染の透析患者 入院先
確保を 医師らが嘆願書

新型コロナウイルスに感染した透析患者を受け入れる医療機関を増やしてほしいと、担当する医師らが兵庫県などに嘆願書を提出しました。透析患者が感染すると重症化しやすいとされ、一刻も早い対応を求めています。

嘆願書を提出したのは、人工透析の治療を行う医師らで作る兵庫県透析医会と腎臓病の患者団体などで、8日、兵庫県庁と神戸市を訪れそれぞれの担当者に手渡しました。

嘆願書には県内205の医療機関から署名が集まったということで、感染した透析患者の入院先の確保や、透析患者の感染を早期に発見する検査体制の充実などを要望しています。

日本透析医会によりますと、重い腎臓病などで人工透析を受けている人は免疫力が落ちているため、新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいとされ、これまでに全国で感染した透析患者70人のうち6人が死亡しています。

一方、透析治療を行っていて感染者を受け入れられる医療機関は数が限られ、不足しているということです。

兵庫県透析医会の石井洋治会長は「仮に透析施設で患者の集団感染が発生すれば、今の医療体制では対処できない。行政には危機感を持って対応してもらいたい」と訴えました。

「症状の悪化が急 すぐPCR検査できる体制を」

新型コロナウイルスに感染した透析患者を診察した医師がNHKの取材に応じ「症状の悪化が非常に急で、透析患者が感染した場合はすぐに治療しないと命に関わると感じた」と証言しました。

この医師は、重い腎臓病のおよそ100人が透析治療を受けている関西地方の診療所に勤めています。

きっかけは通院している患者から「37度台の熱があるが、透析治療を受けられるか」と電話で相談を受けたことでした。

次の日、患者が診療所を訪れ、医師は、テントで仕切って隔離した発熱者用のスペースに案内して透析を行いました。

透析後、熱が上がっていたため翌日にも来てもらい、念のためインフルエンザの治療薬を処方しました。しかし治療薬を服用しても3日間発熱が続いたため、新型コロナウイルスに感染しているのではないかと疑ったといいます。

当時の患者の状況について医師は「しつこい発熱があった以外は息苦しさなどの症状はなく、胸のレントゲン写真でも異常は見つからなかった。ただインフルエンザの治療薬が効かなかったので、新型コロナの感染を疑った」と話します。

医師は、患者を感染症指定医療機関に紹介。詳しい検査の結果、肺炎の疑いがあることが分かり、入院することになりました。そしてその翌日、新型コロナウイルスに感染していることが判明したということです。

しばらく症状は落ち着いていましたが、入院から5日後、突然、自力で呼吸ができなくなるほど症状が悪化しました。

一時は「命は助からない」と言われたということです。

患者は人工呼吸器を使った治療で回復に向かい、入院からおよそ3週間後、退院することができました。

医師は「症状の悪化が非常に急で透析患者が感染した場合はすぐに治療しないと命に関わると感じた。早期に検査を受けられ、すぐにしかるべき医療機関に入院できたのが幸運だった」と振り返りました。

そのうえで「透析施設はベッドの間隔が狭く密になりやすい環境で、集団感染が起こりやすい。施設内で感染が疑わしい患者が出れば、すぐにPCR検査できるよう体制を整えてほしい」と話していました。