静岡・沼津 人気アニメ 「ラブライブ!」の"聖地"が限定復活
- 2023年07月04日
静岡県沼津市が舞台の人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」。市内には物語の舞台となった場所、いわゆる「聖地」が数多くあり、全国からファン=ラブライバーが訪れます。
その「聖地」のひとつとして親しまれながらも去年閉店した書店が、2023年7月1日の沼津市制施行100周年に合わせて2日間限定で“復活営業”。大勢の人でにぎわいました!
【取材:沼津支局記者・吉田渉 静岡放送局アナウンサー・後藤康之】
惜しまれつつも去年閉店…アニメの「聖地」商店街の本屋さん
沼津駅南口を降りて徒歩2分のところにある、沼津仲見世商店街。
アーケードには「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する9人組のスクールアイドル「Aqours(アクア)」が描かれた垂れ幕がかかっていて、アニメが沼津の皆さんにも広く受け入れられていることが感じられます。
この商店街の一角に、アニメの「聖地」がありました。
沼津市の老舗書店「マルサン書店」の仲見世店です。
文学好きの少女・国木田花丸が通う書店としてたびたび登場し、全国から大勢のラブライバーが訪れるスポットのひとつでしたが、店の老朽化などにともない、2022年5月に閉店しました。
聖地の「復活営業」で沼津を元気に!
閉店から1年あまりたち、アニメの「聖地」のひとつがなくなってしまったことを惜しむ声があがる中、ことし7月1日に沼津市が市制施行100周年を迎えるのに合わせて、2日間限定で「復活営業」することが決まります。
イベント前日の6月29日。
書店のシャッターが久々に開きました。
アニメの「聖地」で開催するからには、ファンが喜ぶイベントにしたい。
店内では準備が着々と進められていました。
アニメの内容を紹介する本や、物語に登場する沼津市内の各地を紹介するガイドブックなどを棚に並べたり…。
棚にたまったほこりを拭きとりながら、スピンオフ作品「幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-」のパネルを並べたり。
書店のスタッフなどがあわただしく動いていました。
イベントの仕掛け人は、沼津市出身・沼津市在住で、旅行のガイドブックやアニメ関連書籍などを手がける出版社に勤める江本典隆さん。5年ほど前にふるさとの沼津に戻ったときに何気なく見た「ラブライブ!サンシャイン!!」にすっかりハマった「ラブライバー」でもあります。
「地元の魅力を発信し、まちを盛り上げるきっかけを作りたい」と企画しました。
その思いに、マルサン書店の役員をつとめる杉山孝さんが応えました。「『ラブライブ!サンシャイン!!』は経済効果が大きいので、沼津の『元気』につながってくれれば」と話します。
2人の思いが合致して、2日間限定の「聖地復活」イベントが実現したのです。
ファン待望の「聖地復活」開店前から行列が!
いよいよ迎えた「復活営業」の初日、6月30日金曜日。
「Aqours」の結成8周年の記念日でもあります。
平日の朝にもかかわらず、開店30分ほど前にはすでに長い列ができていました。
(静岡県菊川市から来たファンの兄弟)
沼津に着いたのは朝7時くらいです。やっぱり聖地のひとつがなくなってしまったのはすごくさびしかったんですけど、期間限定とはいえ「復活する」と聞いてすごく嬉しくて駆けつけました!
(アニメをきっかけに1年半前に静岡市から移住した男性)
去年の閉店のときのセレモニーを残念な気持ちで見ていたひとりとして、2日間(店を)開けてくださるというのはものすごいことだと思っています。開店前にこれだけの人が並ぶというのは、ファンのみんなの「ラブライブ!サンシャイン!!」や沼津に対する愛情のあらわれですよね。
あまりの人の多さに、午前10時予定だったオープンの時間を10分早めて開店。
訪れた人たちは、久々に開いた「聖地」の床を踏みしめながら、本を買ったりパネル展示をながめたりして、思い思いの時間を過ごしていました。
久々のにぎわい…地元の人にも笑顔が!
訪れた人の中には、閉店する前の書店を利用していたという地元の人の姿もありました。
(沼津市在住の女性)
ここの本屋さんが営業しているときにときどき利用していました。けさ、再びオープンすることを知って来てみたんですけど、懐かしいですね。
これだけ多くの方たちがアニメを通じて沼津のことを知ってくれて、地元の人でも知らない沼津の魅力を探してくださっていることが嬉しいです。
このにぎわいに、商店街のほかの店主からも笑顔がこぼれます。
(手芸用品店の店主)
書店が閉店してからは遠方から来るお客さんの数が減ってしまって商店街全体がさびしかったので、朝からいっぱい人がいるのを見て嬉しかったですよ。アニメのファンは必ずしも私の店に立ち寄って何か買っていってくれるわけではないですけど、沼津に来てくれた人に「この商店街はホッとする」とか「面白い」と思ってもらえる場所でありたいと思うので、これからも機会があれば1日でもいいのでお店を開けてもらえると嬉しいですね。
想像以上の反響だった「聖地復活」イベント
「復活営業」初日、来場者は当初の想定を大幅に上回る700人以上が訪れ、閉店時間の午後3時まで人の流れが途切れることはありませんでした。
翌日、沼津市制100周年記念日の7月1日も、初日をさらに上回る人が足を運びました。
昼過ぎには、追加分も含めて用意していた1500部の書籍が完売。イベントは無事に終了しました。
仕掛け人の2人も、胸をなでおろしていました。
(江本典隆さん)
まずは2日間を通して会場内の混乱や周辺からの苦情などのトラブルが1件もなくイベントを終えることができてホッとしました。
沼津を訪れるファンが、地元の方に迷惑をかけないようマナーを守り、その姿を見て地元もファンをあたたかく迎え入れる。そうした信頼関係がキチンとしていることをあらためて実感できるイベントになったことからも「大成功だった」と言っていいと思っています。
また、これだけ多くの方が沼津の「聖地」を大切に思っていることや、この場所で「ラブライブ!サンシャイン!!」の本を買うということに価値を見いだして来場してくださった方がいるのを実感できたこともとても嬉しかったです。
これからも、ひとりでも多くの人に沼津に来ていただけるよう、何らかのイベントを企画したいですね。ひとりの沼津市民として、アニメを通じて地元の魅力を発信するお手伝いをしたいと思っています。
(マルサン書店役員・杉山孝さん)
実は私自身、この店舗に勤めていたことはなかったので、これだけ多くのファンに愛されている場所なんだということを今回はじめて肌で感じることができました。いまさらながら正直驚いています。
建物の老朽化の問題だけでなく、出版業界の不況などで書店の経営は厳しいので「もう一度営業を再開できるか」と言われると、なかなか難しいところではあります。でも、この場所にこれだけの「吸引力」があるなら、沼津の経済全体に波及効果があるはず。それが一番いいことだと私は思っているので、今後、こういったイベントをときどき開くのも「アリ」かもしれませんね。
沼津市制100周年を記念して開かれた、アニメの「聖地復活」イベント。
ファンも沼津の人たちも、みんな笑顔であふれていました。