旧統一教会との関係 地方政治にも
信者の議員「理念広めようと」
議員「票を入れてもらわないと」

全国で次々と明らかになる「世界平和統一家庭連合」=旧統一教会と政治家とのつながり。
関連団体のイベントに出席したり祝電を送ったりする接点が相次いで明らかになっています。
岸田総理大臣は、閣僚などを含め自民党議員が懸念や疑念を持たれていることを陳謝し、関係を断つことを党の基本方針として徹底すると強調しました。
こうした関係は、地方政治にも浸透していることが明らかになってきました。
取材に応じた現役信者の元議員は「政治に対して布教したかった。思想の啓蒙だ」と述べ、別の元議員は、自身の選挙のために付き合いを見直すことは簡単ではないとし、信者側と政治家側、それぞれにメリットがあったといいます。
複数の証言から、その実態が明らかになりました。

食事や交通費 教会負担で韓国訪問 元議員

旧統一教会と関わりがあると知りながら、関連団体のイベントに毎年出席するなどしてきた大阪府内の元市議会議員が、NHKの取材に応じました。

元議員は、旧統一教会の関連団体が全国各地で開いている「ピースロード」という自転車イベントに複数回、出席したほか、信者の集まりで市政報告会として講演するなどしてきました。

おととしには、関連団体が韓国で開催したイベントに招待され、食事代や往復の交通費など、ホテル代以外の経費を教会側に負担してもらった上で、各地から集まった地方議員とともに韓国を訪れたということです。

元議員は「われわれ政治家は呼ばれたらあいさつにも行くし、祝電も出す。そんな感覚だ」と話しています。

さらに、元議員は、長年、自身の選挙の際に、旧統一教会の信者に選挙活動を手伝ってもらい、ことし行われた選挙でも、ビラ配りなどを担当してもらったといいます。

その上で、元議員は「初めて立候補した15年前の選挙から応援してくれている人たちに対し、旧統一教会の方かどうかを確認して『帰ってください』とは絶対に言えない」と述べ、今後も、自身の選挙のために、付き合いを見直すことは簡単ではないとしています。

選挙で信者を動員「票も入れてもらわないと」現職議長

関西の別のある地方議会の議長も、国会議員の秘書を務めていた際には、国政選挙で候補者が街頭演説をする時に、旧統一教会の信者に動員をお願いしてきたと証言しました。

この議長は「私から縁を切るとかそういうのはない。人をたくさん集めないといけないし、票も入れてもらわないといけない。選挙になった時にはやはり勝たなくてはならない」として、選挙に勝つために今後も関係を持ち続けると述べました。

現役信者の地方議員「理念広めようと活動」

ある地方自治体で保守系会派に所属し、地方議員を務める旧統一教会の現役信者の男性も、NHKの取材に応じ、教会と政治家との関係について証言しました。

印鑑の購入をめぐって信者が逮捕され、旧統一教会の施設が家宅捜索を受けた2009年以降は、教会側の地域での活動に変化が感じられるようになったと説明しています。
議員は「『統一教会』という名前を前面に出して活動することが難しくなる中で、宗教団体として市民権を得るためには地域に根ざして活動する必要があり、地方議員との関わりもつくっていく必要があった」と話しています。

この議員は、伝統的な家族観を重視するなど教会の理念に近い政策や条例を後押しするため、議員仲間に呼びかけ各地で勉強会を開催するなどしてきたといいます。

議員は「政治活動に宗教理念が入り込むのは非常に難しい部分があるが、教会では家庭を大切にしたいと考えていて、理解を進めていくためにまだ条例がない地域で条例の大切さを説明したり、協力してくれる議員と情報交換しながら活動してきた」と話しました。

また、自身が仲介して議員や地元の首長を教会などに紹介したことがあるといい「カルトからの脱却ではないけれど、政治家が教会のイベントに来てくれることで、教会の活動としてPRできるし、信者側も世の中に受け入れられたと安心することができた」と話していました。

さらに、国政選挙では、自身の支援者に対し、教会を挙げて支援していた候補者への投票を促すこともあったということです。
その上で、今回の事件を受けて、こうした活動が難しくなっていることについて「全国各地で首長や政治家に教会関係のイベントに出席してもらうため、長い時間をかけて信頼関係をつくってやっと認められるようになったと思っていたやさきにこのような事件が起き、ショックを受けている」と話していました。

現役信者の元議員「政治に布教したかった」

関西の地方議員だった現役信者の男性は旧統一教会の関連団体のメンバーとして活動していて、関西の国会議員の選挙を手伝うよう言われ、その後、選挙を手伝った議員の秘書にならないかと打診されたということです。
男性は申し出を受けて秘書となり、その後、関西で市議会議員となりました。

教会側が地方議会に議員を送り出そうとする狙いについて、男性は「政治に対して布教したかった。思想の啓蒙です」と述べました。

一方、男性は、受け入れる政治家の側も、信者に選挙を手伝ってもらうことで選挙活動の費用を安く抑えるなどのメリットがあったとして、当時を振り返って「信者は熱心に活動するし、金はかからない。
政治家は『ありがたいことだ』などと言っていた」と証言しました。

旧統一教会「友好団体が強く姿勢を持って関わってきたことは事実」

「世界平和統一家庭連合」=旧統一教会は、今月行われた記者会見で地方議員も含めた政治家との関わりについて「法人として特定の党を応援する態度は取っていないが、政治に私たちの友好団体が強く姿勢を持って関わってきたことは事実で、政治家の皆さまとはともによりよき国づくりに向かって、手を合わせてきたと思っている」としています。

専門家 議員は関係を絶ち認識深めて

地方の政治家と旧統一教会との関係について、宗教団体に詳しい北海道大学大学院の櫻井義秀教授は「政治家が自分たちの活動を認めてくれることは、教会の信者にとって非常に大きな声援になる。教会側は自分たちが日本社会でバッシングされない状況を作り上げたいという思いを持って活動しているのではないか」と指摘しています。
そのうえで「問題は旧統一教会の活動が社会の公益に資しているのかどうか、ということに尽きる。霊感商法の被害者、現在であれば多額献金をした人がどんどん出てきている。議員たちには関係を断ってほしいが、少なくとも、旧統一教会が何をしてきたのかしっかりと認識をしてもらいたい」と話していました。

大阪局記者
北森 ひかり
2015年入局。大阪府警を担当したあと、医療や人権問題などを取材。発生当初から元総理大臣銃撃事件を取材。
大阪局記者
佐藤 崇大
2017年入局。初任地の京都局、丹後舞鶴支局を経て大阪局。大阪府庁の取材を担当したのち、大阪府警担当。
奈良局記者
平塚 竜河
2020年入局。奈良局が初任地で現在、県政を担当。奈良の政治を日々、取材。