鎌倉殿の13人・どうする家康 私たちは忘れない NHK静岡 三上弥
- 2023年03月02日
三上弥 NHK「現場のことば」第39回
NHKテレビ本放送開始70年 大河ドラマ60年・還暦
静岡県ゆかりの大河ドラマ続く
NHKが国内で初めてテレビの本放送を始めてから70年を迎えた令和5年、静岡県にゆかりのある大河ドラマ「どうする家康」が放送中です。前年の令和4年は「鎌倉殿の13人」だったので、静岡県は2年続けて「大河ゆかりの地」になりました。
大河ドラマといえば、最近は「どうする家康」色に染まるなか、「鎌倉殿の13人」は遠い過去の存在のように感じる人がいるかもしれません。
しかし、地元・静岡県にとっては、どちらも大切で、忘れてはならない大河ドラマです。
「鎌倉殿の13人」にちなんで取材・制作した企画を「底本」にして、一緒に現場に行ったアナウンサーと報道カメラマンが「忘れぬうちに」WEB特集を執筆することにしました。
令和4年1月19日の夕方に放送したNHKニュースの内容をもとに振り返ります。
「鎌倉殿の13人」主人公・北条義時
「鎌倉殿の13人」の主人公は、北条義時(ほうじょう・よしとき)です。
源頼朝(みなもとの・よりとも)亡きあと、内部抗争を勝ち抜いて、鎌倉幕府の実権を握ったとされています。
義時が生まれたのは、現在の静岡県伊豆の国市です。
伊豆の国市には、義時が創建した寺があります。
北条義時創建の寺
映像取材の木原奏人(きはら・たくと)カメラマンとアナウンサーの三上弥(みかみ・わたる)は、北条義時が創建した寺を取材で訪れました。
寺の名は「北條寺(ほうじょうじ)」です。
寺の表記のうち、ふた文字目は「条」ではなく「條」と書きます。
訪れたのは令和4年1月中旬、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第1回放送直後のことです。
寺に向かう途中、大きな富士山がそびえる光景に遭遇しました。
文学風にいえば「邂逅(かいこう)」という感じです。
┃三上┃ 一級河川・狩野川(かのがわ)沿いから見事な富士山を望むことができます。
┃木原┃ この自然豊かで広大な景色を北条義時も眺めていたと想像すると、感慨深いものがありました。
いざ北條寺へ
いざ北條寺へ。
「北條寺」は、伊豆の国市南江間(みなみえま)にある臨済宗建長寺派の寺です。
義時の長男が大蛇に襲われて亡くなった時、嘆き悲しんだ義時は、「北條寺」を建てて供養したと伝えられています。
いざ本堂へ
寺の本堂は、通常、内部の撮影ができないものの、「鎌倉殿の13人」にちなんだ取材だったため、特別に許可をいただきました。本堂に入ると、視界に入ってきたのが立派な仏像です。
木造観世音菩薩座像
「北條寺」の本尊「木造観世音菩薩座像(もくぞう・かんぜおんぼさつざぞう)」です。
▼左足を崩して踏み下げる姿、▼垂らしたような衣(ころも)、▼膨らんだ頬(ほお)。いずれも宋の時代の中国の様式を取り入れています。
諸説あるなか、源頼朝の妻で、義時の姉・北条政子(まさこ)が鎌倉の「極楽寺(ごくらくじ)」にあったものを北條寺に奉納したという説は、興味をそそられます。
木造阿弥陀如来座像
「木造阿弥陀如来座像」は、面長で、引き締まった体が特徴です。
ヒノキを材料に、鎌倉時代前期に製作されたと考えられています。
仏像を造る時、義時が関わった可能性もあるということです。
牡丹鳥獣文繍帳
横にある展示室には、高貴な装飾を施した刺繍(ししゅう)がありました。
絹の布地に、牡丹(ぼたん)などの植物や、鳥と獣が表現されています。
生き生きとした動植物。
麻布で裏打ち・補強されている作品です。
寺の伝えによりますと、北条政子が寺に寄進したということです。
「牡丹鳥獣文繍帳(ぼたんちょうじゅうもんしゅうちょう)」といいます。
刺繍のきめ細かさが、レンズ越しに伝わってきました。
なお、ここまで紹介した仏像や刺繍の展示は取材時のものです。
義時夫妻の墓
境内には、義時夫妻の墓もあります。
北条義時夫妻の墓です。丘の上にあります。
祀(まつ)られているのは、正面から見て、左が妻、右が義時です。
高台から望む寺の周りには、義時ゆかりの場所が点在しています。
静岡県の東部・伊豆を訪れて
義時創建の寺の取材から1年余りが過ぎ、日々の取材で静岡県の東部と伊豆を訪れることが多々あります。熱海市や伊豆市は、落ち着いた町並みでいつも心を穏やかにしてくれます。
鎌倉幕府初代征夷大将軍である源頼朝活躍の陰には北条氏あり。
今度は仕事ではなくプライベートでも伊豆半島を訪れて、ゆっくりと鎌倉殿に思いをはせたいです。
往路の旅 三島駅から
「鎌倉殿」ゆかりの地を訪問する際の拠点となる駅が三島駅です。東海道新幹線の「ひかり」と「こだま」が停車します。東海道線・伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線が通る駅です。
往路は、東海道新幹線や東海道線から伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線に乗り換えます。
伊豆箱根鉄道駿豆線は、三島市の三島駅と伊豆市の修善寺(しゅぜんじ)駅を結ぶ路線です。
地元では、「いずっぱこ」と呼ぶ人もいます。
今回紹介した寺院を含め、北条義時ゆかりの地を訪ねる際は、韮山(にらやま)駅が「玄関口」になります。観光関連の各種ウェブサイトを検索すると、お目当ての地点が見つかるはずです。
韮山駅は、国指定史跡・韮山反射炉の最寄り駅でもあります。平成27年7月、ドイツで開かれたユネスコ世界遺産委員会で、韮山反射炉を含む「明治日本の産業革命遺産」は、世界文化遺産に登録されtました。韮山反射炉は、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の1つということになります。
韮山反射炉は、大砲の材料となる鉄を溶かした江戸時代末期の施設です。映像や写真の被写体としても収まりがいいので、観光客が訪れています。
復路 多数の選択肢
復路は、多数の選択肢が考えられます。
修善寺駅には伊豆半島各地を結ぶ路線バスが発着しているので、好みに応じて目的地に向かうのもおすすめです。
神奈川県の箱根を観光する場合、小田原や箱根湯本から現地に入る人がかなりの割合を占めます。
一方、静岡県側の三島駅や熱海駅から路線バスを使って箱根に出入りするルートもあるので、知っておいて損はありません。
自家用車や観光バス、二輪車の場合は、ルート選択の自由度がさらに増します。交通安全に十分注意して静岡県の旅を楽しんでいただければ幸いです。
どの交通手段の場合も、もうしばらくの間、新型コロナウイルスの感染対策を忘れないようにしましょう。
現場のことば ワンポイント
「鎌倉殿の13人」のアクセントは ―――
「かまくらどのの」までは、音の高低をつけない「平板(へいばん)」。
「じゅうさんにん」は、「さ」のあとの音が下がります。
< 報告 > NHKアナウンサー 三上 弥
静岡県ゆかりの大河ドラマ 放送中
令和5年は、NHKが国内で初めてテレビの放送を始めてから70年、かつ、大河ドラマが始まってから60年「還暦」に当たります。
令和5年のNHK大河ドラマは、静岡県にゆかりのある「どうする家康」です。NHKの放送や配信を通じてお楽しみください。
テレビジョンに加え、スマートフォンやタブレットの画面から視聴できます。
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