元や国民におわび」
イージス配備停止で防衛相

新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止について、河野防衛大臣は記者会見で「国民におわびする」と陳謝したうえで「国土の守りに穴を開けないようにしっかりやっていく」と述べ、弾道ミサイル防衛に万全を期す考えを示しました。

河野防衛大臣は「国土を守るため導入に全力を挙げてきたが、地元の皆様や日本国民、納税者におわび申し上げなければならない」と述べ、改めて陳謝しました。

そのうえで弾道ミサイル防衛体制について「当面イージス艦と地上配備型の迎撃ミサイルPAC3でやっていく。国土の守りに穴を開けないように、しっかりやっていかなければならない」と述べました。

記者団が「ミサイルの改修が必要ない別の候補地も検討したのか」と質問したのに対し、河野大臣は「『ブースター』を、一定の地域に確実に落下させることは難しいということで判断した」と述べ、配備はどのような候補地でも難しいという考えを示しました。

さらに今回の判断についてアメリカ側にも伝えているとしたうえで「日米同盟の重要性に何ら影響を及ぼすものではない。エスパー国防長官には近々、日米韓3か国の防衛相会談をはじめ、必要とあらばまた説明しようと思う」と述べました。

与党内から「事前の説明が不十分だ」という批判が出ていることについては「秋田県と山口県の両知事に説明するまでは、関係者以外一切説明をせず、情報漏れを防いできた。ただ防衛政策については今後与党でも議論をしていかなくてはならないので、情報提供はしっかりやっていく」と述べました。

一方、敵の基地を直接破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を今後検討するかについては「今の時点で何かを変えると決めているわけではない」と述べました。

安倍首相「説明前提違い進められず」

安倍総理大臣は、16日夜、記者団に対し、配備予定地への説明の前提が違ったためだと停止の理由を説明したうえで、日本の防衛に空白が生じないようNSC=国家安全保障会議で議論していく考えを示しました。

この中で、安倍総理大臣は、「イージス・アショアについては、12日金曜日にプロセスを停止するとの河野防衛大臣の決定を了承した。これまで地元の皆様に説明してきた前提が違った以上、これ以上進めるわけにいかないと、われわれはそう判断した」と述べました。

そのうえで、「弾道ミサイルの脅威から、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくことは政府の重要な使命だ。わが国の防衛に空白が生じてはいけない。今後、日本を守り抜いていくために必要な措置について、国家安全保障会議でしっかりと議論していきたい」と述べました。

菅官房長官「支出“むだ”の指摘はあたらない」

菅官房長官は午後の記者会見で、イージス・アショアの導入にかかる費用について、本体を2基整備するための費用に加え、30年間の維持運用経費や教育訓練経費など合わせて4500億円程度を見込んでいたと説明しました。

記者団が「結果的にむだな支出が生じた責任は誰が取るのか」と質問したのに対し、菅官房長官は「今回の判断は配備に関するプロセスを停止することであるため、現時点においてむだになるという指摘はあたらない」と述べました。

海幕長「イージス艦に代わる装備必要」

日本の弾道ミサイル防衛は、海上のイージス艦と陸上の迎撃ミサイル「PAC3」で備える態勢をとっていて、防衛省はイージス・アショアの配備により全国を24時間365日切れ目なく防護できるほか、イージス艦の乗組員の負担が大きく軽減されると説明してきました。

配備計画の停止が表明されたことについて、海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は16日の記者会見で「イージス艦8隻体制の確立に努力を傾注し、弾道ミサイル防衛を含むいかなる事態にも対処できるよう万全を期したい」と述べました。

そのうえで「イージス艦だけでは、乗組員の疲労のほか天候や気象などによって現場にいられないような状況もあるため、もう一つあったほうがミサイル防衛は万全を期せるとして、イージス・アショアの導入が決まったと思っている。海上自衛隊としてはイージス艦に代わる天候に左右されないものの導入を引き続き要望していくし、必要だと考えている」と述べました。

イージス艦を増やす考えについては「船を増やすには、船に乗る人をリクルートしなければならず、募集をいかに工夫するかという問題にもつながる」と述べ、今後NSC=国家安全保障会議を中心とした議論を注視する考えを示しました。

専門家「丁寧に説明すべきだった」

安全保障政策に詳しい拓殖大学の佐藤丙午教授は、イージス・アショアの導入をめぐり、政府がリスクなども含め、より丁寧に国民に説明すべきだったと指摘しています。

この中で、佐藤教授は「イージス・アショアの採用というのは、これまでの日本の防衛装備調達に比べて、かなりスピード感がある形での意思決定だった。国民が納得するだけの説明ができていたのか、十分な時間をとれていたのかについては、政府としても考えなければいけない」と指摘しています。

また「防衛政策を進める上で100%リスクフリーなことはなく、この問題は日本の防衛政策を考えるうえで、外すことができない問題だ」としています。

そのうえで「防衛政策、安全保障政策は、国民の理解なしには進んでいかない。最大多数の同意が得られるように、政府が丁寧に説明していく必要があるのは、今回の問題においても変わらない」と指摘しています。

また、今後については「これだけ額の大きい防衛装備計画ということもあり、安全保障政策の根幹から考え直す必要がある。新しい安全保障戦略の中で、イージスアショアがない形での抑止というのはどういうものなのか、政府としては丁寧に説明していく必要がある」と指摘しています。