【第3回】発災時 データで命は守れるか ~電力データ編~
田村(送配電網協議会):では、システム化されましたら、どういったことができるのか。まず1つ、一般的に言われていますのが、「防災計画の高度化」です。時間時間ごとの、地域別の滞在者数がある程度把握できるようになりますので、例えば避難所のボリュームですとか、あとはそこに備えておくもの、そういったことの準備に使えるのではないか。
田村(送配電網協議会):そして「避難誘導」。発災時に、「ここに取り残されている人がいる」ですとか。あとはあらかじめ、要支援者、すなわち地域の住民で少し手を貸してあげないといけない人などを事前にご登録いただくことにより、そういった方々の状況把握などができるのではないか。
田村(送配電網協議会):店舗についても、電気の供給の状況が分かりますので、稼働している店舗の把握に使えるのではないか。こういったことを審議会を通してご議論いただいております。
田村(送配電網協議会):システムの整備スケジュールについては、検討をスタートしており、今、目標としているところですと、2023年上期。具体的には来年の9月には東京で。10月は中部・関西など大都市圏で電力データの提供をシステムを介してできるようにと考えております。2024年上期には全国エリアで。まず、第1弾としましては、月次・日次データということで、やはり30分値・30分ごとに計測はしているのですが、まず来年9月の時点では「前日の状態を翌日の朝にはご提供できるように」と、いうことで考えています。
一方、リアルタイムデータ提供について。こちら30分値を収集して、それを1時間以内とか、そういうタイムリーな状況でお渡しできるようにというのは、2025年4月にご提供ができるようにと、今現在システムの構築を検討しています。
田村(送配電網協議会):平時の電力データ活用につきましては、「社会的課題の解決」ということで、災害等に関わらず電力データを活用できる仕組みも検討すべきというところで、審議会でご議論いただきました。社会課題解決につきましては、今年4月に施行された内容であり、電力データは無条件でお渡しするということができませんので、国が基準に基づいて認定を行う「認定電気使用者情報利用者等協会」が、需要家さまの同意をいただいたものに限り、情報提供先に情報が提供できる仕組みとなっております。具体的には、電力データ管理協会が今年6月に国の認定を受け、今後、この社会課題解決にも電力データを活用できるように、具体的な業務の内容など整理を始めているところです。
田村(送配電網協議会):社会課題解決としてどんなことが期待されているのか。「防犯対策の強化」「空き家の状況把握」なども電力データの状況で分かりますので、こういったことに活用できるのではないか。「犯罪の防止」ということで、銀行などお客様との契約の情報がありますので、その契約の情報と銀行等で口座開設等、依頼を受けた情報、そちらと照合することで不正な口座開設の把握などに使えるのではないか。「見守り」。30分値の電力量の変化に応じて見守りができるのではないか。「より良いサービス」。30分値の波形を見て、お客さまの在宅の状況などを把握することで、世の中の不効率な部分など解消できるのではないか。節電にも活用できるのではないかというのが今後期待されるところです。
電力データの活用といたしましては、まさに今回のこの検討会でご議論されていますように、「災害時」と、一方、お客さまの同意をいただくという前提ではありますが、同意をいただければ「平時」、社会課題解決への活用。大きく2つが今後動き出し始めるところでございます。
関本(東京大学):田村さんありがとうございました。
畑山(京都大学):非常に有益な情報ありがとうございます。大変興味のあるところで、特に「災害の対応でどう使うか」というところに電力ってすごい価値があるんじゃないかと思って、我々も色々検討しているところではあります。
情報の提供に関してなんですけれども、近々にやられるのは「前日の情報が提供される」というお話ですが、2025年からはリアルタイムでの提供が技術上できるようになりますというお話で、で、1つのユースケースとして、「避難に使えるんじゃないか」という話があったと思うんですね。ただ、避難に使おうと思うと、実は災害が確定する前に情報を提供しないと、大災害になるかならないかはその時点でわからないですよね。で、実際災害になった後に「データを提供してもいいよ」って言われても、もう「避難については遅いです」ということになると思います。それでも勧告で、たとえば「逃げられていない方に注意できる」という話をしていたと思うんですが、たとえば大型台風がきている時は、台風が通るところはもう事前に、つまり災害になる前から情報提供が可能になるというような、そういう枠組みがあったりするんでしょうか、あるいは検討されていたりするんでしょうか。
田村(送配電網協議会):「発災前」と「発災時」、まさにその観点だと思っております。国から各自治体に発出している通達文書では、発災時はもちろん、発災前、すなわち防災訓練ですとか、そういう計画を立てる時にもデータを提供することが可能となっております。ただし、実際どのように使われるのかというところはやはり国としてもしっかり確認した上で、「必要に応じて提供」となっています。よって、避難が遅れた方というケースのところで、避難に支援が必要な方々をあらかじめデータとして登録しておいて、優先的に状況を確認するとか、そういった仕組みというのは国も、電力データを提供する例として、考えているというところでございます。具体的に仕組みが出来上がってきた時点でしっかりと、「実際に活用できるにはどうしていくのか」という議論につなげていくことが大切と思っています。
畑山(京都大学):「経済産業大臣が電力データを提供するように依頼すると、送配電事業者の皆様は自治体にデータ提供する」と説明資料には書いてありますが、どのタイミングでどこに提供するかを決めるのは、経済産業大臣だと。特に自治体からの要望は含まれていないような気がしますが、国が持っている、たとえば防災科研さんがやっているSIP4D とかDDS4D等からですね、予測のデータを使って国が、「ここで大きな被害が出そうだ」ってなった時に、この自治体に対してデータ提供は可能だというふうに言っていいよというスキームに見えます。そういう提供の仕方をされるということなんですか。
田村(送配電網協議会):基本的には経済産業大臣の求めに応じてということですが、各自治体に、「自治体の方から直接、送配電事業者へ要請を出すことによって、データの提供ができる」という通達文書が出ております。まさにこれから、被害が想定されるようなところに対して、具体的にそこのエリアの全データを提供するかなどは、今後議論になるかと思っており、経済産業大臣の通達の中に今後盛り込んでいくことによって、そういうところも少し議論になるのかと考えているところでございます。今現状では、「発災前」と「発災時」というところで、そこは自治体の求めに応じて我々送配電事業者からデータを提供するという仕組みになっております。
7.発災時リアルタイムデータ利活用 促進のためにできることは
9.「発災時 データがどう生きるか」 知見共有と積極的検証が不可欠
15.実現のために 収益化の具体的議論も
↑第2回検討会の議論はコチラから