ウクライナ情勢 外交努力で
“1億ドル規模の円借款用意”

ウクライナ情勢をめぐって緊張が続く中、岸田総理大臣は、15日夜、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、経済的な支援として少なくとも1億ドル規模の円借款を行う用意があると伝えました。そして両首脳は、外交努力を通じた緊張の緩和に向け、連携していく方針で一致しました。

岸田総理大臣は15日午後7時から、およそ30分間、ウクライナのゼレンスキー大統領と就任後初めての電話会談を行いました。

この中で岸田総理大臣は「重大な懸念を持って情勢を注視している。日本はウクライナの主権と領土の一体性を一貫して支持しており、力による一方的な現状変更は断じて認められない。厳しい状況下で、ウクライナが抑制的姿勢を維持し、外交努力による解決を追求していることに敬意を表する」と述べました。

そして両首脳は、今後の情勢の見通しや仮にロシアが侵攻した場合の対応などをめぐって意見を交わしたうえで、外交努力を通じた緊張の緩和に向け、連携していく方針で一致しました。

また岸田総理大臣が、ウクライナ側の要望を踏まえ、経済的な支援として少なくとも1億ドル規模の円借款を行う用意があると伝えたのに対し、ゼレンスキー大統領から謝意が示されました。

会談のあと、岸田総理大臣は記者団に対し「外交交渉による解決を強く求めているが、仮にロシアによる侵攻が発生した場合は、制裁も含め、起こった状況に応じてG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携して適切に対応していきたい」と述べました。

林外相 ロシア経済発展相と協議 外交的解決追求するよう求める

林外務大臣は、ロシアのレシェトニコフ経済発展相と行ったオンライン形式の経済協議で、重大な懸念を持ってウクライナ情勢を注視していると伝えたうえで、緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求めました。

日本とロシアは、15日、貿易や経済協力を協議する会合をオンライン形式で開き、日本側からは林外務大臣が、ロシア側からはレシェトニコフ経済発展相が出席しました。

この中で、林外務大臣は、緊張が続くウクライナ情勢を重大な懸念を持って注視していることを伝えたうえで、緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求めました。

これに対して、外務省によりますと、レシェトニコフ経済発展相からの発言はなかったということです。

一方、会合では、林大臣が、日本とロシアの経済分野での協力が両国の平和条約の交渉も含めた関係の発展につながるよう、対話の継続を呼びかけたのに対し、レシェトニコフ経済発展相も、コロナ禍でも両国の経済関係は進展しているとして、さらなる協力を進める考えを示しました。

ロシア国防省 演習終えた部隊 撤収開始と発表

ロシア国防省は15日、ウクライナ東部との国境近くに展開していたロシア軍の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しました。ただ、撤収を始める部隊の規模などは明らかにしておらず、ウクライナ情勢が緊張緩和に向かうのかは依然、不透明です。

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は15日「演習任務を終えた部隊はきょう、それぞれの軍が所属する基地に向けて移動を開始する」と述べ、ウクライナ東部との国境近くに展開していた西部と南部の軍管区の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しました。

また国防省は、8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアでの演習を終えた部隊も撤収を始めたとして戦車などを列車に積み込む様子を公開しました。

一方、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシで今月10日から行われている合同軍事演習について「今月19日には実弾演習が行われる」と述べ、その様子をメディアに公開するとしたほか、「ロシアの領土に隣接する、作戦上、重要な海域で海軍の演習も行われている」として黒海などでの演習が続いていることを強調しました。

ロシアのショイグ国防相は14日、プーチン大統領に対して、各地で行われている軍事演習について「完了するものもあれば、続いているものもある」と述べ、演習は事前の計画に基づいて進められていると報告していました。

今回の発表はこれを受けたものと見られますが、撤収を始める部隊の規模などは明らかにしておらず、ウクライナ情勢が緊張緩和に向かうのかは依然、不透明です。

バイデン大統領 外交解決目指すも慎重に見極め

アメリカのバイデン大統領はウクライナ情勢について演説を行い、外交的な解決を改めて呼びかける一方、ロシア国防省が発表した軍の一部撤収については「確認できていない。侵攻の可能性はまだ十分あり得る」と述べあらゆる事態に対応できるよう備えていくと強調しました。

アメリカのバイデン大統領は15日午後、日本時間の16日朝ウクライナ情勢について演説を行いました。

この中でバイデン大統領は「外交と緊張緩和の余地は十分残されている」と述べました。

その上で「アメリカやNATO=北大西洋条約機構はロシアの脅威ではない。ロシアを攻撃する意図もない」と強調し、改めて外交を通じた解決を目指す考えを強調しました。

その一方でバイデン大統領はロシア国防省が軍の一部の撤収を始めると発表したことについて「まだ確認できていない。今この時もロシアはウクライナを取り囲むように15万人を超える兵力をおいている。侵攻はまだ十分にあり得る」と述べ事態を慎重に見極める考えを示しました。

そしてバイデン大統領は仮にロシアがウクライナに侵攻した場合には「世界中の責任ある国々は対抗措置を取ることをためらいはしないだろう」と述べ欧米が結束して厳しい措置で応じるとして、外交的な解決を含めてあらゆる事態に対応できるよう備えていくと強調しました。

米ロ外相が電話会談 安全保障問題 対話継続で一致

緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が電話会談を行い、安全保障の問題で対話を継続することで一致しました。

アメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相は15日、電話会談を行いました。

ロシア外務省の発表によりますと、「ロシアが提起したあらゆる問題について実用的な対話を求めた」ということでラブロフ外相は、NATO=北大西洋条約機構を拡大させないことなどロシア側の要求も取り上げたと見られます。

また、ヨーロッパの安全保障を巡るアメリカとNATOの提案について、「引き続き、共同作業を続ける必要性を強調した」として、対話を継続する姿勢を示したということです。

両外相は、両国のさまざまな外交のレベルで、今後行う協議のスケジュールを話し合ったということで、対話を継続することで一致しました。

一方、アメリカ国務省の発表によりますと、ブリンケン長官は、アメリカとNATOの提案に対するロシア側からの書面での回答を待つと伝えるとともに、外交的な解決を追求すると強調したということです。

また、ロシア国防省が15日、ウクライナとの国境近くに展開していた軍の部隊が演習を終え、撤収を始めると発表したことについてブリンケン長官は会談の中で「検証できる確かで意味のある緊張緩和が必要だ」と強調し、撤収の規模や状況を踏まえ、ロシア側が安全保障をめぐる問題で真剣に交渉を行う用意があるのか見極めていく考えを示しました。