齢者住宅で集団感染
介護の危機に 北海道 千歳

北海道千歳市で、高齢者住宅の入居者や職員、合わせて15人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。職員の一部が出勤できず、介護が必要な高齢者の排せつや食事の介助などが十分にできなくなり、運営会社は「介護崩壊」を防ぐため、今も住宅内にいる陽性患者8人を早く入院させたいとしています。

千歳市にあるサービス付き高齢者向け住宅の「グラン・セラ柏陽」を運営する会社によりますと、28日までに入居者や職員合わせて15人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。

およそ50人の入居者のうち34人は要介護認定を受け、これまではパート従業員も含む20人余りで介護を行っていました。しかし、職員に感染者が出たほか、発熱などの症状を訴えている人や、家族の反対などで出勤できなかったり退職したりするパート従業員もいて、現在は常勤の職員6人が泊まり込みをするなどして認知症の人などの介護を行っているということです。

感染した人のうち、28日に確認された8人は午後4時半の時点で入院先が決まっていません。ほかの高齢者は職員の大幅な減少によって排せつや食事の介助などを十分に受けられず、入浴のケアなども取りやめられているということです。

住宅を運営する会社の社長は「『介護崩壊』を防ぐためにも、陽性となった患者を早く入院させるようお願いしたい」と話しています。

これに対して千歳市は「高齢者住宅の職員の負担を減らすために、道と連携して、速やかに入院できるよう調整していく」としています。

また、北海道は千歳市と協議し状況の把握を進めるとともに、ほかの施設から応援の看護師や介護士などを派遣できないか、検討しているということです。

専門家「全国どこでも起こりうる課題」

高齢者の介護や施設などに詳しい、東洋大学の早坂聡久准教授は「海外で高齢者が密集する福祉施設で感染が広がる事例が出ていたので、日本でも広まってきたと大変危機感をもっている。今は残っている職員の方々の献身によってなんとかケアを続けている状態だと思うが、実質的には介護崩壊の状況になっていると思う」と述べました。

そのうえで、「感染のリスクがあるため、感染が広まった施設に他のところから応援の職員を派遣することは難しく、現状では運営会社が責任をもって対応せざるをえない。これは今回の北海道の事例に限らず、特別養護老人ホームなどの高齢者施設を含めて全国どこでも起こりうる非常に大きな課題だ。施設内で感染が広まってしまったあとの対策をどうするのか、国は早急に考えなければならない」と指摘しました。