岸田首相「政府方針に誤解」同性婚発言の秘書官更迭で

同性婚をめぐる差別的な発言で総理大臣秘書官を更迭したことについて、岸田総理大臣は政府与党連絡会議で、「国民に誤解を生じさせたことは遺憾であり、不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げる」と陳謝しました。

6日に開かれた政府与党連絡会議で、岸田総理大臣は、同性婚をめぐり「見るのも嫌だ」などと発言した荒井勝喜前総理大臣秘書官を更迭したことについて、「国民に政府の方針への誤解を生じさせたことは遺憾であり、不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げる」と述べ、陳謝しました。

そして、「発言は全く政府の方針と反しており、速やかに秘書官としての職務を解く判断をした。引き続き、多様性を尊重し、包摂的な社会を実現するという政府の方針を丁寧に説明していく」と述べました。

一方、公明党の山口代表は「不適切な発言により、秘書官が更迭されたことを厳しく受け止めたうえで、多様性を認め合う包摂的な社会を目指す内閣の方針をきちんと説明し、当事者の声をよく聞きながら、LGBTなどへの理解が広がるよう取り組んでもらいたい」と述べました。

松野官房長官「当事者に不快な思い」陳謝

同性婚をめぐる差別的な発言で総理大臣秘書官が更迭されたことについて、松野官房長官は衆議院予算委員会で「発言は不当な差別と受け取られてもしかたなく、言語道断で遺憾だ」と述べ、当事者に不快な思いをさせたうえ政府の方針にも誤解を生じさせたとして陳謝しました。

6日午前に開かれた衆議院予算委員会では、同性婚をめぐって「見るのも嫌だ」などと発言し、更迭された荒井勝喜 前総理大臣秘書官をめぐって、与野党双方の議員が経緯などを質問しました。

この中で松野官房長官は「発言は不当な差別と受け取られてもしかたがないものであり、政府の方針と全く相いれない。言語道断で遺憾であり、岸田総理大臣が総理秘書官の職務を解くという判断を行った」と説明しました。

そのうえで「岸田政権は性的指向や性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えており、多様性が尊重され、すべての人が互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、引き続きさまざまな国民の声を受け止めしっかりと取り組んでいく」と述べました。

そして、松野官房長官は「今回の発言で傷ついた方や不快な思いをした方もいると思う。そういった皆様におわびを申し上げるし、内閣の方針に誤解を生じさせてしまったことは遺憾であり、これもおわび申し上げる」と陳謝しました。

また、同性婚をめぐる岸田総理大臣の「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」などとした答弁については、荒井秘書官は作成に関わっていないとしたうえで「同性婚制度の導入は、親族の範囲や、権利義務関係など、国民生活の基本に関わる問題で、国民一人一人の家族観と密接に関わるものであるから、慎重な議論が必要だという趣旨だ」と述べました。

また、松野官房長官は記者会見で「同性婚制度の導入は、わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要するものだ。社会各層のさまざまな意見を受け止めることが大切であり、その一環として当事者から話を伺うことは重要だ。誰がどのような形で話を伺うかは検討を要するが、できるだけ速やかに場を設けたい」と述べました。

衆院予算委 野党側は反発 約40分退席

6日の衆議院予算委員会では、冒頭、野党側が、新年度予算案の審議に先立って、荒井 前総理大臣秘書官が更迭された経緯について政府に説明させるよう求めたのに対し、自民党の根本委員長が応じず、与党側の質疑が始まりました。

野党側はこれに反発して退席し、委員会は与党側の質疑が終わったあと中断となりました。

そして、自民党の高木国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が会談して協議した結果、審議はおよそ40分後に再開されました。

再開後の委員会で根本委員長は「委員会がこのような形で開会されることになったのは遺憾だ。しっかり与野党間で協議しながら、委員会を進めていきたい」と述べました。

自民 高木国対委員長 「官房長官が真摯に答える」

自民党の高木国会対策委員長は、記者団に対し「さきほど、自民党の質問者に対する答弁が松野官房長官からあったが、少し不足している部分がある。それを補う意味でも、野党からの質問に真摯(しんし)に官房長官が答えることになる」と述べました。

自民 梶山幹事長代行「発言はわが党の考えとも全く相いれず」

自民党の梶山幹事長代行は、記者会見で「荒井氏の発言は、多様性を尊重するわが党の考えとも全く相いれず、あってはならない発言だった。更迭は、迅速かつ適切な対応だった」と述べました。

そのうえで「政権に携わる者、役所、自民党全体が、襟を正していかなければならない。常に公人として人に見られているという意識を持って行動しなければならない」と指摘しました。

自民 森山選対委員長「選挙に影響あると思う」

自民党の森山選挙対策委員長は、大津市で記者団に対し「オフレコの場だったとは承知しているが、やはり配慮に欠け、基本的なことを勘違いしているのではないか。選挙に影響はあると思うが、岸田総理大臣の本意ではなく、自民党がそういうことを考えている訳ではないことは明確にしていかなければならない。よく説明し、理解いただく努力を続けることだ」と述べました。

立民 安住国対委員長 「恥ずかしい状態を世界に示した」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「荒井 前総理大臣秘書官の発言は、単なる役人の不祥事以上に深刻な話だ。G7=主要7か国の議長国の日本だけがLGBTや同性婚の問題で全く時代遅れの話をしていて、恥ずかしい状態を世界に示してしまった。更迭に至った経緯を政府は率先して説明すべきだ」と述べました。

磯崎官房副長官「政府としての立場 丁寧に説明」

磯崎官房副長官は、記者会見で「発言は政府の方針と全く相いれず、言語道断で遺憾だ。国会の場でしっかりと政府としての立場を丁寧に説明していきたい」と述べました。

また、性的指向や性自認をめぐる差別を禁止する法律の必要性については「議員立法として議論があると承知している。国会で議論されるものと考えており、政府としてはその動きを注視していきたい」と述べました。

一方、岸田総理大臣が先の衆議院予算委員会で夫婦別姓や同性婚に慎重な検討が必要だという考えを示したことについては「答弁案は法務省が作成し、それをベースに質疑のやり取りの中で岸田総理大臣が答弁した」と述べました。

性的マイノリティー支援団体が政府に抗議と要請

同性婚をめぐる差別的な発言で総理大臣秘書官が更迭されことをめぐり、性的マイノリティーの人たちの支援団体が総理大臣官邸を訪れ、発言は当事者を深く傷つけるものだと抗議し、同性婚を認める法整備などを求める要請書を提出しました。

この中で、性的マイノリティーの人たちの支援団体「公益社団法人Marriage For All Japan」のメンバーは、森まさこ総理大臣補佐官と面会し、岸田総理大臣宛ての要請書を手渡しました。

要請書では、今回の総理大臣秘書官による差別的な発言は、性的マイノリティーの人たちの尊厳を深く傷つけ、社会全体に誤ったメッセージを与えるもので断固抗議するとしています。

そして、政府に対し、同性婚を認める法整備に加え、作業チームを設置し、当事者の声を聞きながら権利保障の在り方の検討を進めることなどを求めています。

支援団体の代表理事の寺原真希子さんは「性的マイノリティーの存在を否定するに等しいもので、発言を聞いて死を選ぶほどに絶望した方がいる。政府は厳にことの重大性を自覚してもらいたい」と述べました。