「出産育児一時金 来年度から50万円に増額」など了承

出産育児一時金の支給額を来年度から50万円に引き上げることなど、一連の医療保険制度改革が厚生労働省の社会保障審議会で了承されました。

このうち、出産にかかる費用を助成する出産育児一時金は、現在、原則42万円が支給されていますが、来年度からは50万円に引き上げられます。

8万円の引き上げは、制度が創設された平成6年以来最大となります。

また75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度について、所得などに応じて支払う保険料の上限額が、2024年度と25年度に段階的に引き上げられます。

具体的には今の上限66万円から、
▽初年度の2024年度には73万円、
▽2025年度には80万円に引き上げられます。

対象は
▽2024年度が年収211万円を超える人、
▽2025年度は年収153万円を超える人で、
2年間で全体のおよそ4割の人たちの保険料が増えることになります。

厚生労働省は現役世代の負担を抑えるとともに、増額する出産育児一時金の財源に充てるためだと説明しています。

一方、65歳から74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みも2024年度から変更されます。

大企業の従業員などが加入する健康保険組合の負担を増やす一方、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担を減らすとしています。

厚生労働省は、来年の通常国会に関連する必要な法律の改正案を提出する方針です。

出産育児一時金とは

出産育児一時金は、出産前後の家計の負担を軽減するため、平成6年に創設されました。

当時の支給額は30万円でその後、引き上げられ、いまの原則42万円になったのは平成21年10月でした。

【なぜ引き上げ?】
50万円に引き上げられた背景には、年々増え続ける出産費用があります。

厚生労働省によりますと出産にかかった費用は、昨年度・令和3年度は、民間のクリニックなども含めた全国平均で、一時金を上回る47万3000円余り。

この10年間で5万円以上増えました。

【財源は?】
出産育児一時金の財源のほとんどは平成20年4月から、原則74歳以下の現役世代が加入する医療保険の保険料で賄われています。

厚生労働省によりますと、令和元年度の支給額は3800億円余りだったということです。

今回の引き上げに伴って、再来年度、2024年4月からは、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも財源をねん出し、一時金全体の3.5%を賄うことになります。

“高齢者医療をすべての世代が公平に”

【現役世代の負担軽減を】
今回の改革では、高齢者医療をすべての世代が公平に支え合う仕組みづくりを目指しました。

75歳以上のおよそ1890万人が加入する後期高齢者医療制度の財源は、患者の窓口負担を除いて、
▽およそ1割は、加入者が支払う保険料で
▽およそ5割は公費でまかなわれています。
▽残りのおよそ4割には、現役世代が支払う保険料からの支援金があてられています。

【保険料上限段階的に引き上げ】
高齢者の医療費増加に伴い、現役世代の負担が重くなっていたことから、比較的収入が高い高齢者に応分の負担をしてもらおうというのが今回の引き上げです。

保険料が増えるのは、2024年度からは年収211万円を超える人、2025年度からは年収153万円を超える人になります。

【75歳以上の一部は負担増】
今回の改革で、75歳以上の人の保険料が年間でどの程度増えるのか、厚生労働省が年収と年度ごとに試算しました。

制度を変更しなかった場合と比べると、初年度、2024年度は、年収400万円の人は1万4000円、1100万円の人は6万円負担が増えるということです。