これまでに反響が大きかった、心に響いた専門家のメッセージ。保育の現場で40年以上親子に寄り添ってきた井桁容子さんと一緒に振り返りながら、子どもとの関わり方について考えます。悩みを寄せてくれたご家族の今も伺いました。

専門家:
井桁容子(元保育士)

子どもに感情をぶつけてしまったら?

2022年8月11日放送の「子どもに感情をぶつけてしまったら?」。「子どもをどなるなど、思わず感情的になってしまう…」という悩みが多く寄せられました。その中に、「感情をぶつけてしまったあとは、とても落ち込む。自分が怒りっぽいのかもしれません。毎日が反省と後悔です」と悩んでいたパパがいました。

自己嫌悪に陥るパパ・ママに、子どもの心の専門医、田中恭子さんからのアドバイスです。

親としてできていることに目を向けて自信を持つ

田中恭子さん

親として「できていること」に目を向けてください。忙しい中、一生懸命に子どもたちと遊んだり、食事をつくったり、たくさんあるはずです。当たり前のようにできていることに目を向け、親として自信を持って子育てしてほしいと思います。

一貫した態度で関わることが大事。25%くらいでもいい

田中恭子さん

親も人間なので、例えば機嫌のいい・わるいで、子どもが同じ行動をしても違う関わり方をしてしまう場合があります。でも、できるだけ同じ態度で関わるほうがよいといわれています。
ただ、100%の一貫性は難しいものです。私自身も、「つい怒ってしまった」という日々の連続でした。外来で相談を受けたときは「いつもよくやっておられますね、25%ぐらいでいいですよ」と伝えています。

子育てに悩むパパ・ママの心理にくわしい、大日向雅美さんからの言葉もありました。

感情をぶつけることは自然なこと、罪悪感を持たないで

大日向雅美さん

人間にとって感情は、とても自然で大切なものです。喜怒哀楽は、どれひとつとして無駄なものはありません。怒ることも自然なことで、とても大切なメッセージではないかと思います。「あなた無理をしているよ」「これ以上はだめになってしまうかもしれないよ」というシグナルなんですね。
だから、感情的になること、感情をぶつけること自体に罪悪感を持たずに、自然なことだと考えて、自分を否定しないでください。


あれから7か月。「毎日が反省と後悔」と悩んでいたパパに変化はあったのでしょうか。話を伺いました。

「頑張り過ぎない」が、いちばん変わったと思います。「25%でいい」という言葉を実践しているんです。「感情的に怒ること自体がだめなわけではない」にはっとして、救われた気がしました。完璧を目指さないことで、感情が爆発することが少なくなりました。
息子も3歳になり、言葉がわかるようになってきました。子どもに「〇〇をしてね」と言うと、「ちょっと待っててね」と答えてくれます。子どもたちの成長に、自分も救われていると感じます。
(悩みを寄せてくれたパパ)


自分が見えることで、関わり方が変わる

コメント:井桁容子さん

悩んでいたパパが「自分は怒りっぽいかも」と言っていたように、子どもとの関わりの中で、自分自身が見えるときがあります。自分が見えて、「気をつけないといけない」と思うと、無意識に子どもとの接し方が変化します。子どもも、「パパの接し方が変わった」と感じて、「いいよ」と言ってくれたり、急に抱きついたりしてくることもあるでしょう。

―― 感情的に怒ってしまったときは、どうしたらいいでしょう?

気がついたら、すぐ言葉に出して謝る

回答:井桁容子さん

誰であっても、感情的に怒ってしまうことがあります。強く言い過ぎてしまったと思ったときは、すぐに言葉に出して謝りましょう。例えば、「ごめん、ちょっと疲れていたから、嫌な言い方しちゃった」「少し休んだらなおったからごめんね」と伝えるのです。まだ子どもが話せなくても、伝えようとしていることはわかるものです。

親が感情的になったときの収め方は子どもの見本になる

回答:井桁容子さん

親が感情的になったときの収め方は、子どもにとって、人とのつきあい方の見本になります。自分も親も完璧ではなく、ときどき変なことをしてしまう。でも、気づいたらすぐ「ごめんね」と言える。そんな関わり方が、友だちの間でもできるようになるのです。


赤ちゃんの寝かしつけと夜泣き

2022年4月9日放送の「赤ちゃんの寝かしつけと夜泣き」。「多いときは1時間おきに夜泣きで、いろいろ調べて試してもだめだった」と悩んでいたママがいました。

脳科学を通して親子関係を研究している、黒田公美さんからのアドバイスです。

赤ちゃんは睡眠と覚醒のリズムを学んでいる途中

黒田公美さん

夜泣きの悩みは、9か月~1歳半ぐらいのお子さんでとても多くなっています。この時期の睡眠の脳波を調べた実験では、非常に早いサイクルで夜中に何回も起きかけていることがわかっています。
赤ちゃんは、睡眠と覚醒のリズムを学んでいる、練習している途中なので、少し長い目でみましょう。

アドバイスを受けたママに、その後の話を伺いました。

夜泣きしているときは、うまく寝れなくて自分も苦しいんだとわかって、一緒に頑張ろうという気持ちになりました。調べに調べ尽くして、先生たちの意見も聞いて、とにかく夜泣きは今だけだと考えて、とことんつきあうように腹を決めたんです。その後、10か月で卒乳して、ごはんを食べるようになって、夜泣きはなくなりました。1歳半になった今は、寝ぐずりに悩んでいます。
(悩みを寄せてくれたママ)


うまくいかなくてもダメではない

コメント:井桁容子さん

私も睡眠についてたくさんの相談を受けてきましたが、子どもそれぞれに個性があって、ひと筋縄ではいきません。その子に合ったやり方は、その子とつきあいながらわかっていくので、親子で折り合いのつけ方を見つけていくことが大事です。いちばん怖いのは、「誰かのアドバイスを試してもうまくいかない、ほかの子はできている、うちの子が悪いのではないか」と考えてしまうこと。そうではなく、その子の個性なんです。
うまくいかなかったとしても、親が子どもの様子をよくみて試行錯誤したことは、子どもには「自分のことをわかろうとしてくれている」と伝わっています。
親子にはいろいろな状況があって、最後は「わからないけど、つきあうよ!」と腹をくくるわけです。焦らないことで、うまくいくこともあります。

ひとりで抱え込まない。家族の助けも必要

コメント:井桁容子さん

「腹をくくる」といって夜泣きを受け入れたとしても、ひとりで抱え込まないことも大事です。パートナーや家族の助けが必要です。人は、まわりの人に助けてもらいながら子どもを育ててきた歴史のほうが長いのです。


どう向き合う? 子どものイヤイヤ

2022年4月23日放送の「どう向き合う? 子どものイヤイヤ」。「気に入らないことがあると、モノを投げたり、泣いたり。ダメって言っても何回も繰り返す」と悩んでいたママ・パパがいました。

発達心理が専門の坂上裕子さんは、イヤイヤ期の子どもの気持ちについて話してくれました。

自分の気持ちを言葉で伝えることが上手にできない

坂上裕子さん

この時期は、自分の気持ちを言葉で伝えることが、まだうまくできません。自分のどうしようもない状態を、どうしたらいいのかわからないのです。そのため、おそらくモノを投げずにはいられないような状況ではないかと思います。

髙祖常子さんには、具体的な対処法を伺いました。

気持ちを言葉にする、選ばせる、気持ちの切り替えを手伝う

髙祖常子さん

まずは、「何でイヤだったの?」と聞いてみましょう。まだ自分で説明することが難しいときは、「〇〇でイヤだったのかな」のように、子どもの気持ちを言葉にしてあげます。2つ目は、子どもに選ばせてあげる。そして、気持ちの切り替えを手伝ってあげることです。気持ちが爆発しているときは、「自分の気持ちと戦っているんだ」と見守って、「落ち着いたら教えてね」と伝えてみたり。気分転換を手伝ってあげるのも、1つの方法です。

アドバイスを受けて、パパ・ママに変化はあったのでしょうか。話を伺いました。

ママ/今、当時の映像を見直すと「すごかったな」と思うし、イヤイヤ期のころは壮絶すぎて、記憶がないんです。「落ち着くまで見守る」という話を聞いて、少し力を抜いて、ふかんして見てみようと思いました。今は3歳になって、お兄ちゃんにもなって、だいぶ落ち着いてくれたと思います。まだかんしゃくを起こすこともありますが、コミュニケーションが増えて、本人がどうしたいのか表現するようになりました。当時は「いつ終わるのか」と感じていましたが、少し終わりが見えてきました。冷静に見られるようになったと思います。「イヤイヤはもうすぐ終わるよ」と当時の自分に言ってあげたいです。
パパ/子どもを監視するというより、観察するような気持ちになれました。わたしたち親としての、ターニングポイントの1つだったと感じます。当時は、イヤイヤ期の絶頂期で、親もイライラ期で、どうしていいのかわかりませんでした。かっとなったときのクールダウンの方法などのアドバイスを聞いて、大人の物差しで子どもに完璧を求め過ぎていたことに気づけたんです。それから、親自身も変われたと思います。
(悩みを寄せてくれたママ・パパ)


困っているのに「イヤ」と言えないほうが問題

コメント:井桁容子さん

困っていることがあるのに「イヤ」と言えないほうが心配ですよね。だんだん言い方・伝え方を学んでいくところだと思います。

大人がどう見ているかは子どもに伝わる

コメント:井桁容子さん

「監視から観察に」という話がありましたね。「監視」は、「困ったことをやるんじゃないか?」のように、悪いところを見ようとしてしまいます。「観察」は、そういった偏見を持たずに、「どういう気持ちでいるのかな」という目で見ます。それの変化が、お子さんにも伝わったのでしょう。


ちゃんと伝わる声かけって?

2022年9月3日放送の「ちゃんと伝わる声かけって?」。「娘は集中すると声をかけても話を聞いてくれない」と悩んでいたママがいました。

アドバイスをくれたのは、子どもの心にくわしい倉石哲也さんです。

自分の世界を作りはじめて、自立しはじめている

倉石哲也さん

子どもが言うことを聞かなくなるのは、自分の世界をつくり、自立しはじめているときです。言うことを聞かないと、親は目くじらを立ててしまうかもしれませんが、子どもの自立という考え方も持つほうがよいでしょう。

岩井久美子さんがすすめたのは、子どもの気持ちをくんだ、ワクワクさせるような声かけでした。

楽しいことがあるよと、具体的に声かけしてあげる

岩井久美子さん

「楽しい〇〇があるよ」のように、具体的な声かけをしてみましょう。「水遊びがあるよ」と言ったときのお子さんの表情が輝いていましたね。子どもの気持ちに近づいて、楽しいイメージがわくような声かけを心がけましょう。

あれから7か月、ママはアドバイスを実践しましたが、うまくいくこともいかないこともあったそうです。

「自立してきた証拠」と聞いて、なるほどと思いました。具体的に話して楽しめるような声かけをするというアドバイスも勉強になりました。今は3歳3か月で、話せるようになって、意思疎通できるようになっています。でも、下の子に手がかかるようになったせいか、イヤイヤが増えてきて、まだまだ悩みはつきません。
(悩みを寄せてくれたママ)


子どもなりのイヤイヤの理由はある

コメント:井桁容子さん

「イヤイヤが増えきてきた」という話でしたが、この時期であれば、子どもなりのイヤイヤの理由があると思います。その正解を考えるよりも、「嫌なことがあったんだね」のように、一生懸命に気持ちを感じて受け止めてあげる。それが子どもに伝わることが大事です。子どもは、気持ちをきちんとわかろうとしてくれている、その繰り返しの中で、パパ・ママを信頼していきます。

心を置くことが大事

コメント:井桁容子さん

きょうだいがいるなら、上の子のために特別な時間をつくることも大切です。お風呂など、短い時間でもいいのです。一緒に特別な時間を過ごして、「あなたのことを忘れていませんよ」と伝えましょう。でも、子どもといても別のことを考えて、うわのそらになるのはいけません。心を(子ども自身に)置くことに気をつけてください。


子どもの個性 どう伸ばす?

2022年5月7日放送の「子どもの個性 どう伸ばす?」。「息子は工作が大好きだけど、運動のほうが得意だと思う。好きなこと・得意なこと、どっちを伸ばしたほうがいい?」という質問を寄せてくれたママがいました。

柴田愛子さんからのアドバイスです。

「好き」なことは自分のもの。「得意」なことは人との比較・評価

柴田愛子さん

得意なことは人との比較で評価されるものですが、好きなことは自分のものですよね。私は、好きなことは長続きすると思います。
好きなことがあること自体がステキですよね。今は下手だとしても、長く続けているうちに得意になる可能性も大きいでしょう。好きなことがひとつでもあれば、人生が生きやすくなると思います。好きを伸ばしてあげてもいいと思いますよ。

子どもの発達にくわしい、川田学さんのアドバイスです。

親ばかパワーは子どもの生きる力の基盤。おおらかな親ばかがちょうどいい

川田学さん

人は好きなことをしているときがいちばん輝いているので、それを大事にすることがひとつだと思います。
基本的に、親が「この子はすごい、天才だね」と思えるような「親ばかパワー」は、子どもの生きる力の基盤になると考えています。子どもを追い詰めるほど強すぎない、おおらかな親ばかぐらいが、ちょうどいいでしょう。

あれから10か月、ママはやりたいことを好きなだけやらせることにしたそうです。

好きなことを、目一杯やらせていく中で、本当に絵が上手になってきたり、1~2時間、平気で工作するぐらい集中力もついてきたり、好きなことはどんどん伸びるんだと実感しました。運動は今も得意です。
「親が頑張り過ぎない」というアドバイスが印象に残っています。「子どもの能力を最大限生かしてあげなければ」と思って、私の考えで押しつけてしまう部分がありましたが、肩の力を抜いて、本人がそのとき一番やりたいことを、やらせてみようと思えました。子ども自身の人生で、個性も親とは違います。本人を尊重していこうと考えるようになって、私も楽になったと思います。
(悩みを寄せてくれたママ)


―― 好きなことがないような子どもの場合、どう接したらいいですか?

キラキラする瞬間を見逃さない

回答:井桁容子さん

子どもがキラキラする瞬間を見逃さないことですね。いろんな経験をしていくとき、表情が変わったり、その場から離れようとしなかったりすることがあります。もしかすると、好きなことかもしれません。大人は、それを大事にして、応援してあげましょう。子どものいいところを生かしていける近道だと思います。


専門家からのメッセージ

古坂大魔王さん(MC)

子どもを通じて親が変わっていくことは、考えてみれば当たり前のことかもしれません。そして、親が変わることで、子どもにも変化があるんですね。

「大好き」を伝えて、「ご機嫌」に生きて

井桁容子さん

そういうことなんです。怒りっぽくなっていた自分に気づいたり、頑張り過ぎていた自分に気づいたり。その気づきで、自分自身も生きやすくなります。子どもは、立派な親や、歯をくいしばって頑張る親より、のん気な親が好きです。だから、頑張り過ぎないでいい。自分自身が豊かにほっとできることを探しても、だめな親ではありません。
そして、「あなたを大好き」だと、子どもに伝えることが大事です。「大好き」が伝わって、「ご機嫌」に生きていれば大丈夫です。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです