生活保護費引き下げを違法と判断 取り消す判決 熊本地裁

生活保護費が平成25年から段階的に引き下げられたことについて、熊本県の受給者が最低限度の生活を保障した憲法に違反するなどと訴えた裁判で、熊本地方裁判所は引き下げを違法と判断し取り消す判決を言い渡しました。引き下げを取り消した判決は、去年2月の大阪地裁に続いて2件目です。

生活保護費のうち、食費や光熱費など生活費部分の基準額について、国は、物価の下落などを反映させる形で平成25年から27年にかけて最大で10%引き下げました。

これについて熊本県内の受給者36人は「最低限度の生活を保障した憲法に違反する」などとして、自治体が行った引き下げの取り消しを求める訴えを起こしました。

裁判では国が基準額を算定する際の手法や手続きに問題があったかどうかが争点となっていました。

25日の判決で、熊本地方裁判所の中辻雄一朗裁判長は「引き下げを決定した判断の過程や手続きには、統計などの客観的数値との関連性や専門家の知見などとの整合性を欠く誤りがあり、厚生労働大臣の裁量権を逸脱している」などと述べて引き下げを違法と判断し、取り消しました。

原告の弁護団によりますと、全国29の裁判所で起こされた同様の集団訴訟の判決は今回が10件目で、原告の訴えを認め、引き下げを取り消したのは去年2月の大阪地裁に続き2件目です。

原告「うれしいのひと言」

原告の1人で熊本市中央区に住む80歳の男性は「うれしいのひと言です。苦しい生活に取り合ってくれない理不尽さを訴えてきました。おそらく控訴してくると思いますが、たたかう心の準備はできています」と話していました。

熊本市「国と協議して控訴するか検討」

36人の原告のうち、最も多い27人が生活保護を受給し、裁判で被告の立場の熊本市は「判決文を読んで精査したうえで、国と協議して控訴するか検討したい」とコメントしています。