ウクライナ情勢
政府が侵攻時の制裁検討

ウクライナ情勢をめぐり、政府は、事態が急速に悪化する可能性が高まっているとして、現地に滞在する日本人に直接、国外への退避を呼びかけるなど、安全確保に全力をあげることにしています。
一方で、仮にロシアが侵攻した場合の制裁措置について、アメリカなどと連携して、具体的な検討を急ぐ方針です。

緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、政府は、14日NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、岸田総理大臣が、現地に滞在する日本人の保護などに万全を期すよう指示しました。

外務省によりますと、ウクライナには、14日時点でおよそ150人の日本人が滞在しているということです。

政府は、今後、商用便の運航がすべて停止されるおそれもあることから、大使館員らが、個別に電話して直接、国外への退避を呼びかけるなど安全確保に全力をあげることにしています。

また、現地では、各国の大使館機能を縮小する動きが広がっていることから、政府は、首都キエフにある日本大使館のほとんどの職員を退避させるとともに、西部のリビウに連絡事務所を設け機能を維持することにしています。

一方、岸田総理大臣は、14日の自民党の役員会で、仮にロシアが軍事侵攻した場合の制裁措置について、アメリカなどと調整していることを明らかにしました。

G7・主要7か国の財務相は、14日夜、共同で声明を発表し、「ロシア経済に甚大かつ即時の結果をもたらす経済・金融制裁を共同で科す用意がある」と表明し、ロシア側に警告しました。

政府は、関係国と連携して、制裁措置の具体的な検討を急ぐ一方で、緊張緩和に向けた外交努力も粘り強く続けていく方針です。

ロシア外相 プーチン大統領に対話継続を提言 国営テレビで中継

ウクライナ情勢をめぐり、ロシアのラブロフ外相は、プーチン大統領に対して欧米側と合意に至るチャンスは残されているとして対話を継続すべきだとする考えを伝えました。

一連のやりとりは、国営テレビで中継され、ロシアとしては、軍事行動を起こす可能性が十分あるとアメリカが警戒を強めるなか、対話重視だとする姿勢を強調した形です。

ウクライナ情勢をめぐってアメリカ政府などは、ロシアがまもなく大規模な軍事行動を起こす可能性が十分あるとして警戒を強めています。

こうした中、プーチン大統領は14日、今後の対応を検討するため、ラブロフ外相やショイグ国防相をクレムリンに呼び、個別に報告を受けました。

このうちプーチン大統領は、ラブロフ外相に対して「ロシアが懸念する重要な問題について欧米側と合意するチャンスはあるのか、それとも欧米側は終わりのない協議に引きずり込もうとしているだけなのか」と問いかけました。

これに対してラブロフ外相は、今週も外交日程が予定されているとした上で「可能性は残されていると思う。いつまでも続けるべきではないが、現時点では協議を継続し、活発化させることを提案したい」と述べ、対話を継続すべきだとする考えを伝えました。

さらに、ラブロフ外相は、アメリカやNATO=北大西洋条約機構からの回答に対する返答として10ページに及ぶ草案が準備できているとプーチン大統領に報告しました。

一方、ショイグ国防相は、各地で行われている軍事演習について「完了するものもあれば続いているものもある」と述べ、演習は、事前の計画に基づいて進められているとプーチン大統領に伝えました。

プーチン大統領との一連のやりとりは、国営テレビで中継され、ロシアとしては、ウクライナの国境周辺に軍の部隊が集結しているのは演習目的であるとともに、欧米との間では対話重視だとする姿勢を強調した形です。

駐日ロシア大使「ロシアには戦争をする意図も計画もない」

ウクライナ情勢を巡って緊張した状況が続くなか、日本に駐在するロシアのガルージン大使が、NHKのインタビューに応じ「ロシアには戦争をする意図も計画もない」と述べ、ロシアから軍事行動を起こすことはないと主張しました。一方、NATO=北大西洋条約機構が拡大していることなどが、ロシアの脅威になっているとして、ウクライナ周辺で続けている大規模な軍事演習の正当性を強調しました。

日本に駐在するロシアのミハイル・ガルージン大使が14日、NHKのインタビューに応じ、ウクライナ情勢をめぐり、アメリカが、ロシア軍がまもなく大規模な軍事行動を起こす可能性は十分にあるとしていることについて「ロシアには戦争をする意図も計画もない」と述べ、ロシアから軍事行動を起こすことはないと主張しました。

一方、NATOが1990年代以降、ロシアの周辺国にも拡大してきたとして「NATOの東方拡大が明らかにロシアにとって脅威であり、ウクライナが加盟すれば、その脅威がさらに高まるのは間違いない」と指摘しました。

そのうえでガルージン大使は「国民の命と暮らしを守るために必要な軍隊を持たねばならず、訓練も行わなければならない。第三国に対して軍事侵攻を行う前兆とみてはならない」と述べ、ウクライナ周辺で続けている大規模な軍事演習の正当性を強調しました。

また、「ウクライナ軍に大量に兵器を調達することは、ウクライナの武力機関に挑発的な行動をさせかねず極めて危険だ」と欧米各国の対応を批判したうえで、ロシアが求めているNATOの不拡大などの提案を巡って「もしNATOが提案を拒否するのであれば、ロシアの安全を確実に守るために、『軍事技術的な措置』をとることが可能だ」と述べ、具体的な内容についての言及は避けましたが、何らかの対応をとる可能性に触れました。

一方、ガルージン大使は、「外交の動きは必ず続くと思う」とも述べ、ロシアは、関係国と外交を通じた対話を続けていくと強調しました。

米英首脳 ウクライナ情勢 外交余地は残されている認識で一致

緊張が続くウクライナ情勢をめぐってアメリカのバイデン大統領はイギリスのジョンソン首相と電話で会談し、ロシアによるウクライナへの侵攻を阻止するための外交の余地は残されているとの認識で一致しました。

アメリカのバイデン大統領は14日、イギリスのジョンソン首相と電話で会談し、ロシアによる侵攻が懸念されているウクライナ情勢について意見を交わしました。

会談後、アメリカのホワイトハウスは声明を発表し「ロシアがさらなる軍事行動に踏み切った場合に、厳しい代償を払わせるために同盟国や友好国との緊密な連携を進めていくことを両首脳は明確にした」としています。

また、イギリスの首相官邸の報道官は声明を発表し「両首脳は、外交の機会は残されており、ロシアがウクライナに与えている脅威を取り除くことが必要だということで一致した」として、ロシアの侵攻を阻止するための外交の余地は残されているとの認識で一致したとしています。

一方、声明ではヨーロッパ諸国がロシアの天然ガスへの依存度を下げる必要性を指摘し、それがロシアに打撃を与えることになるとして、長期的にエネルギー面でのロシアの関与を減らしていくべきだとの立場を示しています。