朝鮮の貨物船 海保検査
後に瀬取りで鉄鉱石輸出か

先月下旬、北朝鮮の貨物船が国連の制裁決議で取り引きが禁止されている鉄鉱石を積んで日本の領海に入り、海上保安本部が立ち入り検査を行っていたことが分かりました。船は北朝鮮国内の輸送だと申告したため、海上保安本部は「禁輸品には該当しない」と判断しましたが、船はその後、中国の沖合に向かっていて、専門家は、制裁を逃れて鉄鉱石が輸出された可能性があると指摘しています。

第7管区海上保安本部によりますと、先月22日、北朝鮮の貨物船がエンジン故障のため、長崎県壱岐市の沖合の日本の領海に入りました。

海上保安本部が立ち入り検査を行ったところ、国連安全保障理事会の制裁決議で取り引きが禁じられている鉄鉱石が積まれていました。

ただ、北朝鮮の北東部を出発し西部に向かうところだと申告したため、海上保安本部は「法令違反は認められず、北朝鮮国内間の輸送にあたり、禁輸品には該当しない」と判断し、船は3日後に出航しました。

しかし、船の位置情報を公開しているウェブサイトによりますと、船は北朝鮮西部には向かわず、中国東部 浙江省、舟山市の沖合に停泊していたことが分かりました。

また、この船は以前、香港の企業が所有していて、去年2月、北朝鮮の密輸に関与したとしてアメリカ政府が制裁を科していたことも明らかになりました。

国連安保理の専門家パネルの元委員 古川勝久さんは洋上で物資の積み替えを行う「瀬取り」を行い、鉄鉱石が輸出された可能性があると指摘しています。

そのうえで、「領海内でも制約があり、海上保安庁ができるのは貨物検査だけで、それでは禁輸品かどうか判断できない。制裁を履行するため日本は時間がかかっても法整備や体制整備を進めなければならない」と話しています。

横行する瀬取り 各国は監視強化

北朝鮮の主な輸出品で、外貨獲得の手段となっている石炭や鉄、それに鉄鉱石などは国連の安全保障理事会のおととしの制裁決議で全面的に取り引きが禁止されたほか、各国が原油や石油精製品を北朝鮮に輸出することも制限されています。

しかし、洋上で船から船に積み荷を移す「瀬取り」の手口で「制裁逃れ」が横行しているとみられています。

このため各国が監視を強めていて、日本やアメリカだけではなくオーストラリアやカナダなども協力して警戒監視活動を行っています。

先月には中国・上海の東、およそ280キロの公海上で、北朝鮮船籍のタンカーが船籍不明の船舶に横付けしているのを海上自衛隊の護衛艦が確認し、瀬取りの疑いがあるとして日本政府が国連安保理に通報しました。

また、アメリカ財務省はことし8月「瀬取り」の手口で北朝鮮に石油を密輸したとして、台湾と香港の海運会社などに対し資産を凍結するなどアメリカ独自の制裁を科しています。