【第3回】発災時 データで命は守れるか ~電力データ編~
臼田(防災科学技術研究所):ありがとうございます。大変素晴らしい取り組みだと思います。今後のデータ提供スケジュールも組まれておりましたので、このまま進行していただけるといいなと思います。
質問として、国や自治体にデータを提供するといった時に、どのシステムにどのような形でデータを提供していくという想定になっているのでしょうか。たとえば自治体であれば、1800の基礎自治体から、要望があればその基礎自治体に対して、どういう形で提供していくイメージなのでしょうか。
田村(送配電網協議会):電力データ集約システムでは、「収集・蓄積」「抽出・加工」「公開」と、大きく3つのステップを考えております。収集した全データから必要なデータを取り出して公開するということで、今我々といたしましては自治体さまごとに、その自治体さま専用のフォルダを用意いたしまして、そのフォルダの中にご依頼いただいたデータを格納し、そのデータを国・自治体さまから取りに来ていただく仕組みを検討しています。現状、託送業務として、小売電気事業者さまに30分値を提供しております。その仕組みは、各小売事業者さまから事業者ごとのフォルダにファイルを取りにきていただくという仕組みで成り立っておりますので、その仕組みと同等な仕組みを構築し、データを利用していただく。当然APIのような自動的に取りに来ていただくということも可能ですし、あるいは画面からこの公開フォルダにアクセスいただき、ダウンロードしていただくなどをご提供の手段として準備するということを今検討しています。
臼田(防災科学技術研究所):組織ごとにフォルダを用意し、そこにデータを置くというやり方はSIP4Dもほぼ同じやり方をしております。SIP4Dと貴社システムを連接すれば、元々SIP4Dにデータを取りに来ている自治体は、SIP4Dから電力データを取得できるので、2か所に取りに行かなくて済むようになるかと思います。その辺りはまた今後、具体的にぜひ議論させていただければと思います。もう1つ質問ですが、提供されるデータの範囲は「自分の自治体のみ」など、制約はあるのでしょうか。
田村(送配電網協議会):現段階でご提供できるのは、あくまでも各自治体のエリアだけです。というのは、管理していない自治体のデータ、個人情報まで提供するのは、こちらの通達には定められていない状況だからです。あくまでも自治体が管轄しているエリアの部分をお渡しするという前提で今は検討しております。
臼田(防災科学技術研究所):災害時、「自分の自治体だけ見ていれば対応が取れる」ということは決してなくて、特に隣接している自治体がどういう状況にあるのかということを分かった上で、自分の自治体の対応を取らなくてはいけないケースがたくさんあります。そういう意味でぜひ、自分の自治体という枠での提供ではなく、各自治体にとって必要なエリアを、その自治体が指定できるとか、そういう形での提供も可能性を検討していただきたいです。また、その際に個人情報の問題は当然あると思いますので、そこをどのようにクリアするかというところも議論のポイントかと思います。
もう1点、発災警戒時からデータを出すことを考える中で、自治体間の要請に基づいて出していくという話がありました。これは電力だけの問題ではなくて、他の分野でも同じような課題があります。たとえば物資も要請があってスタートしますし、災害救助法も本来は、適用の手順があります。一方で、近年の災害時にはその要請を待っていては対応できないということも明確になってきて、災害救助法適応も「みなし適応」が始まっていますし、物資も、プッシュで支給をしていく流れにもなってきています。いずれこの電力データの話にしても、プッシュ的に災害時に急に切り替えるよりも、なるべく平時から常に提供できる仕組みがあり、災害時もそのまま継続提供できる形が望ましいのではないかなと思います。その辺りも今後、ご検討いただければと思います。
田村(送配電網協議会):まさに具体的にところは、資源エネルギー庁含めて、通達内容の議論が今後あると思っています。我々からも、今いただいたご意見につきましては、資源エネルギー庁へ伝えていきたいと思います、ありがとうございます。
三家本(熊本県危機管理防災課):令和2年7月豪雨のときを鑑み、質問をさせてください。
まず、「住民が避難をしたかどうか」。まだ在宅しているのか、あるいは家からもういなくなったのかを、リアルタイムに電力使用量から確認できるのでしょうか。
また、災害、水害、あるいは土砂崩れが発生してですね、家が危険な状態、土砂崩れに巻き込まれた、あるいは水害で飲み込まれてしまったということが電力の使用状況から確認できるのか。非常に興味深く感じました。
我々自治体、特に市町村ですが、やはり被害状況の確認は非常に苦労しまして、あらゆる手を使って、危険をある程度回避しながらやっていくんですが、電力データから把握できるのであれば、非常に初動対応に使えると思います。
田村(送配電網協議会):電力データの30分値の波形に関し、人が在宅しているのかどうかなどの分析を始めたところです。一般的に言われる内容としては、冷蔵庫ですとか電気で動くものがありますけれども、当然在宅していると電子機器のオンオフがあり、その量に応じてある程度、人の在宅状況が、推定の域にはなると思いますが分かるのではないかと言われています。
被災の状況については、過去の土砂崩れや水害、過去の災害状況を見ますと、当然家屋で何かあれば電気を送る線が被害にあっていることが多いと思います。また、水害ですと屋内の配線等で漏電が起こるという状況があります。そういった場合、停電と申しましても、それが家屋による停電なのか、それとも電力会社の設備に基づく停電なのか、あるいは、そもそもこのスマートメーターのデータというのは通信し収集していますので、その通信経路の問題なのか等、様々な要素が入ります。よって、災害状況は、一概にはスマートメーターの情報だけでは判断がつきにくいのではと感じております。
三家本(熊本県危機管理防災課):各地域の状況がどうなっているか、たとえば「水に浸かってしまったのか」、土砂崩れも大規模になるとかなりの戸数を巻き込みますので、そういったことがもし電力メーターから、ある程度わかるとですね、我々人命救助の判断をする際や、救助機関についても非常に有意義なデータと思いました。また引き続き、こういった情報提供をお願いいたします。
二瓶(東京理科大学):ぜひこのシステム、どんどん進展していっていただけると大変ありがたいと思ってお話を伺っておりました。「どのくらい浸水すると停電するか」という情報がどれくらい整理されているのでしょうか。
田村(送配電網協議会):浸水と停電との関係は、明確にはまだ分析されていないというのが現状だと思います。基本的には、電気の配線はコンセント等含めて、水が入ってくると漏電が発生すると想定されますので、ある程度の床上浸水になれば停電は起こる確率が高くなると考えます。
二瓶(東京理科大学):私の専門ですと、「川の氾濫がどう起こっているか」「いつどれくらい氾濫が進んでいるのか」というのを研究していますが、たとえば電力の使用状況とか停電の情報と、「実際どう氾濫が起こっていたのか」とを比べることができると、「平均的にこれくらいの浸水だとこれくらい停電している」とかですね、そういう情報にうまく生かせるんじゃないかとお話を伺っていて思いました。今後、分析のために電力データをご提供いただけるとありがたいなと感じました。
電力データの提供先が各自治体というお話がありましたが、電力データは本当に様々な活用の仕方があり、先ほどご説明いただいた例は本当にごく一例ではないかと思いました。そうすると、自治体だけではなく、いろんな民間企業、可能なら我々大学等にもですね、データを提供いただいて、スマートメーターのデータをうまく利活用できるようになればいいのではと思いました。まだデータ提供に関しては規制が厳しい状況でしょうか。
田村(送配電網協議会):我々も様々な大学の先生方などとお話する中で、ご相談いただきます。一方、国の審議会におきましては、昨年の3月の審議会でご審議いただいた中では、消費者団体の方などから、「機微なプライバシーの情報なので、ユースケースを積み上げてしっかりと確認した上で提供を広げるべき」という意見もあったと認識しております。
現状といたしましてはまず、これからユースケースを積み上げていくというところで、まずは限定したところからスタートするというのが資源エネルギー庁を含めた見解と認識しております。今後、議論が活発になることにより、様々な活用事例を積み上げていくことになると思っております。
二瓶(東京理科大学):おそらく自治体も、大きなデータをもらっても、なかなか活用が限定的になってしまう気もします。ぜひ様々な民間企業等にも使えるような形にし、活用の仕方を見出していくと良いと思います。もちろん個人情報やプライバシーは確実に守るという形で。地域ごととか、個人宅が限定されないやり方は、既に様々なところでやっていると思いますので、ぜひ各データの利活用状況についても情報収集されたらよいのではと感じました。
関本(東京大学):今の話はすごく大事なところで、自治体以外の方もうまく普段から使っていくことが、災害時にも使える早道かと思います。携帯電話のデータの歴史などを振り返っても、「あれを有効活用できそうだよね」みたいなところから人流データが生まれたという歴史もあります。電気通信事業法とか、もちろん個人情報保護法とかその辺も、きちっと管理した上で、「通信の基地局の情報をどうやって活用していくか」という点に繋がったりして、個人情報はちゃんと秘匿化して、集計したりするわけなので、そういう意味では電力データもかなり近いことができそうな気はします。
田村(送配電網協議会):まずは、この制度をしっかりスタートさせることと認識しております。これからまさにユースケースを積み上げていき、ゆくゆく、どういう活用をするのかというのは適宜ブラッシュアップしながら、まずはしっかりベースであるデータ提供を動かしていくことと思っております。
今後、しっかり電力データのご提供ができるように仕組みを作ってまいりたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します、ありがとうございました。
関本(東京大学):ありがとうございました。
7.発災時リアルタイムデータ利活用 促進のためにできることは
9.「発災時 データがどう生きるか」 知見共有と積極的検証が不可欠
15.実現のために 収益化の具体的議論も
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