「国葬」の演出 “桜を見る会受注の1社のみから入札” 官房長官

安倍元総理大臣の「国葬」の演出などの業務を、過去に「桜を見る会」を担当したイベント会社が落札したことについて、松野官房長官は、一般競争入札で1社のみから入札があったと説明し、手続きは適正に行われたという認識を示しました。

今月27日に行われる安倍元総理大臣の「国葬」について、式典の企画や演出などの業務を、過去に「桜を見る会」の会場の設営を担当した東京都内のイベント会社「ムラヤマ」が1億7600万円で落札しました。

松野官房長官は、5日午前の記者会見で「『国葬儀』の企画、演出および警備などの業務については所定の手続きのもとで、一般競争入札を実施した結果、『ムラヤマ』1社から入札があり、落札が決定した」と説明しました。

また、松野官房長官は、今回の入札に際し、業務を落札した会社側と、事前に個別の打ち合わせを行うようなことはなかったのか記者団に問われ、「事前の個別打ち合わせを含め、特定の業者に便宜を図ったなどの事実は一切ない」と述べ、入札手続きは適正に行われたという認識を示しました。

立民や共産「入札は“随意契約”や出来レースに見られるのでは」

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐり、立憲民主党や共産党などは、政府からヒアリングを行いました。

出席した議員が、落札の経緯について、「入札には1社のみが参加していて、国民から、事実上の随意契約や、『出来レース』に見られるのではないか」と指摘しました。

これに対し、内閣府の担当者は「一般競争入札なので、事前の説明会に参加したほかの会社も含めて、それぞれが入札をするかどうかを判断したと思う」と説明しました。

そのうえで、担当者は「結果的に1社になったが、しっかり手続きを踏んで入札を行ったと認識している」と述べ、手続きは適正に行われたという認識を示しました。

一方、出席した議員からは、「国葬」の実施にあたり、国民が黙とうなどの弔意を強制されないよう、政府が自治体などに通知を出すべきだという指摘が相次いだのに対し、担当者は「国がいろいろな文書を出すと誤解を招くおそれもあり、そうした通知は出さない」と述べました。

ムラヤマ「桜を見る会」会場の設営業務5年連続で落札

国の入札情報によりますと今月27日に行われる安倍元総理大臣の国葬の企画や演出などの業務について一般競争入札が行われ、東京 江東区のイベント会社「ムラヤマ」1社のみが参加し、1億7600万円で落札しました。

この会社は安倍元総理大臣が主催した「桜を見る会」の会場の設営業務を平成27年から5年連続で落札しています。

今回の入札について岸田総理大臣は4日、「総理大臣経験者の合同葬なども担当していて、日本武道館で事業を担える業者は4社ほどに限られている中で、正式な手続きのもとに落札された」と述べました。

「ムラヤマ」は今回の入札について「通常の企画運営業務のなかの一つとして入札しました。しっかりと業務を遂行したい」と話しています。

また、参列者をバスで送迎する業務の一般競争入札も行われ、4社による競争の結果、東京 新宿区の旅行会社が526万1400円で落札し、2つの業務で合わせて1億8000万円余りとなります。

政府は今回の国葬でおよそ2億5000万円の支出を閣議決定しています。

国葬 予算執行停止など仮処分申し立てを退ける さいたま地裁

今月27日に行われる安倍元総理大臣の国葬に反対する市民グループが、予算の執行をさせないよう求めた仮処分の申し立てについて、さいたま地方裁判所は退ける決定をしました。

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐっては、反対する市民グループが「『国葬』は法的根拠がなく憲法違反で、思想良心の自由を侵害する」などとして、実施を決めた閣議決定の取り消しや国の予算執行の停止を求める仮処分を申し立てていました。
これについて、さいたま地方裁判所は5日、決定を出し、申し立てを退けました。
このなかで倉澤守春裁判長は、申し立てについて、「重大な損害を避けるために緊急の必要があるとは言えず不適法だ」などとしています。
国葬をめぐる仮処分の申し立てについては、これまでに東京地裁や東京高裁が退ける決定を出しています。

決定について、市民グループの共同代表を務める武内暁さんは「私たちや国の言い分をしっかり聴く手続きを取らずに一方的な判断が下された。国葬が行われる今月27日までに抗告などの手段を通じて国葬に法的な問題があることを訴えていきたい」と述べました。

「国葬」参院でも閉会中審査開催を確認 日程調整へ

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐり、参議院議院運営委員会の理事会が開かれ、衆議院と同様に閉会中審査を開催することを確認し、日程調整を進めることになりました。

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐる国会の閉会中審査について、岸田総理大臣がみずから出席して実施の意義などを説明する意向を示したことを受け、参議院議院運営委員会の理事会が開かれました。

この中で与党側は、衆議院と同様参議院でも閉会中審査を開催し、岸田総理大臣の説明と与野党の質疑を行うことを提案しました。

これに対し、野党側からは「予算が絡む話なので予算委員会などで開催すべきではないか」といった意見が出されましたが、最終的に議院運営委員会で開催することで一致しました。

そして、野党側は十分な審議時間の確保と政府が質疑に必要な資料を提出することを求め、今後、与野党の筆頭理事の間で日程などについて協議を進めることになりました。

「国葬」をめぐる国会の閉会中審査について、衆議院では与党側は今週後半にも開催したい考えです。

野党側は国葬の実施に必要な費用の大枠を示すことや十分な質疑時間の確保などを求めていて、与党側は野党側の要求を踏まえ政府と対応を調整しています。