米中同時に税上乗せ
対立は一段と激しく

アメリカのトランプ政権は、中国からの輸入品3200品目余りを対象に15%の関税を上乗せする措置を、日本時間の1日午後1時すぎに発動しました。これに対し中国は、同時に、アメリカからの輸入品1700品目余りを対象に、最大で10%の関税を上乗せする対抗措置を発動し、貿易問題をめぐる米中両国の対立は一段と激しくなるのが避けられない情勢です。

アメリカのトランプ政権は、貿易交渉をめぐって中国がアメリカ産の農産品の輸入拡大に応じないなどとして、先月、関税を上乗せする対象を広げると発表し、日本時間の1日午後1時すぎ、液晶テレビや時計などを含む中国からの輸入品3200品目余り、金額にしておよそ1100億ドル分に15%の関税を上乗せする措置を発動しました。

これによって関税上乗せの対象は、中国からの輸入額の7割近くに達しました。
一方、中国はこれに対して同時に、原油や大豆などアメリカからの輸入品1700品目余りを対象に、最大で10%の関税を上乗せする対抗措置を発動しました。

米中両国はことし12月にも、さらなる関税の上乗せ措置を発動する構えで、発動されれば米中ともに互いの輸入額の大半が関税上乗せの対象になる見通しです。

トランプ政権としては中国への圧力を一段と強めることで、貿易問題をめぐり中国側から譲歩を引き出したい考えですが、中国側は、原則に関わる部分では譲歩しない姿勢を崩していません。

トランプ政権は今月上旬、ワシントンで中国側と閣僚級の貿易交渉を行うとしていますが、事態打開のめどは立っておらず、両国の対立が一段と激しくなるのは避けられない情勢です。

追加関税日用品にも拡大 8倍に

今回、9月1日に発動される追加の関税措置の特徴は、対象に生活に身近な日用品が多く含まれていることです。

対象になるのは、液晶テレビ、時計、眼鏡、枕、カーテン、子ども用の机やいす、ピアノやドラムといった楽器類、それに野球のボールやテニスラケットといったスポーツ用品など3240品目です。

アメリカのシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の試算によりますと中国からの輸入品のうち、金額にして1120億ドル分になるということです。

また、クリスマス商戦がピークを過ぎることし12月15日からは、スマートフォン、ノートパソコン、おもちゃなど中国からの輸入の依存度がより高い550品目、金額で1600億ドル分にも15%の関税を上乗せすると発表しています。

これによって、中国からのほぼすべての輸入品に高い関税がかけられることになります。

これとは別に、トランプ大統領はすでに25%の関税を上乗せしている2500億ドル分についても10月1日から関税の上乗せを30%に引き上げるとしています。

中国からの輸入品に対する平均の関税率は、12月までにすべての関税が実施された場合、一連の措置が始まる前の2017年の時点のおよそ3%から24%まで、8倍に引き上げられるということです。

米中貿易摩擦の経緯

アメリカと中国は去年7月以降、互いの輸入品に高い関税を上乗せする応酬を繰り返し、すでに金額ベースでアメリカが中国からの輸入品のほぼ半分、中国がアメリカからの輸入品の7割に関税を上乗せする事態となっています。(※9月1日の上乗せ分は含まず)

両国は去年7月から9月にかけて3回に分けて、アメリカ側は中国からの輸入品2500億ドル分、中国側はアメリカからの輸入品1100億ドル分に関税を上乗せしました。

その後、去年12月にアルゼンチンで行われた首脳会談では関税の引き上げを一時、見送って閣僚級の交渉を行うことで合意し、ことしに入ってからアメリカ側はライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官、中国側は劉鶴副首相がワシントンと北京を相互に訪ねる形で交渉を重ねてきました。しかし、交渉はことし5月にとん挫し、トランプ大統領は中国からの2000億ドル分の輸入品に上乗せしていた関税を10%から25%に引き上げました。

これに対して中国も6月、アメリカからの600億ドル分の輸入品に上乗せする関税を最大25%まで引き上げる対抗措置に踏み切りました。

こうした中、米中の両首脳は6月下旬にG20大阪サミットに合わせて首脳会談を開催し次の関税の引き上げを見送り、こう着状態に陥っていた閣僚級の交渉を再開させることで一致しました。

両国は7月末に中国・上海で直接対面する形での交渉をおよそ2か月半ぶりに再開しましたが、直後にトランプ大統領は新たに中国からの3000億ドル分の輸入品に追加関税をかけることを表明しました。

さらに、アメリカは先月5日、中国が自国の輸出に有利になるよう人民元を意図的に安く誘導しているとして「為替操作国」に認定したと発表し、両国の対立は関税だけでなく為替もからんだ新たな局面に入ったという見方も広がりました。

一方、中国は先月23日、アメリカの追加関税に対し、対抗措置としてアメリカ側の関税引き上げに合わせて同じ日に合わせて750億ドル分の輸入品に最大10%の関税を上乗せするとしました。

これに対してトランプ大統領は即座に次の措置を打ち出し、今月と12月に発動を予定していた合わせて3000億ドル分の関税上乗せの税率を10%から15%に拡大し、すでに発動済みの2500億ドル分についても来月1日に上乗せの関税を25%から30%に引き上げると発表しました。

トランプ大統領は「アメリカは中国を必要としていない」としてアメリカ企業に中国にある生産拠点などを国外に移すよう促し、貿易をめぐる米中の溝は両国経済を分断しかねない状況にまで深まっています。

中国の対抗措置 米農業を狙い撃ちか

中国の今回の対抗措置はトランプ大統領が来年の大統領選挙での再選を目指して重視するアメリカの農業分野を狙い撃ちしたという見方も出ています。

中国のアメリカからの輸入は、去年の実績で1500億ドル余りですが、これまでにこのうち7割余りにあたる1100億ドル分にはすでに関税を上乗せしています。

このため、1日の関税上乗せの対象にはすでに一度、対象となっている品目も含まれ、それらは二重に上乗せされることになります。

こうした品目にはアメリカからの主要な輸入品である大豆や肉類など農産品が多く含まれ、このうち一部の大豆は上乗せされる税率が合わせて30%となります。

トランプ大統領はこれまでの交渉で中国に農産品の輸入拡大を強く迫ってきましたが中国は逆に課税を強化した形で、アメリカ側のさらなる反発を招くことも予想されます。

世界経済の先行きに懸念広がる

トランプ大統領が仕掛けるアメリカと中国の貿易摩擦によって世界経済の先行きには懸念が広がっています。

高い関税措置が直撃する中国は、ことし4月から6月までのGDP=国内総生産の伸び率が去年の同じ時期に比べて6.2%にとどまり、四半期ごとのデータが公表されている1992年以来、最も低くなりました。

また工作機械などの輸出で中国との取り引きが多いドイツも4月から6月までのGDP=国内総生産の伸び率が3四半期ぶりのマイナス成長となったほか、東南アジアでもタイやシンガポールで輸出が低迷するなど、米中貿易摩擦の影響は世界に波及しています。

さらに中国に高い関税をかけて自国の企業に生産回帰を促して雇用を増やそうとするアメリカでも設備投資や輸出がマイナスに転じていて、景気が後退するのではないかという懸念も出ています。

IMF=国際通貨基金は、3か月ごとに発表している世界全体の経済成長率の見通しを7月までに4回連続で下方修正していて、米中の貿易摩擦が予想以上に世界経済にダメージを与えていると警鐘を鳴らしています。

米農家は大きな打撃もトランプ政権支持

アメリカと中国の貿易摩擦が激しさを増す中、アメリカの農家はたび重なる追加関税の影響で出荷の大きな割合を占めていた中国への輸出が減少し大きな打撃を受けていますが、トランプ政権には根強い支持があります。

アメリカ最大の農業団体「米国農業連合会」によりますと、アメリカから中国への農産物の輸出は2017年に年間195億ドル、日本円にしておよそ2兆700億円に上っていました。しかし、米中の関税上乗せの応酬が激しくなった去年、2018年には91億ドル、およそ9700億円と半分以下に減少しています。

それでも多くの農家が短期的に経営への影響があっても不公正な中国の姿勢を正すためには耐えるべきだなどとして、依然としてトランプ政権を支持しています。

アメリカ最大のトウモロコシの生産地、中西部アイオワ州でトウモロコシや大豆、豚などを生産する農家のブラッド・モークリーさん(59)も引き続きトランプ政権を支持している1人です。

485ヘクタール、東京ドームおよそ100個分の広大な土地で祖父の代から農業を続けているモークリーさんは貿易摩擦による影響について「短期的な影響はとても大きい。貿易摩擦の影響で農産物の価格が下落し、収入も減っている」と述べ、影響は深刻だと言います。

一方で「よい貿易協定がまとまってほしい。これは農家にとってとても重要なことだ。私たちは今の政権が中国との関係を改善しようとしていることを支持している」と述べ、中国の不公正な貿易を正すというトランプ政権が目指す方向は間違っていないと言います。

アメリカの農業専門誌「ファーム・ジャーナル」が8月、全米の農家1153人を対象に行った世論調査では、トランプ大統領を支持するが71%、支持しないが26%で支持が大きく上回っています。こうした農家による根強い支持もトランプ大統領が中国との貿易交渉で強気な姿勢を貫く背景にあると見られます。

反発の企業も

ニューヨークにある創業50年のベビー用品メーカーはトランプ政権による新たな追加関税に反発を強めています。

この会社がアメリカで販売している幼児用のいすと机には9月1日から15%の関税が上乗せされることになりました。

この会社は生産コストを削減するため中国の委託先の工場で完成品の生産を行う体制をとっているため、ほとんどの商品を中国から輸入しています。

会社では部材の調達の見直しなどコストを削減する工夫をしていますが、上乗せされた関税分のコストを吸収するのは限界があるとして今月から商品を1割程度値上げすることを決めました。

また、主力商品のベビーカーについても12月15日から15%の関税が上乗せされる予定で、同じように1割程度、値上げせざるをえないとしています。トランプ大統領は先月、ツイッターに「アメリカの企業は中国から撤退してアメリカで生産する選択を探すべきだ」と投稿し、関税を負担したくなければ生産をアメリカ国内に戻して雇用の創出に貢献するよう呼びかけています。

ベビー用品メーカーのジョセフ・シャミー社長は「生産を移転する場合、中国に設けた製品の安全テストの施設も移転しなければならず、大きな投資が必要になる。商品を値上げする以外に選択肢がない。貿易戦争は中国だけでなくアメリカにとってもよいことだと思えない」と訴えています。

アメリカの調査会社「トレード・パートナーシップ」の推計では、中国からのほぼすべての輸入品に高い関税(25%)が上乗せされた場合、アメリカの平均的な家庭では日本円にして年間25万円の負担増になるということです。

アメリカの消費者からは「私には子どもがいるので値上げは望みません。トランプ大統領は非常に悪い決断をしている」とか「給料が上がらないのに出費が増えるなんて、関税には絶対に反対です」などという声が聞かれました。

アップルの業績への影響も懸念

トランプ政権による中国への追加の関税措置によってアメリカを代表する大手IT企業、アップルの業績にも影響が出ないか懸念が広がっています。

トランプ大統領はアップルに対して中国で生産している製品に関税をかけられたくなければアメリカに工場を移すよう強く求めてきました。

これに対しアップルは、関税の引き上げはアメリカにとっても打撃だとして自社の製品を対象から外すよう求める書簡を提出するなど、経営への打撃を避けようと働きかけを続けてきました。

しかし、今回の措置では中国で生産している腕時計型の情報端末「アップルウォッチ」などが対象になりました。

また、主力商品であるiPhoneも中国で組み立てているすべての機種がことし12月から追加関税の対象となります。

こうした状況を受け、アメリカ国内のアップルの愛好家の間でも追加関税の影響でアップルの製品が値上がりするのではないかと懸念する声が上がっています。

このうち、西部カリフォルニア州でアップル製品の販売を手がけるビリー・チャンさんはアップルの熱烈な愛好家やユーザーとともに毎月、会合を開いて製品をアピールしたり情報交換をしたりしています。

先月の会合では追加の関税措置が話題になり、参加者からは「新商品が関税の影響で値上がりすれば買うのをやめるかもしれない」とか、「政治がビジネスに口を挟むべきではない」といった意見が出ていました。

チャンさんは「貿易戦争を続けてもどちらの側にもいいことはない。世界第1位と第2位の経済大国どうしの争いならばなおさらだ」と話していました。

一方、アメリカのメディアはアップルが関税の引き上げ分を価格に反映させず、すべて自社で負担した場合には最終的な利益が4%減少するという試算も伝えていて、業績の先行きも注目されています。

中国向け輸出の日本企業にも影響

米中の対立が激しくなり関税の上乗せの応酬が続く中、中国市場向けに部品や工作機械を販売する日本企業の間には売上が落ち込むなどの影響が広がっています。

中国南部、広東省の仏山で、ことし7月に行われた日系企業と中国企業との商談会では影響の拡大を懸念する声が相次ぎました。

このうち福井県に本社がある金属加工の工作機械メーカーは上海に販売拠点を設け、産業用の金型などの中国メーカー向けに日本から製品を輸出しています。

しかし、中国経済の減速に加えて米中の貿易摩擦の影響で顧客の輸出企業が工作機械の購入など設備投資に慎重になっているため受注が落ち込んでいるということです。

ことし上半期の中国市場の売り上げは去年の同じ時期より6割減っていて、上海の拠点では人員を増やす計画を凍結したということです。

松浦機械製作所の上海の事務所の隅田悦次首席代表は「米中の貿易摩擦はさらに長期化すると考えていて当面は我慢の時と考えている。取引先からは設備投資の計画を見直さざるをえないという声が相次いでいて対策を考えたい」と話していました。

中国は関税以外の対抗措置も

アメリカと中国が互いの輸入品に追加の関税を掛け合う応酬を続けた場合、相手への輸出額が多い中国のほうが影響が大きくなるとみられていて、中国側は関税の引き上げ以外にも対抗措置を検討しているとみられています。

中国の政府系シンクタンク「中国社会科学院」が去年まとめた試算では、米中両国が互いのすべての輸入品に25%の関税をかけた場合、1年目にはアメリカの経済成長率が0.13ポイント押し下げられるのに対して、中国の成長率は0.59ポイント押し下げられるとしています。

さらに、7年後には累計でアメリカの成長率が0.37ポイントの押し下げにとどまるのに対して、中国への影響は1.33ポイントの押し下げと、長期化にともなって影響の差はより鮮明になるとしています。

中国政府は関税の引き上げの応酬では中国側の影響がより大きいことから関税以外の手段で対抗措置を検討しているとみられ、ハイテク分野で欠かせない希少な資源、レアアースの輸出規制に踏み切るのではないかという見方も出ています。

習近平国家主席はことし5月、レアアースの関連企業を視察し「重要な戦略資源だ」と述べ、直後には中国政府の担当機関は「われわれが輸出したレアアースで中国の発展を妨げようとするなら中国の人民は皆喜ばないだろう」というコメントを出し、アメリカへの輸出規制の可能性を示唆しています。

中国は世界一のレアアース産出国でアメリカにも大量に輸出していて、輸出規制が実施されればアメリカのハイテク産業への打撃となります。

さらに、中国政府は中国企業の利益を損ねる外国の企業や組織をリストにまとめ制裁を科す措置を準備していて、アメリカへの対抗措置の1つではないかという指摘が出ています。

アメリカは中国の通信機器大手、ファーウェイやその関連企業を政府の許可なく取り引きすることを禁じる企業のリストに入れて締めつけを強めていますが、中国が検討している新たな措置もこれと似た制度になる可能性もあります。

中国企業に新市場目指す動きも

アメリカとの貿易摩擦が長期化する中、中国の地方都市にも影響が現れています。中国東部の浙江省・義烏にはアクセサリーや文具、ドライヤーなどの小型家電まで180万種類の商品を扱う卸売り市場があり、7万軒以上の業者が軒を連ねて世界各国からバイヤーが集まります。

ここで10年以上、LEDを使った看板を扱っている蒋楊軍さんはアメリカとの貿易摩擦で商売に大きな影響が出ていると言います。

蒋さんの店の売り上げのおよそ4割はアメリカ向けでしたが、去年、トランプ政権がLEDを使った製品に対して25%の関税を上乗せして以降、アメリカからの受注は半分に落ち込みました。

蒋さんは受注を維持するために取り引き先が支払う上乗せされた関税の半分を負担する対策をとっていますが業績は回復せず、「利益は減るばかりだ。関税措置はやめてほしいが国どうしのことでわれわれはどうしようもない」と諦め気味に話していました。こうした中、新興国などの新たな市場を開拓しようという動きもあります。

この卸売り市場では世界各地のクリスマス商戦にむけてこの時期、数多くのバイヤーが訪れますがアメリカからの注文は減少しています。代わって増えているのがアジアや中東、それにラテンアメリカなど新興国向けの輸出です。

ここで14年間、経営を続けている何旭群さんが今、力を入れているのがインドです。

経済発展に伴ってインドでもクリスマス商戦は拡大しているといいます。英語ができない何さんですが、スマートフォンの翻訳ソフトを使ってSNSを通じてインドの顧客を増やしていて、「インドからの注文はだんだん増えてきている。技術が発達したから英語も中国語も翻訳できるので全く問題ない」と話していました。

地元政府も新たな市場開拓を後押ししていて「一帯一路」構想の一環としてアジアやヨーロッパの国々とを結ぶ貨物列車やトラックのターミナルの整備を進めるほか、海外の展示会に参加する企業に費用を補助するなど支援策を打ち出しています。

米中の貿易摩擦 投資にも影響

米中の貿易摩擦は、両国の貿易取り引きだけでなく投資の分野にも影響を広げています。

アメリカの調査会社によりますと、去年の中国からアメリカへの投資額は48億ドル、日本円で5000億円余りと前の年と比べて80%余り減少しました。

中国が海外投資に一定の規制をかけたことに加え、トランプ政権がハイテク関連産業を中心に中国からの投資を警戒し規制を強めていることが影響しているとみられます。

トランプ政権は去年10月には技術の流出を防ぐという名目で航空や半導体など27の分野で監視機能を強化すると発表し、中国のアメリカへの投資はことしはさらに落ち込む可能性もあると指摘されています。

北京に住む投資家、劉揚声さん(69)もアメリカの対中政策の変化を見て投資戦略を見直した一人です。劉さんは1970年代からおよそ20年にわたってアメリカで金融関連などの仕事をしたあと1990年に北京に移り、投資家として活動してきました。

アメリカのハイテク分野や環境関連の企業に1000万ドル、日本円で10億円以上を投じて経営に参画してきました。劉さんはそのねらいについて「アメリカは技術が非常に先進的で、中国は市場が大きいので進んだ技術を中国で製品化したいと思った」と話しています。

しかし、トランプ政権が関税の引き上げや投資の規制、それにハイテク分野での中国企業への締めつけを強化する中、劉さんは投資家の仲間とも意見を交わし、アメリカへの投資を当面、見合わせることを決断しました。

劉さんは中国国内での投資に資金を集中していく考えで、「アメリカが中国からの投資を望んでいない以上、いくら投資しても成果は得られない。アメリカがこの数年、みずから失った信頼は回復し難いものだし、投資やビジネスという観点からしても全く先が見通せなくなった」と話していました。