのが、次の契約の更新だとか、次のお客さまへのレピュテーションにもつながるので。災害が起こった時というのは、1日も早い復興というのを、もちろん契約者様もそうですし、契約していらっしゃらないその地域の方たちっていうのも、復興を1日でも早く、というのは保険会社の使命としては考えているところです。
杉田(日本道路交通情報センター):私もいつも、こういう検討会に入ると、必ず「実際こういうものを作りましょう」「それをどうやって運用していこうか」ってなったら議論、そこで止まるんですね。入力するデータが民間の方だともっとハードルが高くなって、「その費用はどうするか」となるんですけど、今までの経験からうまくいった例ってほとんどないんですね。こういう情報って絶対に止めてはいけない情報なので、いろんなリスク分散しなければいけないとか考えると、費用もけっこうかかるので、この議論というのはすごい、技術的な部分ではないと思いますけど、重要なお話なのかなと思います。
柴山(Agoop):データを収集する企業の視点で言うと、まずコストの部分はデータが売れなくてもコストはかかります。人流データの場合もまず社会貢献としてコロナ対応でメディア関連に無償で提供した事でコロナ禍の2021年度、2022年度、収益が下がらず逆に上がりました。これはなぜかと言いますと、「人流データってこういうことに活用できるんだ」っていう、ある意味、民間事業者から見るとコマーシャル的な要素になりました。人流データの活用事例を世の中に知らせたということが売り上げに繋がりました。収益に繋がるビジネスモデルを作れる事業者が最初無償で提供し、そのあと収益化するビジネスモデルを構築する事が重要です。またデータ提供するだけでは全然ビジネスにならないことも理解しています。情報化しないと意味がない。インフォメーション化してさらに、具体的な活用事例や活用効果を作り上げなければマネタイズにならないので、そこまでやるとビジネスモデルが確立して売り上げも上がりはじめています。
村上(損害保険ジャパン):今、ビッグデータの活用でベネフィットを考えている企業が多いというのはまさにそうなんですけれども、むしろインフラを担っている会社って、弊社もそうなんですけど、昔からあるけっこう大型の会社で、そういうビジネスモデルを考えるところができていないところが多いので、メンタリティを変えていかないと、インフラの会社からのデータはなかなか出てこないんじゃないかなと思います。
7.発災時リアルタイムデータ利活用 促進のためにできることは
9.「発災時 データがどう生きるか」 知見共有と積極的検証が不可欠
15.実現のために 収益化の具体的議論も
↑第2回検討会の議論はコチラから