“自衛隊でハラスメント” 100人以上が回答 元隊員 再発防止を

勤務していた自衛隊の部隊でセクハラの被害を受けたとする元隊員の女性が、インターネットで呼びかけたところ、100人以上から自衛隊でハラスメントの被害を受けたことがあるという回答が寄せられたとして、31日、防衛省に再発防止などを要望しました。

要望したのは、陸上自衛隊の部隊で上司から体を触られるなどのセクハラの被害を受けたとして、ことし6月に退職した五ノ井里奈さん(22)です。

五ノ井さんによりますと7月、インターネットで、自衛隊でハラスメントの被害を受けたことはないかと呼びかけたところ、現役の隊員など146人から回答があったということです。

ハラスメントの種類で、
▽最も多かったのはパワハラの101件で、
▽次いでセクハラが87件、
▽精神的な嫌がらせなどのモラハラが38件、
▽妊娠を理由に不利益な扱いをされるマタハラが17件だったということです。

具体的には「宴会の場で先輩から野球拳に参加しろと言われて服を脱がされ、拒否すると平手でほおをたたかれた」などの被害が寄せられたということです。

五ノ井さんは、これらの回答を、五ノ井さん自身の被害の調査などを求めるおよそ10万6000人分の署名とともに、防衛省の木村政務官に提出しました。

五ノ井さんは「寄せられた声をむだにせず第三者委員会を設置してハラスメントをなくす対策と再発防止を講じてほしい」と求めました。

木村政務官は「セクハラは防衛省自衛隊において決してあってはならない」と述べたうえで、五ノ井さんの被害について調査を行ったうえで、事実関係にもとづいて厳正に対処する考えを示しました。

回答内容の詳細は

今回、回答があった146人の性別は、
▽女性が82人
▽男性が58人
▽無回答が6人で、
所属別では陸上自衛隊が最も多かったということです。

被害について自衛隊内や外部に相談したという人は115人で、このうち
▽要望を聞いたり解決に向けて相談にのってくれたとする例は29件、
▽相手に事実確認を行ったとする例は20件、
▽ハラスメントと認められたとする例は10件あったということです。

一方で、
▽ハラスメントの有無について判断されなかったとする例は51件、
▽ハラスメントと認められなかったする例は31件、
▽相談したことを理由に降格や配置転換など不利益な取り扱いをされたとする例は12件あったということです。

被害の具体例です。
▽(20代・女性)
「年上の男性隊員が隣の椅子に座ってきて、太ももを触ってきた。更衣室は物置。トイレは男性と共有」

▽(30代・女性)
「宴会の場で先輩から野球拳に参加しろと言われて服を脱がされ、拒否すると平手でほおをたたかれた」

▽(30代・女性)
「上司に妊娠を報告した時、喫煙しながら長時間指導され、『旦那を呼んで土下座して謝れ』と言われた」

▽(40代・女性)
「男性隊員の前でわざと腕立て伏せをさせ、シャツの胸元をはだけさせるようにしむける。女性隊員のレントゲン写真をみんなでまわして眺める」

▽(40代・男性)
「入隊したばかりのときに上司から性器にマジックで顔を書かれて写真を撮られた」

▽(50代・男性)
「上司から無視されたり勤務から外されたり陰口を言われた」このほかにも、性的な暴行を受けたと訴える人も少なくとも4人いたということです。

元女性隊員の被害訴え “被害訴えた声を大切にする環境を”

五ノ井里奈さん(22)はおととし、陸上自衛隊に入隊し、福島県内の駐屯地に配属されました。

そのおよそ半年後から勤務中に上司が体を触ってくるなどのセクハラが始まったといいます。

内容は徐々にエスカレートし、去年8月には宴会の場で上司から格闘技の技をかけられ倒されたうえ、何度も下半身を押し当てられたといいます。

その場ではほかの2人の隊員からも同じことを繰り返されたということです。

五ノ井さんは自衛隊内の捜査機関の警務隊に被害届を提出し、男性隊員3人が強制わいせつの疑いで書類送検されましたが、ことし5月に不起訴となったため6月に検察審査会に審査を申し立てました。

五ノ井さんは自衛隊の体育学校に進みたいという夢がありましたが断念し、6月に退職しました。

五ノ井里奈さんは「自衛隊は圧倒的に男性が多く、セクハラについて訴えると、不利益を被って業務に支障が出て、声を上げられないという雰囲気がまん延している。自衛隊は被害を訴えた人の声を大切にする環境を整えてほしい」と話しています。