務次官 中国の駐日大使
に“憂慮”「国家安全法制」

中国が香港での反政府的な動きを取り締まる「国家安全法制」の導入を決めたことを受けて、外務省の秋葉事務次官は、中国の駐日大使を外務省に呼び、今回の事態を深く憂慮しているとする日本の立場を伝えました。

中国の全人代=全国人民代表大会が、香港での反政府的な動きを取り締まる「国家安全法制」の導入を決めたことを受けて、外務省の秋葉事務次官は、28日夕方、中国の孔鉉佑・駐日大使を外務省に呼びました。

この中で秋葉次官は、香港は、一国二制度のもと、自由で開かれた体制が維持され、民主的に発展していくことが重要だとして、今回の「国家安全法制」の導入を深く憂慮していると伝えました。

これに対し、孔大使は「中国の国家安全に関わる事項である」などと、中国側の立場を説明しました。

茂木外相「主張すべきことは主張」

このあと茂木外務大臣は、記者団に対し「香港の在り方について、これまでも繰り返し中国側に働きかけを行っているが、今回の事態を深く憂慮しており、私の指示のもと、孔大使を招致し、日本の立場を強く申し入れた」と述べました。

そのうえで、「日中両国は、新型コロナウイルスの拡大防止をはじめとする地域や国際社会の課題にともに取り組みつつ、主張すべきことはしっかり主張していきたい」と述べました。

菅官房長官 「情勢を深く憂慮」

菅官房長官は、午後の記者会見で「国際社会や香港市民が強く懸念する中で議決され、情勢を深く憂慮している」と述べました。

そのうえで、「香港は、緊密な経済関係と人的交流を有する極めて重要なパートナーであり、一国二制度のもと、自由で開かれた体制が維持され、民主的・安定的に発展していくことが重要だ。中国側には、外交ルートを通じ、わが国の一貫した方針を伝えており、引き続き状況を注視するとともに、関係国と連携しつつ適切に対応していく」と述べました。

一方、菅官房長官は日中関係について、「両国は、新型コロナウイルスの感染拡大防止をはじめ、地域や国際社会の課題にともに取り組むべき関係にある。取り組みを進めつつ、主張すべきは主張していきたい」と述べました。

また、延期された習近平国家主席の日本訪問の時期は、さまざまな状況を見ながら調整を続ける考えを示しました。

共産 志位氏「中国に強く抗議する」

共産党の志位委員長は、中国の重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が、香港で反政府的な動きを取り締まる「国家安全法制」の導入を決めたことを受けて、談話を発表しました。

それによりますと、「香港での人権抑圧を強化する試みで、中国の国際公約である『一国二制度』を、有名無実化するものであり、強く抗議する」としています。

そのうえで、「現代の国際社会では、人権侵害はもはや単なる国内問題ではなく、重大な国際問題だ。中国政府が国際的な人権保障の取り決めを真剣に履行するよう強く求める」としています。

志位氏は、記者会見で「『一国二制度』は中国が世界に向かって公約したことだ。世界人権宣言などに照らしても、これは内政干渉ではなく、国際問題であり、中国政府に提起したい」と述べました。

日本在住の香港出身者は

香港で反政府的な動きを取り締まる「国家安全法制」の導入が中国の全人代=全国人民代表大会で決まったことについて、7年前に来日し現在通訳として働いている香港出身のホー・ホーマンさんは「しかたないとしか言えない状況で、複雑な思いです。すでに香港では警察の取締りが厳しく行われています。今回の決定によってこれから中国が何をするのか、香港にいる人たちも分からず、どうすればいいのか分からないです」と思いを述べました。

ホーさんの家族は香港にいるということで「新しい法制が導入されても香港の人たちはデモや抗議を続けると思うし、続けなければいけません。ネットでの活動を含め、これからもやれることを続けていくと思います」と話していました。

また、父親が香港出身で香港で生まれ育った会社員の伯川星矢さんは「これまで当たり前のように行っていた活動が罪として見なされる可能性もあるとても恐ろしい法律だと思います。この法制は中国政府の決心を見せているようなもので、これからさらに香港への介入が強くなることを心配しています」と話していました。

伯川さんは去年、香港で抗議活動に参加した男子高校生が警察官に拳銃で撃たれて一時重体となったことなどをめぐって香港の市民活動を支援する集会などを日本で企画しました。

今回の「国家安全法制」の導入でも香港で抗議活動が行われているということで「香港の人たちは逆風の中でも自分の意見をぶつける最後の機会だとして、めげずに戦っています。これからもどんな法律ができようが構わず戦っていくと思います。自分も署名活動など、日本にいながら香港を応援するようなことをしていきたいと思います」と話していました。