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静岡 熱海土石流 復興計画見直し 市の対応に住民から批判の声

  • 2023年06月29日

熱海市は、おととしの土石流で被災した伊豆山地区の復興に向けてとりまとめた宅地整備の計画を見直しました。これについて、市は6月23日に住民への説明会を開催。市の対応に、出席者からは批判の声が相次ぎました。

熱海市 宅地整備計画を見直し

熱海市が6月23日の夜に市役所で開いた説明会には、土石流で被災し今も地区を離れて暮らす住民など、およそ70人が参加しました。この中で市の担当者は、去年とりまとめた「復興まちづくり計画」で示していた宅地整備の計画を見直すことを説明しました。

「復興まちづくり計画」では、土石流で被害を受けた土地を市がまとめて買い取った上で宅地を整備し、住宅の再建を希望する人に分譲する方針を盛り込んでいました。

ところが、この方針に対して被災者から「もともと住んでいた場所に戻れなくなるのではないか」とか、「分譲地の購入価格が土地の売却価格を大幅に上回った場合、購入できるか不安だ」といった懸念の声が相次いで寄せられました。

このため市は5月に、宅地の地盤などの復旧工事は被災者が行い、その費用の9割を補助する方針に見直しました。併せて関連する費用およそ2億6000万円を盛り込んだ補正予算案を市議会の6月定例会に提出していました。

議員から批判 予算案取り下げ

しかし、市議会の質疑では、市が計画の見直しにあたって、去年実施した個別面談に応じた、地区を離れて暮らす124世帯のうち「同じ場所での住宅再建を希望する」と回答した10世帯に限ってヒアリングを行っていたことが明らかになりました。

議員からはこうした対応に批判の声があがり、6月23日、熱海市は関連する補正予算案を「被災者や議員に十分に説明がなされている状態にない」として取り下げました。

熱海市の斉藤栄市長は、予算案を取り下げた委員会の後、「なぜ今回変更にいたったのかやメリットとデメリットをしっかりと説明した上で、次の機会に今回取り下げた予算案を改めて提出させていただきたい」と話しました。

見直しのプロセス 住民は不信感

予算案を取り下げた日の夜に行われた住民説明会。市が一部の被災者にしかヒアリングをせずに見直しの方針を決めたことに対して、出席者から批判の声が上がりました。

説明会出席者
補助金がもらえるようになる方もいれば不利になる方もいる。124世帯いるのに10世帯にしかきかずに残りの114世帯に聞かなかったことが問題なのではないでしょうか。

説明会出席者
信頼関係がなりたっていないと思うんですよ、住民と行政側の。信頼関係がない中でこういう議論を重ねても不信感しかない。

また、住民に説明する前に斉藤市長が記者会見で方針を発表した対応についても「順番が逆ではないか」と疑問が呈されました。

批判受け 熱海市長は謝罪

説明会で斉藤市長は、対応が不十分だったことについて謝罪しました。

熱海市 斉藤栄市長
事務的なプロセスがうまくいかなかったところは大変反省しているところ。今回、説明が前後したのは大変申し訳なく思っている。

説明会の後、土石流で母親を亡くし自宅が全壊する被害を受けた太田朋晃さんは、迷走する市の対応への不信感を語りました。

太田朋晃さん
2年間何をやっていたのって。やっと2月に母親の遺骨が出てきて一段落して自分のことができるかなと思ったら、こんなありさまで。今までも復興は遅れていますが、これからどれだけかかるのか。自分自身が地区に帰るのか帰らないのかも、まったくメドが立たず、母親に申し訳なくてしょうがない。

市には今後、失った信頼を取り戻し、住民の納得のいく丁寧な対応が求められます。

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