業や自粛に応じない”
110番通報が急増 愛知

新型コロナウイルスをめぐる苦情やトラブルなどの110番通報が、先月だけで愛知県警察本部に220件以上寄せられていたことがわかりました。休業要請や外出の自粛に応じていないと指摘する通報が目立ち、警察は緊急性を判断したうえで通報してほしいと話しています。

愛知県警察本部によりますと、県内では先月、新型コロナウイルスに関する110番通報が224件寄せられ、3月の40件と比べ5倍以上に増えました。

内訳を見ますと、
▽「休業要請が行われているのに営業している店がある」といった、営業中の店舗に関する通報が最も多く58件に上りました。

次いで
▽「公園に人が集まっている」「バーベキューをしている」といった、外出の自粛に関する通報が54件で、
休業要請や外出の自粛に応じていないと指摘するものだけで110件を超えました。

また
▽「路上でマスクを販売している人がいる」「50枚4800円で売られている」といった、マスクの販売についての通報も33件あったほか、
▽「コロナに関することで口論になった」など、トラブルの通報も多かったということです。

通報内容の多くが取締りの対象になるものではなかったということで、警察は、事件や事故への対応が遅れるおそれがあるため、緊急性を判断したうえで通報してほしいと話しています。

商店街にも苦情が相次ぐ

休業要請や外出の自粛に応じていないと指摘する行為は、ネット上で「自粛警察」「自粛ポリス」などと呼ばれています。

名古屋市最大の商店街「大須商店街」の事務所には、先月中旬ごろからこうした内容の指摘が寄せられるようになりました。

「みんな我慢しているのに、大須だけ多くの人が行き交っている」「コロナを大須から発信するつもりか」など、メールや電話での苦情は50件ほどに上ったということです。

この商店街には休業要請の対象になっていない飲食店や食料品店も多く、関係者の間には戸惑いが広がったと言います。

大須商店街連盟の堀田聖司会長は「やっぱり切ないし、残念な気持ちになります。自粛しているんだけど、っていう気持ちですね。やっぱり悔しいし、そんなつもりはないよという思いです」と話しました。

一方、今月に入ってから少しずつ風向きが変わり、「風評被害に負けないでほしい」「また大須でおいしいものを食べさせてほしい」といった、激励のメールも届き始めているということです。

岐阜県の高校生からは「感謝」という大きな文字に「明けない夜はない」などと記された手紙が届きました。

堀田さんは「涙が出るほどうれしかった。大須商店街を絶対にシャッター街にしたくないので、商店街で1つになってこの危機を乗り越えたい」と話していました。

専門家「社会的な距離は必要 “心の距離”は取らないで」

専門家は「自粛警察」のような行為は今後も起こりうるとして、冷静な行動を呼びかけています。

社会心理学が専門の、新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は「自粛警察」と呼ばれる行為について「自分たちの命や街を守らないといけないという気持ちが高まったうえでの行動だと思う。こんなに一生懸命やっているのに、なぜあの人はルールやマナーを守らないのか、警察が処罰してくれないなら自分が成り代わって処罰したくなる、というのが自粛警察の心理だと考えられる」と指摘しています。

そのうえで「こうした行為は、今回に限らず不安を生じさせる災害現場でも起きてしまう。通常のパトロールならいいが、“警察に成り代わって実力行使”ということになってくると、社会が混乱してしまう」と話しています。

そして今後については「行動が行き過ぎると相互不信や疑心暗鬼が生まれるし、新型コロナウイルスが終息したあとも地域の人間関係が悪くなってしまう。感染対策としての『社会的な距離』はとらなければいけないが、『心の距離』までとってはいけないということを社会が再認識する必要がある」と指摘しています。