ウクライナ「急速悪化の
可能性」大使館員も退避

緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、外務省は13日夜、ごく少数を除いて現地の日本大使館員を退避させると発表し、今後大使館の業務は限られたものになるとして、滞在する日本人に直ちに退避するよう重ねて強く呼びかけています。
林外務大臣は「事態が急速に悪化する可能性が高まっている」と述べました。

ウクライナ情勢をめぐって、外務省は今月11日、全土における「危険情報」を最も高いレベル4の退避勧告に引き上げました。

これに関連して外務省は、ロシアが今月16日に軍事侵攻をする可能性があるというアメリカ政府の見方を伝える報道もあり、各国の大使館で業務停止の動きなどが広がっているとしています。

このため、現地の日本大使館についても、ごく少数を除いて大使館員を退避させ機能を縮小すると13日夜、発表しました。

そして今後、大使館業務は限られたものになるとして、滞在するおよそ150人の日本人に対し、直ちに国外に退避するよう重ねて強く呼びかけています。

林外務大臣は13日、訪問先のハワイで記者団に対し「事態が急速に悪化する可能性が高まっており、ウクライナに滞在している方は、最も安全な手段で直ちに退避していただきたい」と述べました。

プーチン大統領 対話継続も軍事的圧力で安全保障上の要求か

緊張が続くウクライナ情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領は、今月15日、ドイツのショルツ首相と会談する予定とするなど、対話を継続する姿勢を示しています。
一方、ロシア軍は、今週もウクライナ周辺で大規模な合同演習を続ける予定で、プーチン大統領としては軍事的な圧力を強めながら欧米各国に安全保障上の要求を迫る思惑もあるとみられます。

ウクライナ情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領は、12日、フランスのマクロン大統領、アメリカのバイデン大統領と相次いで電話で会談しました。

一連の会談の後、ロシア大統領府の高官は、NATO=北大西洋条約機構をさらに拡大させないことなどを求めるロシアと、アメリカとの立場の隔たりは埋まっていないとしたうえで、アメリカ側の見解を慎重に吟味し近く、今後の対応を示すとしています。

こうした中、プーチン大統領は、今月15日、ドイツのショルツ首相をモスクワに初めて招き会談する予定です。

ドイツは、ロシアを天然ガスの主要な調達先とするなど、経済的な結び付きが強くプーチン大統領としては、ショルツ首相との会談を通じ、大規模な経済制裁を警告する欧米側の結束に揺さぶりをかけたいねらいもあるとみられます。

一方、ロシア大統領府によりますとプーチン大統領は、12日、同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領と電話で会談し、今後の対応について話しあったとみられます。

ウクライナ北部と国境を接するベラルーシでは、今週もロシア軍が大規模な合同軍事演習を続ける予定で、プーチン大統領としては、軍事的な圧力を強めながら欧米各国に安全保障上の要求を迫る思惑もあるとみられます。

ドイツ 緊張緩和に向け積極的に関与へ

ウクライナ情勢の緊張緩和に向けてヨーロッパの主要国ドイツも、首脳外交や、閣僚などが出席する国際会議の開催を通して、積極的に関与しようとしています。

ドイツのショルツ首相は14日、ウクライナを訪れてゼレンスキー大統領と会談したあと、15日にはロシアでプーチン大統領と会談を行う予定です。

ドイツ政府はプーチン大統領との会談では、ウクライナとの国境付近に軍の部隊を増強するロシアの狙いについて見極めたいとしています。

ショルツ首相は先週、ワシントンでアメリカのバイデン大統領と会談したのをはじめ、フランスのマクロン大統領やウクライナと国境を接するポーランドのドゥダ大統領などと相次いで会談を行いました。

一連の会談を通して欧米各国と緊密に連携し、ロシアに対して一致した対応をとる姿勢を強調しています。

またドイツ南部では、今月18日から20日にかけて世界各国の首脳や閣僚などが安全保障問題について話し合う「ミュンヘン安全保障会議」が対面形式で開かれ、アメリカのハリス副大統領や国連のグテーレス事務総長などが出席し、ウクライナ情勢について議論が交わされる見通しです。

エネルギー分野をはじめロシアと経済的な結びつきも強いドイツとしては、ロシアとの決定的な対立を避けたい思惑もあり、フランスとともに緊張緩和に向けて積極的に関与しようとしています。
ウクライナ 首都キエフ 市当局は軍事攻撃も想定し準備進める
ロシアがベラルーシで合同の軍事演習を行うなど緊張が続く中、ベラルーシとの国境から90キロほど離れたウクライナの首都キエフでは、人々がいつもどおりの生活をおくる一方で、市当局が、ロシアによる軍事攻撃も想定して準備を進めています。

キエフにある市場や飲食店では、週末を家族や友人たちと過ごす人たちでにぎわっていて、市内に住む女性は、「私は状況を冷静に見ています。以前と同じように生活しています」と話していました。

一方、キエフ市は今月11日、公式サイトで「軍事攻撃にたえるため」として最大で10日分にあたる備蓄燃料を確保し、医療機関など重要な社会インフラ施設を維持する準備をしていると発表しました。

また市内各地に避難場所などを定めた計画も作成しているということでキエフのクリチコ市長は「私たちは備えています。最悪の事態も含めてさまざまなケースについて考えています」と述べ、ロシアによる軍事攻撃も想定して準備を進めていると明らかにしました

バイデン大統領 ウクライナ大統領と電話会談 「断固対応」確認

緊張が続くウクライナ情勢をめぐってアメリカのバイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ロシアが侵攻に踏み切った場合には同盟国などと迅速かつ断固とした対応をとることを改めて確認しました。

アメリカのバイデン大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領と1時間近くにわたって電話会談を行い、ロシア軍の大規模な部隊がウクライナなどとの国境に展開する、緊迫した現地情勢について意見を交わしました。

アメリカのホワイトハウスは会談後、声明を発表し「ウクライナの主権と領土の保全についての決意を改めて確認した。もしロシアがウクライナに攻撃を仕掛ければアメリカは同盟国や友好国とともに迅速かつ断固とした対応で応じる」としてロシアをけん制しました。

そのうえで「国境地帯のロシア軍の増強に対して外交と抑止を続けていくことの重要性で両首脳は一致した」として、引き続き外交を通じた解決を目指すとしています。

また、バイデン大統領はかねてから米ロ両国やNATO=北大西洋条約機構の加盟国だけでウクライナ情勢について物事を決めることはないと強調していて、この日の会談でも前日にロシアのプーチン大統領と行った電話会談の内容についてゼレンスキー大統領と共有したものとみられます。

米大統領補佐官「ロシア軍 大規模軍事行動の可能性十分ある」

ウクライナ情勢をめぐって、アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は13日、CNNテレビなどに出演し「ロシア軍の増強や部隊の展開を見れば、まもなく大規模な軍事行動を起こす可能性は十分にある」と述べて事態は緊迫していると改めて強調しました。

また、ロシアがウクライナに侵攻する際のシナリオについて「大量のミサイルや爆弾による攻撃で始まるだろう。その後、地上軍が国境を越えて侵攻してくる」と述べました。

そのうえで「プーチン大統領が何を考えているかや、何をしようとしているかはわからないが、アメリカは外交を続ける用意がある。ただロシアが事態を前に進めるなら、同盟国や友好国と結束して断固とした態度で応じる用意がある」と述べ厳しい制裁措置などで応じると警告しました。

一方、先週、ウクライナにいるアメリカ人に48時間以内に退避するよう呼びかけ、その後、期限となったことについては「民間機が運航を続けている間にアメリカ人は退避すべきだ」と改めて退避を呼びかけました。

そしてウクライナのアメリカ大使館の職員のほとんどに退避を命じたことについて「必要になれば全員を退避させる準備ができている」と述べました。

ウクライナ大統領府 バイデン大統領に訪問要請

ウクライナ大統領府は、13日、声明を発表し、ゼレンスキー大統領が、アメリカのバイデン大統領との電話会談で、アメリカのこれまでの支援について感謝の意を伝えたということです。

その上で「バイデン大統領が、ここ数日以内に、首都キエフを訪問してくれたらそれは、緊張緩和に向けた強力なシグナルになると確信している」と述べ、緊張の緩和に向けて、バイデン大統領にウクライナへの訪問を要請したことを明らかにしました。

ただ、声明では、バイデン大統領が要請に応じたかどうかには触れていません。