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【第3回】発災時 データで命は守れるか ~電力データ編~

2022/10/18

人の位置情報や道路の通行情報など、発災時のリアルタイムデータを利活用することで、より多くの人の命や生活を守ることができるか。第3回目の検討会を9月に実施しました。今回は電力データの生かし方について、そして発災時リアルタイムデータ利活用の促進に繋がるためにできることについて。自治体や救助組織、有識者、データを扱う企業の担当者など、25名に集っていただき、可能性や課題を話し合いました。

 

検討会第1回の議事録はコチラから読めます

発災時 データで命は守れるか|NHK全国ハザードマップ

検討会第2回の議事録はコチラから読めます

【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~|NHK全国ハザードマップ

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【出席者】※肩書きはオンライン検討会開催時点

〇熊本県知事公室 危機管理防災課 企画監 三家本 勝志 

〇熊本市消防局 東消防署 警防課長代理 消防司令 小山 幸治  

〇一般社団法人 球磨川ラフティング協会 代表理事 渕田 拓巳

 

◎東京大学空間情報科学研究センター 教授  関本 義秀 <本検討会 座長>

〇東京理科大学理工学部土木工学科 教授  二瓶 泰雄

〇京都大学防災研究所 教授 畑山 満則

〇熊本学園大学経済学部 教授 溝上 章志 

〇熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター 助教 安藤 宏恵

〇国立研究開発法人 防災科学技術研究所 総合防災情報センター長 臼田 裕一郎

 

〇一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会(AIGID) 大伴 真吾

〇本田技研工業株式会社 コネクテッドソリューション開発部 

〇(公財)日本道路交通情報センター デジタル事業推進部 杉田 正俊、小野 史織

〇特定非営利活動法人 ITS Japan 地域ITSグループ 理事  森田 淳士、部長  石毛 政男 

〇(株)ドコモ・インサイトマーケティング エリアマーケティング部部長  鈴木 俊博、副部長 森 亮太

〇(株)Agoop  代表取締役社長  柴山 和久、社長室 室長 佐伯 直美

〇株式会社ゼンリンGISソリューション営業部 青柳 京一

〇TomTom Japan 交通情報サービス事業開発シニアマネジャー 水野真由己

         交通情報サービスシニアセールスエンジニア 西弘二

〇(株)レスキューナウ 代表取締役 朝倉一昌

〇損害保険ジャパン(株) 執行役員CDO DX推進部長 村上明子

〇送配電網協議会 ネットワーク企画部 部長 田村 豪一朗 

 

事務局 NHK(第2制作センター 捧 詠一/メディア戦略本部 浅野 将/プロジェクトセンター 中井 暁彦)

 

 

 

 

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関本(東京大学):皆様お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。検討会も第3回になりました。これから台風シーズンに入ると色々起こるかもしれませんが、ここまでの議論等もその時の対応に反映できればと思っております。

本日は、皆様からも話題提供をいただきつつ、少し検討会の出口のこと、「どうしていくか」というのも本日の議論の一部にあると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

まずは、「電力データの活用の取り組み」ということで、送配電網協議会の田村様から、話題提供いただきます。

 

1.電力データ 発災時リアルタイム活用の模索始まる

 

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田村(送配電網協議会):災害の関係ということで、電力会社もまさに、地域の皆さまに安心安全を実感していただいた上で電気をご利用いただくということが重要と考えており、電力データの活用につきましては、今まさに仕組みを構築しているところでございます。国の審議会等においても、「プライバシー」と、「情報として有益かどうか」といった観点で議論が重ねられていると認識しております。本日は、改めてこの電力データ活用をどのような背景で検討し、今後どのような活用を下支えしていきたいかをご説明し、皆様の議論の一助になればと思っております。

 

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田村(送配電網協議会):まず「送配電網協議会」ですが、電力システム改革により、2020年4月に、電力会社の中の送配電部門が、「送配電事業の中立性を一層高める」ために、分社化が行われました。それを受けまして、業界団体といたしましても、電気事業連合会から送配電部門が独立して、2021年4月に送配電網協議会を設立いたしました。

10の電力会社の送配電部門が送配電網協議会に参加しており、国の制度対応や、電力の広域機関などとの協議の窓口などを担っております。

 

 

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田村(送配電網協議会):電力データの活用につき、「スマートメーター設置状況」「制度の背景」「どんなことができるのか」、そして構築する「仕組み」や「時期」、そういったところを順番にご説明させていただきます。

 

田村(送配電網協議会):まず災害面ですと、スマートメーターが各戸についておりますので、このデータは有益な情報として我々も考えております。スマートメーターですが、30分ごとの電力量を計測しています。全国では約8千万台のスマートメーターを設置すべく進めているところでございます。

 一方で、次世代スマートメーターというものが、今まさに国の審議会で議論をされており、この次世代スマートメーターになってきますと、1分値、5分値が今後、活用できるような仕組みを検討しています。

 

 

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田村(送配電網協議会):スマートメーターは、2種類の用途があります。1つは「高圧」。工場など大きい契約のところ。そして「低圧」。一般家庭です。高圧、工場などにつきましてはすでに、設置が2016年までに完了しております。一般家庭、低圧の部分は今、順次設置しており、2024年度までに設置を完了させる予定です。東京電力エリアにつきましては、2020年度に設置が完了しております。中部電力エリア、関西電力エリアが今年度、設置が完了する予定です。そのほかの電力会社につきましては2023年度、2024年度、という計画で今進んでいるところであります。

 

 

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田村(送配電網協議会):スマートメーターの情報を利活用するにあたりましては、これまで制約がありました。今回、どのような仕組みでこれが活用できるようになったかという背景をご説明します。

 電力会社は、電気事業法に基づき事業を行っており、2020年6月5日に「改正電気事業法」が施行されております。事の発端といたしましては、2019年に千葉県を襲った台風15号と伺っており、当時、停電がかなり長期化し、その際にレジリエンス強化など課題が出ました。ほかにも再エネの主力電源化などが議論の発端となり、「レジリエンス強化」などを盛り込み、改正電気事業法が成立しております。

 

田村(送配電網協議会):その中で、災害復旧という点で、「電気事業法上の目的外利用の禁止」に焦点が当たります。そもそも電気事業法上におきまして、電力データは「電気事業で使用する」と制約されておりました。これが災害時活用では例外規定が盛り込まれまして、災害時に電力データが提供できるようになっております。仕組みとしましては、経済産業大臣の求めに応じて、「送配電事業者が当該災害エリアの自治体等にデータを提供する」といった仕組みが今現状、施行されております。

 

 

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田村(送配電網協議会):具体的な内容としては、電力データ提供の求めに応じ、送配電事業者は電力データを提供します。どのような情報かと申しますと、まず「通電情報」。すなわちスマートメーターの情報やお客さまのご契約の情報などをお渡しいたします。ほかには配電線の地図や、災害が起きたときには配電線に事故が起きたりしますので、復旧計画などを求めに応じてご提供させていただくという仕組みになっております。

 

 

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田村(送配電網協議会):スマートメーターの情報は、法律としては求めがあれば、ご提供することになっております。一方で、今現状、システム化はされてはいないので、必要なデータを手作業で抽出してお渡しするというのが今の実態となっております。データを抽出するには、様々なシステムから抽出しないといけません。その状況についてどうするかが課題となっております。

 

 

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田村(送配電網協議会):電力データを迅速にお渡しすることができれば、「避難者や災害者に関する問い合わせの対応・支援」「避難が遅れているエリアの把握」「どこの店舗が活用できるのか」「国における被災状況・復旧状況の調査」などに活用できる。それによりレジリエンス強化が可能になることが期待されます。スマートメーターの30分値というのは、まさにお客さまのリアルタイムなデータとなりますので、プライバシー・セキュリティ確保に万全を期すことを前提に、データを迅速に提供できるようにシステムの整備・構築を進めております。データの仕様も、送配電事業10社、それぞれシステムを構築しておりますので、ご提供する際には可能な限り、フォーマットなども共通化する。そういった点を念頭に置いて、システムの構築に今現在取り組んでおります。

 

 

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田村(送配電網協議会):仕組みにつきましては、10社それぞれ、MDMS、すなわちメーター・データを収集するシステム、そして託送業務システムという、お客さまの託送契約の内容を司るシステムから情報を抽出し、それを電力データ集約システムに蓄積することで、求めに応じて、国・自治体へ災害時などに情報をご提供できるようにという仕組みを今検討し構築を始めています。

目 次

1.電力データ 発災時リアルタイム活用の模索始まる     

2.電力データで どう命を守れるか     

3.「発災前」から 電力データは使えるか

4.電力データの自治体提供 その方法は 

5.電力データでリアルタイム浸水はわかるか

6.期待される 電力データの民間・研究活用

7.発災時リアルタイムデータ利活用 促進のためにできることは 

8.人流データメディア発信で認知拡大

9.「発災時 データがどう生きるか」 知見共有積極的検証が不可欠

10.今後 発災時にリアルタイムでデータ検証試みを

11.業界データの集約が 命を救うカギ  

12.国と民間 相互協力のもとで検証を

13.平時からのデータ活用で 経済にもプラスに

14.データ提供側のメリットも不可欠

15.実現のために 収益化の具体的議論

16.発災時データ検証・研究のベース支援  

17.SNS情報はどう生かせる?

18.求められる 「データの標準化」

19.発災時データが 自助・共助の大きな手助けに

20.発災時データ利活用 リスクの洗い出し

21.「検証して終わり」にしてはならない

22.電力データ利活用 今後への期待

 

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↑第1回検討会の議論はコチラから

 

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↑洪水予測システムに関する議論はコチラから

 

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↑第2回検討会の議論はコチラから

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