2023年09月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:宝
端数さえ宝に見えた初任給/福村まこと さん
なにかと不平不満を感じることが多い世において、この句のようにいつまでも感謝の気持ちを忘れずにいたいものである。確かに、初任給を手にしたときには誰しも感慨深いものがある。しかし、この句は、その気持ちが、「端数さえ」の上5に上手く詰められている。色々な宝の句の中で、初任給の端数までを宝とした作者の目の付け所に感心させられる。従い、迷うことなく〈天の句〉とさせて戴(いただ)いた。
ぬか床もリストに入れる形見分け/田舎のマダム さん
この句には「宝」という言葉は使われていないが、「ぬか床」が、かけがえのない宝物であることは言うまでもない。加えて、下5で「形見分け」と表現したところに、その家庭に脈々と受け継がれた大切な伝統の味であることが、しっかりと伝わってくる。この句も天の句と同様に、目の付け所が何とも素晴らしい。作者の感性に拍手を送りたい。
ママチャリの前と後ろに宝もの/スイッチ さん
お母さん(あるいは お父さん)が自身の前と後ろに幼い我が子を抱えて、自転車で買い物にでも向かっているのでしょうか。そんな姿が、はっきりと目に浮かんでくる。親の子に対する愛情と同時に、力強く生き抜く姿が美しい。ママチャリという質実剛健さが、よりその姿を際立たせている。どうか事故に遭うことなく、二人のお子様がすくすくと育たれることをお祈りする。
<入選>
宝もの広い世界におまえだけ/谷てる子 さん
大安じゃなくても当たる宝くじ/こまっぴ さん
可も不可もない一日が宝物/あそか さん
宝だと気付かぬままに半世紀/汐海 岬 さん
信じてるうちは宝に違いない/かぐや姫 さん
孫からの肩たたき券宝物/ 1刀両断 さん
見つけられない場所には隠さない宝/河内秀斗さん
二合呑み働く夫は宝物/奥田よし さん
輝きを増して宝が逃げて行く/アーネスト さん
こっぴどく叱ってくれた過去の鬼/夜半亭あぶらー虫 さん
丹川修先生
選考会には、どのような宝に巡り会えるかと楽しみにして出掛けて参りました。投句者の皆さんは、さすがに手慣れたもので〈宝石、骨董(こっとう)など=宝〉に限定されることなく、それぞれの日常生活(親子,夫婦、友人、恋人など平凡な生活の中にある人々の存在や健康に対する感謝の気持ちなど)を詠った作品(精神的な宝)が数多く見受けられました。その中にあって、いつも言わせてもらっていることですが、意外性の高いものに目を付けた句を評価させていただきました。また、宝くじ、子宝、家宝などの同想の多い句の中でもリズムの良いものやそのテーマの捉え方において特異性の高い句を入選といたしました。たくさんの楽しいご投句を戴(いただ)き誠にありがとうございました。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50