河井議員裁判 元法相からの
現金提供 音声を公開

公職選挙法違反の罪に問われている河井案里議員の裁判で、広島市議会議員が河井克行元法務大臣から現金を受け取った際に録音した音声が法廷で流されました。

参議院議員の河井案里被告(47)は、夫で元法務大臣の克行被告(57)とともに、去年の参議院選挙をめぐって公職選挙法違反の買収の罪に問われ、無罪を主張しています。

東京地方裁判所で開かれた13日の裁判には、広島市議会の海徳裕志議員が証人に呼ばれ、河井元大臣から現金合わせて50万円を受け取ったことを認め、「当選7回のベテランで、首相補佐官を歴任している実力者で、断る勇気が無かった」と証言しました。

また、海徳議員は、現金を受け取った際のやり取りを録音していて、河井元大臣が「県連が何もやってくれないから大変ですよ。先生、助けてください。これ、気持ちですから」と述べた音声が法廷で再生されました。

午後からは、広島県議会議員の証人尋問が広島地裁と東京地裁を音声と映像で結ぶ「構外ビデオリンク方式」で行われ、法廷に設置されたモニターに議員の姿が映し出されました。

46人「構外ビデオリンク方式」で証人尋問へ

河井克行元法務大臣と案里議員の裁判で、検察は46人の証人について東京地裁と広島地裁を映像と音声でつなぐ「構外ビデオリンク方式」で証人尋問を行うよう求めていて、これは異例の人数になります。

検察は、河井元大臣と案里議員の裁判で139人の証人尋問を申請し、このうち46人について高齢や健康状態から東京地裁に出廷するのは難しいとして、広島地裁に出廷してもらい、「構外ビデオリンク方式」で証人尋問を行うよう求めています。

高齢の証人が新型コロナウイルスに感染するリスクを減らすため、東京への移動を避けるねらいもあります。

東京地裁の法廷では証言台の隣にカメラが設置され、検察官や弁護士などの質問者が撮影されるほか、モニターには広島地裁に出廷した証人が映し出されます。

構外ビデオリンク方式での証人尋問は、平成28年の刑事訴訟法の改正で導入され、最高裁によりますと、平成30年度と昨年度に全国で38回行われたということです。

今回、検察が申請している46人の証人尋問が構外ビデオリンク方式で行われることになれば、異例の人数になります。

専門家「真相解明がビデオリンク証人尋問の試金石に」

刑事訴訟法が専門の甲南大学法科大学院の渡辺修教授は、構外ビデオリンク方式の導入のメリットについて、「民間では会社でも家庭でも日常的に使われていて、刑事裁判だけが取り残されていた。新型コロナウイルスの感染リスクがある中、証人にとって移動の負担が減るだけでなく、重々しい法廷ではなく自由に発言できる場を確保できるという点でもメリットがある」と指摘しています。

そのうえで、今回、構外ビデオリンク方式で異例の人数の証人尋問が行われる見通しとなっていることについて、「事件の真相が解明されるかどうかが、今後のビデオリンク方式による証人尋問の試金石となり、『刑事裁判のIT化』が進む重大な局面で、非常に注目している」と話しています。