岸田新内閣
半数以上が初入閣
 

自民党の岸田総裁は国会で菅総理大臣の後任の第100代の総理大臣に選出され、新しい内閣を発足させます。

財務大臣や外務大臣にベテランを充てる一方、ワクチン接種の担当大臣とデジタル大臣には当選3回の女性議員を起用するなど、半数以上が初めての入閣となります。

閣僚名簿発表

岸田総理大臣は、閣僚人事を行い、松野官房長官が閣僚名簿を発表しました。

20人のうち初入閣が13人

閣僚20人のうち初入閣は13人、再入閣は4人、再任が2人、ポストが変わっての起用が1人となっています。

派閥別では

派閥別で見ますと、細田派と竹下派が最も多く4人ずつ、麻生派と岸田派が3人ずつ、二階派が2人、無派閥が3人となっています。

官房副長官にはいずれも岸田派の木原誠二衆議院議員と磯崎仁彦参議院議員を充てるほか、事務方トップとして歴代最長の在任期間を務めた杉田副長官の後任には栗生俊一元警察庁長官が起用されます。
岸田総裁は組閣を終えた後、皇居での親任式と閣僚の認証式を経て、総理大臣として最初の記者会見を行ったあと初閣議に臨むことにしています。

岸田総裁「強い思い 覚悟を持って臨みたい」

岸田総裁は、午前8時前、東京都内のホテルで開いたセミナーに出席したあと、午前8時半すぎに党本部に入りました。記者団に対し「首班指名を受けて、これからが本当の意味でスタートだと思っている。強い思いで、強い覚悟を持ってこれからに臨んでいきたい」と述べました。

官房長官に松野博一氏

松野氏は、衆議院千葉3区選出の当選7回で、59歳。自民党細田派に所属しています。
会社員や松下政経塾を経て、平成12年の衆議院選挙で初当選し、厚生労働政務官や文部科学副大臣などを歴任しました。
平成28年の第3次安倍第2次改造内閣で文部科学大臣として初入閣し、現在は党の総務会長代行を務めています。
松野氏は、教育や雇用問題など幅広い政策分野に通じていることで知られています。
岸田氏としては、所属する細田派で事務総長を務め、派内や他の派閥との調整にあたってきた松野氏を、官房長官に起用することにより、政権基盤を安定させる狙いがあるものとみられます。

財務大臣に鈴木俊一氏

鈴木氏は、衆議院岩手2区選出の当選9回で、68歳。自民党麻生派に所属しています。
鈴木善幸・元総理大臣の長男で、麻生副総理兼財務大臣の義理の弟です。
平成2年の衆議院選挙で初当選し、これまでに環境大臣やオリンピック・パラリンピック担当大臣、それに党の総務会長などを歴任しました。
今回の総裁選挙では、岸田総裁の推薦人代表を務めました。
岸田氏としては、党三役や閣僚を歴任してきたベテランで、麻生氏にも近い鈴木氏を財務大臣に起用することで、政権基盤を安定させるとともに、今後、編成することになる新型コロナウイルスの支援策などを盛り込んだ補正予算案などの国会審議を円滑に進めたいねらいがあるものとみられます。

経済産業相に萩生田光一氏

萩生田氏は文部科学大臣から、ポストをかえての起用となります。萩生田氏は、衆議院東京24区選出の当選5回で、58歳。自民党細田派に所属しています。
東京・八王子市の市議会議員や東京都議会議員などを経て、平成15年の衆議院選挙で初当選しました。
安倍政権で、官房副長官や党の幹事長代行として政権運営を支え、おととし9月に文部科学大臣として初入閣し、菅内閣でも再任されました。
そして、公立小学校の1クラス当たりの定員を35人以下に引き下げ、すべての学年でいわゆる「35人学級化」を実現するための法改正などに取り組みました。
岸田総裁としては、党内最大派閥の細田派に所属し、安倍前総理大臣に近い萩生田氏を起用することで、政権基盤を安定させるねらいがあるものとみられます。

外相に茂木敏充氏 再任

茂木氏は、衆議院栃木5区選出の当選9回で、65歳。自民党竹下派の会長代行を務めています。
平成5年の衆議院選挙で当時の日本新党から初当選し、その後、自民党に移り、これまでに、経済産業大臣や金融担当大臣などの閣僚や党の政務調査会長や選挙対策委員長などを務めました。
第3次安倍第3次改造内閣では、経済再生担当大臣として、TPP=環太平洋パートナーシップ協定や日米貿易協定の交渉などでも中心的な役割を担いました。
おととしからは外務大臣を務め、日本が推進する自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて各国外相らとの会談を精力的にこなしたほか、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う水際対策などの対応にもあたっています。
茂木氏は、今回の総裁選挙では岸田氏を支持しました。
岸田氏としては、外交の継続性を重視するとともに、要職を歴任し、竹下派の幹部も務めている茂木氏を引き続き閣僚に起用することで、政権基盤を安定させるねらいがあるものとみられます。

防衛相に岸信夫氏 再任

岸氏は、衆議院山口2区選出の当選3回で、62歳。自民党細田派に所属しています。
安倍前総理大臣の実の弟で、祖父は岸信介・元総理大臣です。
商社勤務を経て、平成16年の参議院選挙で初当選し、2期目の途中の平成24年、衆議院選挙に立候補して当選しました。
外務副大臣などを務めたあと、去年9月に、菅内閣で防衛大臣として初入閣しました。
そして、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の開発などを盛り込んだ、ミサイル阻止に関する新たな方針の策定や、自衛隊が運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターの運用などにあたってきました。
岸田総裁としては、安全保障政策の継続性を重視したものとみられます。

厚生労働相に後藤茂之氏

後藤氏は、衆議院長野4区選出の当選6回で、65歳。自民党では、派閥に所属していません。初めての入閣です。
旧大蔵省の職員を経て、平成12年の衆議院選挙で初当選し、これまでに国土交通政務官や法務副大臣、衆議院厚生労働委員長などを歴任し、菅政権では、党の政務調査会長代理を務めてきました。
岸田総裁としては、後藤氏が税制や経済政策、社会保障など、幅広い分野の政策に精通し、党の側で、新型コロナウイルス対策の取りまとめにあたってきたことなどを評価したものとみられます。

経済再生相に山際大志郎氏

山際氏は、衆議院神奈川18区選出の当選5回で53歳。自民党麻生派に所属しています。
獣医師として動物病院での勤務を経て、平成15年の衆議院選挙で初当選し、これまでに内閣府政務官や経済産業副大臣を歴任し、菅政権では、党の政務調査会長代理を務めてきました。
今回の総裁選挙では、岸田氏の推薦人となっていました。
岸田総裁としては、経済やエネルギー政策に明るい山際氏を起用することで、総裁選挙の際に掲げた新しい資本主義の具体化を図るとともに、山際氏が甘利幹事長にも近いことから、政権基盤を固めるねらいもあるものとみられます。

ワクチンの担当大臣に堀内詔子氏

堀内氏は初めての入閣でオリンピック・パラリンピック担当大臣も兼務します。
堀内氏は、衆議院山梨2区選出の当選3回で55歳。自民党岸田派に所属しています。初めての入閣です。
堀内氏は、岸田派の前身の派閥で会長を務めた堀内光雄元総務会長の義理の娘で、夫は、岸田総裁が旧長銀=日本長期信用銀行に勤務していた当時の1年後輩で、現在は富士急行の社長を務める堀内光一郎氏です。
平成24年の衆議院選挙で初当選し、厚生労働政務官を務めたあと、菅内閣では環境副大臣を務めてきました。
岸田総裁としては、当選3回の堀内氏を起用することで、みずからの人事の方針としていた中堅・若手の登用を実現するとともに、女性活躍を推進する姿勢を示すねらいがあるものとみられます。

少子化担当相に野田聖子氏

野田氏は、こども庁や女性活躍なども担当する見通しです。
野田氏は、衆議院岐阜1区選出の当選9回で、61歳。自民党では、派閥に所属していません。
岐阜県議会議員などを経て、平成5年の衆議院選挙で初当選し、小渕内閣では、当選2回で郵政大臣に抜擢されました。
その後、平成17年に郵政民営化関連法案に反対して自民党を離党しましたが、翌年に復党し、消費者行政担当大臣や総務大臣、自民党総務会長などを歴任し、菅政権では、幹事長代行を務めました。
今回の総裁選挙で、野田氏は、子どもへの投資が成長戦略になると強調し、少子化対策や子どもの貧困を一元的に対応するため、「こども庁」の創設を訴えました。
岸田氏としては、女性政策や生殖補助医療の法整備などにも取り組んできた野田氏の起用で、女性活躍や子育て支援の姿勢をアピールするとともに、挙党態勢の構築を図るねらいがあるものとみられます。

経済安全保障の担当大臣に小林鷹之氏

小林氏は、衆議院千葉2区選出の当選3回で46歳。自民党二階派に所属しています。初めての入閣です。
岸田総裁と同じ開成高校の出身で、財務省の職員を経て、平成24年の衆議院選挙で初当選し、これまでに防衛政務官などを務めています。
小林氏は、自民党の戦略本部で、座長を務めた甘利幹事長のもと、経済安全保障に関する法整備の必要性を盛り込んだ提言の取りまとめに当たりました。
岸田総裁としては、小林氏の高い実務能力を評価して、意欲を示す経済安全保障に関する法整備にあたらせるとともに、当選3回の小林氏を抜てきして、若手議員登用の象徴としたいねらいもあるとみられます。

総務相に金子恭之氏

金子氏は衆議院熊本4区選出の当選7回で60歳。自民党岸田派に所属しています。初めての入閣です。
衆議院議員の秘書などを経て、平成12年の衆議院選挙に無所属で立候補して初当選し、その後、自民党に入党しました。
これまでに農林水産政務官や国土交通副大臣、自民党の政務調査会長代理などを歴任し、現在は衆議院の災害対策特別委員長を務めています。
岸田総裁としては金子氏が農林水産行政や国土交通行政など幅広い政策に明るいことに加え、みずからの派閥から初めての入閣をさせることで、求心力を高めたいというねらいもあるものとみられます。

法相に古川禎久氏

古川氏は、衆議院宮崎3区選出の当選6回で、56歳。自民党石破派に所属していましたが、先月末に退会し、現在は、無派閥です。初めての入閣です。
旧建設省の職員を経て、平成15年の衆議院選挙で初当選し、これまでに、法務政務官や財務副大臣、衆議院の財務金融委員長などを歴任しました。
今回の総裁選挙では、河野氏の推薦人となっていました。
岸田総裁としては、古川氏が、財政や司法など幅広い政策に精通していることに加え、総裁選挙で河野氏を支援した古川氏を入閣させることで、挙党態勢をアピールするねらいがあるとみられます。

文部科学相に末松信介氏

末松氏は、参議院兵庫選挙区選出の当選3回で、65歳。自民党細田派に所属しています。初めての入閣です。
兵庫県議会議員などを経て、平成16年の参議院選挙で初当選しました。
これまでに国土交通副大臣や参議院の議院運営委員長などを歴任し、安倍政権のもとで、おととしからは、党の参議院国会対策委員長として国会運営にあたってきました。
岸田総裁としては、党内最大派閥の細田派に所属し、参議院側の幹部も務めてきた末松氏を起用することで、政権基盤を固めるねらいがあるものとみられます。

農相に金子原二郎氏

金子氏は参議院長崎選挙区選出の当選2回で77歳。自民党岸田派に所属しています。初めての入閣です。
長崎県議会議員を経て、衆議院議員を5期、長崎県知事を3期務めたあと、平成22年から参議院議員を務めています。
これまでに、参議院の決算委員長や予算委員長のほか、党の総務会長代理などを歴任してきました。
岸田総裁としては、金子氏の豊富な政治経験を評価したものとみられます。

国土交通相に公明 斉藤鉄夫氏

斉藤氏は、衆議院比例代表中国ブロック選出の当選9回で、69歳。公明党の副代表を務めています。
建設会社勤務を経て、平成5年の衆議院選挙で初当選し、これまでに、環境大臣や党の幹事長、政務調査会長などを歴任しました。
幹事長を務めていた去年、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、すべての国民に10万円を一律給付する政策の実現などに尽力しました。
岸田総裁としては、公明党で要職を歴任している斉藤氏の豊富な政治経験を評価するとともに、衆議院選挙を前に、公明党との連立政権の結束をさらに強めたい狙いがあるものとみられます。

環境相に山口壯氏

山口氏は、衆議院兵庫12区選出の当選6回で、67歳。自民党二階派に所属しています。初めての入閣です。
外務省での勤務などを経て、平成12年の衆議院選挙に、無所属で立候補して初当選したあと、当時の民主党を経て、平成27年に自民党に入党しました。
これまでに民主党政権で、内閣府副大臣や外務副大臣などを歴任し、菅政権では、自民党の筆頭副幹事長を務めてきました。
今回の総裁選挙では、高市政務調査会長の推薦人となっていました。
岸田総裁としては、総裁選挙で高市氏を支援するとともに、二階派の事務総長も務める山口氏を入閣させることで、挙党態勢をアピールするねらいもあるとみられます。

復興相に西銘恒三郎氏

西銘氏は初めての入閣で、沖縄・北方担当大臣も兼務します。
西銘氏は、衆議院沖縄4区選出の当選5回で、67歳。自民党竹下派に所属しています。
沖縄県議会議員を経て、平成15年の衆議院選挙で初当選し、総務副大臣や経済産業副大臣などを務めてきました。
今回の総裁選挙では、岸田総裁の推薦人となりました。
岸田総裁としては、沖縄政策などに明るいことに加え、竹下派に所属する西銘氏を起用することで、政権基盤を固めるねらいもあるものとみられます。

国家公安委員長に二之湯智氏

二之湯氏は参議院京都選挙区選出の当選3回で77歳。自民党竹下派に所属しています。初めての入閣です。
京都市議会議員などを経て、平成16年の参議院選挙で初当選しました。
これまでに総務副大臣や参議院決算委員長などを歴任し、現在は党の参議院政策審議会長を務めています。
今回の総裁選挙では岸田総裁の推薦人となりました。
岸田総裁としては二之湯氏が地方行政などの政策に明るいことに加え、参議院側の意向も踏まえて起用したものとみられます。

万博相に若宮健嗣氏

若宮氏は、衆議院東京5区選出の当選4回で、60歳。自民党竹下派に所属しています。初めての入閣です。
民間企業に勤めたあと、平成17年の衆議院選挙で初当選し、これまでに防衛副大臣や外務副大臣などを歴任し、現在は、衆議院の安全保障委員長を務めています。
岸田総裁としては、外交・安全保障政策をはじめ、幅広い政策に明るいことなどを評価したとみられます。

デジタル相に牧島かれん氏

牧島氏は初めての入閣で、行政改革と規制改革も担当します。
牧島氏は、衆議院神奈川17区選出の当選3回で、44歳。自民党麻生派に所属しています。
平成24年の衆議院選挙で初当選し、これまでに内閣府の政務官を務めたほか、菅政権では、若手議員の登竜門とも言われる自民党の青年局長に女性として初めて就任しました。
また、デジタル庁の創設に向け、自民党の推進本部で、座長を務めた甘利幹事長のもと、組織や役割についての提言の取りまとめに当たりました。
岸田総裁としては、牧島氏がデジタル政策に精通していることに加え、若手や女性の登用をアピールするねらいがあるものとみられます。