核兵器禁止条約発効へ
日本被団協のコメント全文

核兵器禁止条約の発効が決まったことについて、広島と長崎に投下された原爆による被爆者の全国組織、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は、次のようなコメントを発表しました。

声明全文

核兵器禁止条約50カ国の批准書(加入書を含む)の寄託にあたって

被爆75年にあたる2020年10月25日、核兵器禁止条約の発効要件を満たす50カ国の批准書(加入書を含む)が寄託されました。

2017年7月7日、ニューヨークの国連本部において、核兵器禁止条約が122カ国の賛成で採択されてから、まる3年の歳月を得て達成された快挙です。この日から90日を経た来年の早い時期に、核兵器禁止条約は発効することになります。名実ともに核兵器はこの条約によって禁止されます。被爆者が訴え続けてきた「核兵器なくせ」を実現する確かな道が開かれました。この日は、1945年8月に核兵器が人類の頭上にさく裂した日と合わせて、人類史上銘記される日となるでしょう。

核兵器の禁止、廃絶を求め続けてきた私たち被爆者は、生きていてよかった、と心からなる大きな喜びを分かち合う日を迎えました。75年前、理由もわからぬまま命を奪われた数十万の原爆死没者と今日まで被爆者運動に死力を尽くした先達に伝えたいと思います。あわせて、国内外で長年にわたり、被爆者の運動を支え、核兵器の廃絶を目指し核兵器も戦争もない世界に実現する運動を共にしてくださった多くの個人と団体、条約の成立に尽力された各国政府および市民の皆さまと、喜びを分かち合いたいと思います。

しかし、核兵器不拡散条約(NPT)で核兵器の所有が認められている核兵器国5カ国とその同盟国、他の核保有4カ国もこの禁止条約に反対し続けています。残念ながら唯一の戦争被爆国の日本の政府もその仲間に入っています。

今日まで日本政府は「核兵器は人道法の精神に反するが実定法は存在しないので違法ではない」「国際司法裁判所は核兵器の威嚇と使用は違法としながらも、国家の存亡がかかる状況下での判断はしないとしている」ことをもって、「核兵器の使用は国際法では禁止されない」との見解をとり、核抑止による安全保障政策をとり続けてきました。

これらの言い分はもはや成り立ちません。日本国政府、国会はいまや核兵器の全面禁止の先頭に立つべきです。直ちに核政策を転換し、速やかに核兵器禁止条約に署名、批准し核なき世界の実現の先頭に立つことをここで改めて要請します。

被爆者は国内外で、原爆は人類と共存できない絶対悪の兵器であることを、証言し続けてきました。2016年からは核兵器の禁止、廃絶の条約をすべての国が結ぶことを求める訴えに対する国内外の市民の賛同を呼びかける「ヒバクシャ国際署名」を推進してきました。

今や世界の核保有国の市民の多くが、核兵器が反人間的兵器で不要なものであることを知るところとなりました。しかも、莫大な費用や時間、人材をかけて製造し、所有することは、国際法違反となります。しかし、核兵器使用の危機は払しょくされていません。万が一使用されることになれば、その被害は計り知れません。

被爆者の願いは、「ふたたび被爆者をつくらない」ことです。高齢化した被爆者に残された時間はわずかです。力のある限り平和を願うみなさんと共に、核兵器も戦争もない世界に向かって歩み続けます。

2020年10月25日
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)