飽くなき向上心を胸に ~B1 仙台89ERS ヤン・ジェミン選手~

日本のプロバスケットリーグ=Bリーグが開幕しておよそ1カ月。
B1・仙台89ERSは開幕4連敗と苦しいスタートとなったものの、開幕戦で強豪のアルバルク東京を相手に最終第4クォーターで一時逆転する展開に持ち込むなど善戦。
その後は、前年準優勝の千葉ジェッツ、積極的な補強を行った群馬、日本代表の河村勇輝選手のいる横浜からも勝利をもぎとり、チーム初となるB1での4連勝を果たしました。

チーム状態が上向いてきた中で迎える、秋田ノーザンハピネッツとの東北ダービー。
仙台89ERSの注目選手としてご紹介したいのが新加入のヤン・ジェミン選手です。

2020年に信州に加入してから来日4シーズン目。
昨季は宇都宮に所属しましたが、プレータイムを伸ばせずに今シーズン仙台に移籍し、このチームでの成長に燃えています。
ヤン・ジェミン選手の今シーズンへの思いに迫ります。

(アナウンサー・黒住駿)

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韓国の世代別代表経験もあるヤン・ジェミン、仙台でさらなるステップアップを目指す
仙台89ERSに今季加入した24歳のヤン・ジェミン選手。
韓国出身で、世代別の韓国代表に選出された経験があります。
2m1cmの長身でありながら俊敏性を持ち合わせ、スピードを持ち味としています。

Bリーグは、
ルール上、外国籍選手や帰化選手など、日本人以外の選手の出場が制限されています。
韓国出身で、アジアの特定の国や地域の選手に認められる「アジア特別枠」の選手であるヤン選手は、外国籍選手2人と同時に出場できるため、チームの中でも重要な役割を担います。

仙台では、アウトサイドを中心にプレーするウィングといわれるポジションから、相手の屈強な外国籍選手とのインサイドでのマッチアップまで、幅広いプレーを求められているため、ヤン選手自身も“成長出来る環境”だととらえています。

さらに、

「激しく戦うスタイルとかチームが束になって強豪チームを倒すのが今の仙台89ERSのスタイル。自分のメンタリティーとかプレースタイルが非常にマッチしているので、順応しやすい。
常に自分は向上心をもって常に成長していきたいと思っているので、自分のマインドと、チームのマインドがうまくフィットしているチーム」

とヤン選手は話します。

韓国のバスケット一家に生まれ、学生時代から積極的に海外でプレー
ヤン選手は、小さい頃からバスケットボールに囲まれた生活を送ってきました。
両親と兄、妹の一家全員がバスケットボールに精通していて、2歳上のお兄さんは1m93cmで韓国のトップリーグでプレー。6歳下の妹も身長1m80cmの長身で若手の有望株と、韓国を代表するバスケット一家です。

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ヤン選手自身も、
中学1年生から2年生になる時に1m73cmだった身長が約1年で1m90cmに一気に伸び、高校1年生の時には今と同じ2m1cmほどに達したそうです。
恵まれた体格を活かし16~17歳という若い時期からスペインでプレーするなど、積極的に韓国を出て、海外で自分自身を高めてきました。アメリカでもプレーし、日本は3か国目の挑戦です。
ヤン選手は、

「プロセスを自分は大事にしている。選手として自分自身が1日1日、自分が与えられた時間っていうのを大切にして地道に成長できるような選手になりたい。
毎日必死に一生懸命生き残るために海外で努力をすることが、自分にとっては成長の近道だと考えてプレーしてきた」

と話し、言葉の中に“向上心”がにじんでいました。

昨季の悔しかった経験を仙台で晴らす

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*ヤン選手写真右側

ヤン選手は昨シーズン、宇都宮に所属。
信州のあと、日本国内での移籍でしたが、強豪・宇都宮では、厚い選手層と外国籍選手の充実もあってプレータイムを大きく減らしました。

出場機会を求めて仙台に移籍してきたヤン選手は、今シーズン、日本のキャリアで最も長い平均出場時間17分台(昨季は約9分)、2桁得点も2試合で記録して平均得点6点と、ともにキャリアハイの数字を残し、充実したプレーを見せています。

また、ラショーン・トーマス選手が肉離れで戦列を離れたことで、外国籍選手とマッチアップすることも多い中、その役割は数字以上のものがあると感じます。

ヤン選手自身も、

「インサイドで戦う時には大きい選手を相手にしっかりフィジカル面で負けないようにプレーして、簡単にインサイドで得点をさせない、ゴール下に入れさせないというのを意識して、ゴール下のディフェンスによりフォーカスしていきたい。
チームも勝ちがついてくるようになってきたし、その中で自分も出場機会が得られているのでここからまたしっかりやっていきたい」

と、気持ちを引き締めています。

B1復帰2季目に進化を続ける仙台89ERS。
今回の秋田との東北ダービーは強豪ひしめく東地区に所属する両者の対戦という側面もあり、
試合数の多い同地区の戦いで白星をあげられるかが、チームの浮沈に大きく影響します。
飽くなき向上心を秘めるヤン選手の成長が勝利につながるか、楽しみにしたいと思います!

(仙台局アナウンサー・黒住駿)