ロシア提出の決議案 賛成はロシア・中国だけ 13か国が棄権

国連の安全保障理事会では、ロシアが提出したウクライナへの人道支援についての独自の決議案の採決が行われ、理事国15か国のうち13か国が棄権して否決されました。
決議案には、ロシアによる軍事侵攻に一切言及がなく、棄権した欧米各国は人道危機を引き起こしているのはロシア自身だと強く非難しました。

国連安保理では23日、ロシアが提出した独自の決議案について、採決が行われました。

決議案は、フランスなどが国連総会に提出した決議案に対抗するためロシアが提出したもので、交渉に基づく即時停戦や市民の保護などを求めていますが、ロシア自身の軍事侵攻には一切言及していません。

採決の結果、ロシアと中国が賛成したものの、アメリカやイギリスなど13か国が棄権し、決議案は15の理事国のうち採択に必要な9か国の賛成を得られず否決されました。

棄権した理由について、イギリスのウッドワード国連大使は「ロシアが人道危機を引き起こしているのは間違いない。人道的な大惨事の唯一の原因がロシアであることを認めていない決議には賛成できない」と述べたほか、フランスのドリビエール国連大使も「決議案はウクライナへの侵攻を正当化するための策略だ。ウクライナの人道状況を懸念していると主張しているが、本当に懸念しているのなら攻撃をやめ軍を撤退させればよい」と非難しました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は「人道問題を政治化しないよう求める」と主張し反発しました。

中国の国連大使「政治的な違い乗り越え人道問題に焦点」主張

中国の張軍国連大使は、決議案に賛成した理由について「ウクライナの人道状況を重視しているからだ」と主張したうえで「中国はすべての当事者に対し、政治的な違いを乗り越え人道問題に焦点をあてるよう求めてきた。安保理で合意できなかったのは遺憾だ」と述べました。

米 「ロシア軍 戦争犯罪行った」と声明 責任追及する考え強調

アメリカのブリンケン国務長官は23日、声明を発表し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍について「戦争犯罪を行った」として、アメリカ政府として公式に戦争犯罪と見なすことを明らかにしました。

声明では「無差別攻撃や市民を意図的に標的にした攻撃について、信頼に足る多くの報告がある」としたうえで、公開情報や情報機関の分析などを検討した結果だとしています。

ロシア軍による侵攻をめぐってはオランダ・ハーグにある国際刑事裁判所が、ウクライナで行われた疑いのある戦争犯罪や人道に対する罪について、各国の要請を受け捜査を進めています。

こうした中、アメリカはこれまでバイデン大統領がプーチン大統領について「戦争犯罪人だ」と厳しく非難したほか、ブリンケン長官も「個人的には同意する」と述べ、調査していることを明らかにしていました。

声明の中で、ブリンケン長官は「アメリカ政府は戦争犯罪の追跡調査を続け、同盟国や友好国、国際機関と適切に情報を共有する。あらゆる手段を用いて責任を追及していく」として、国際社会と連携しロシア軍の責任を追及していく考えを強調しました。

ロシア外務省 米政府外交官の国外追放処分を発表

ロシア外務省は23日、モスクワのアメリカ大使館に対し、アメリカ政府の外交官を国外追放にする処分を言い渡したと発表しました。

追放する外交官の人数は明らかにしていませんが、処分の理由として、アメリカ政府が先月28日、ニューヨークにあるロシアの国連代表部に勤務する外交官が「諜報活動を行った」として12人の国外追放の処分を発表したことなどへの対抗措置だとしています。

そのうえで、ロシア外務省は「ロシアに対する敵対的な行動は、断固とした適切な対応で臨むと厳しく警告した」としています。

一方、アメリカ国務省のプライス報道官は23日の記者会見で「特に、緊張が高まっている時や紛争の時、意思疎通のルートを開いておくことは不可欠だ。もし、さらに人員が制限されることになれば、現地のアメリカ大使館の業務を継続させるのが難しくなる」と述べ、懸念を示しました。

官房長官「国際刑事裁判所の捜査など展開注視」

松野官房長官は、午前の記者会見で「わが国はウクライナで多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止めている。今月2日の国連総会決議はすべての国際人道法の違反を非難し、今月4日のG7=主要7か国の外相会合共同声明は、戦争犯罪の責任を問うとしている」と述べました。

そのうえで「わが国は、ウクライナでロシアにより戦争犯罪が行われたと考えることを理由に、ICC=国際刑事裁判所に付託した。ICC検察官による捜査や事態の展開を注視していく」と述べました。

国連総会 ウクライナの人道状況改善求める決議案を採択

ウクライナ情勢をめぐり、国連総会では市民の保護など現地の人道状況の改善を求める決議案が140か国の賛成多数で採択されました。
一方で棄権に回った国も38か国にのぼり、ロシアとの関係に配慮する国が依然として多いことも浮き彫りになりました。

ニューヨークの国連本部の総会議場では24日、前日に続いてウクライナの人道状況の改善を求めるフランスなどが提出した決議案をめぐる緊急特別会合が開かれました。

決議案は、ロシアがもたらした悲惨な人道状況に遺憾の意を示したうえで、敵対行為の即時停止のほか、市民や民間施設の保護、それに人道支援の安全確保などを求めています。

会合では2日間で合わせておよそ70か国が演説を行ったあと決議案の採決が行われ、
▽欧米や日本など合わせて140か国が賛成し、
▽ロシアなど5か国が反対、
▽中国やインドなど38か国は棄権して、
投票した国の3分の2以上の賛成で採択されました。

国連総会では今月2日にも、ロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議が141か国の賛成で採択されていて、今回もほぼ同じ数の国が賛成する一方で、反対は前回と同じ5か国、棄権は前回より3か国増えました。

また、この日の会合では、市民や民間施設の保護などを求める一方でロシアを名指しで非難しない内容の南アフリカが提出した決議案について採決を行うかどうかの投票が行われ、欧米など67か国が反対して廃案になりましたが、ロシアを始め中国やブラジルなど50か国が賛成し、ロシアとの関係に配慮する国が依然として多いことも浮き彫りになりました。