政倫審 岸田首相「説明責任 見極めながら処分判断」

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて衆議院政治倫理審査会が開かれ、岸田総理大臣が現職の総理大臣として初めて出席しました。岸田総理大臣は国民の政治不信を引き起こしたと陳謝した上で、関係議員の説明責任の果たし方などを見極めながら処分などを判断していく考えを示しました。

岸田首相 現職首相で初出席 武田元総務相も

衆議院政治倫理審査会は報道機関に公開する形で開かれ、29日は岸田総理大臣と二階派の武田・元総務大臣の2人が出席しました。審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてです。

冒頭の弁明で岸田総理大臣は「国民の多くの疑念を招き、政治不信を引き起こしていることに対し自民党総裁として心からおわびを申し上げる」と陳謝しました。

その上で「不正の原因が順法意識の欠如にあったとしたならば、コンプライアンスの徹底に向けた改革を進めなければならない」と述べました。

一方で、岸田総理大臣は「これまでのところ、派閥が支出した資金を議員個人が受領した例は聴き取り調査を含めて把握されていない。また、還付金などを政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されていない」と説明しました。

このあとの質疑で、岸田総理大臣は「連座制」について「悪質な場合には会計責任者のみならず政治家本人も責任を負う法改正を行うことが重要と考え、党でも具体的な制度設計の議論を進めている。各党とも議論し合意した上で今の国会のうちに法改正が実現できるよう作業を進めていく」と述べました。

さらに立憲民主党の野田・元総理大臣は「『裏金』に関わった議員は全員重たい政治責任がある。刑事事件にもならない、説明責任を果たさない、税金も払わない、処分もない、何にもないのだったら同じことがまた起こる。そろそろリーダーシップをふるって処分を考えるべき時期ではないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「党としてさまざまな実態把握に努めているが、関係者の説明責任の果たし方や事実の状況もしっかり踏まえながら、党として処分をはじめとする政治責任についても判断を行っていきたい」と述べました。

また岸田総理大臣は、安倍派でキックバックや収支報告書への不記載などが、いつから、誰の指示で始まったのか問われたのに対し「党の聴き取り調査の中で関係者に質問を繰り返したが、残念ながら、はっきりした経緯や日時などは確認できていない」と説明しました。

一方、岸田総理大臣は自身の政治資金パーティーについて「総理大臣としてパーティーを開催することは、今は考えていない。結果的に在任中はやることはないと考えている」と述べました。

続いて行われた審査で、二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣は「多くの国民の政治不信を招くに至ったことを心からおわび申し上げたい」と陳謝しました。

その上で、二階派の収支報告書の不記載について「私も、派閥会長の二階元幹事長も会計責任者から収支報告書の内容の説明を受けることなく、虚偽記載などが行われていたことは全く知らなかった。二階氏も私も全く関与していない」と釈明しました。

そして、パーティー券の販売ノルマを誰が決めていたのか問われ「25年前から実務を担当している事務局長に委ねていて、私や二階会長がルールやノルマなどを決めることは全くしていない。裏金づくりなどは毛頭考えていない」と述べました。

林官房長官「説明を尽くすべく努めたものと受け止め」

林官房長官は29日午後の記者会見で「岸田総理大臣の発言内容や質疑における議論について、政府の立場で評価することは控えるが、政治資金をめぐる国民の厳しい目や疑念を踏まえ、自民党総裁として説明を尽くすべく努めたものと受け止めている」と述べました。

自民 田中氏「政治不信払拭の一助となれば」

自民党の田中・政治倫理審査会長は審査会のあと記者団に対し「開催まで少し道のりはあったが、会長としては公開して開催できてよかった。国民の皆さんに、ある程度やりとりが伝わったと思うし、政治不信払拭の一助となればいい」と述べました。

自民 丹羽氏「説明責任 ある程度果たせた」

衆議院政治倫理審査会の与党側の筆頭幹事を務める自民党の丹羽秀樹・衆議院議員は記者団に対し「フルオープンで開催することができ、国民に政治の姿勢を見せて説明責任をある程度果たせたと考えている。あすは安倍派の議員が出席するので、しっかりと説明責任を果たしていただきたい」と述べました。その一方で「すべての疑惑が晴れたかは多くの国民の意見を聞かなければわからない。あすも含めてまだ6人しか審査の申し出がないので、人数という意味でも『ある程度』ということだ」と述べました。

立民 泉代表「ほとんど新しいことばもなく時間の無駄」

立憲民主党の泉代表は記者団に対し「岸田総理大臣が鳴り物入りで登場したが、ほとんど新しいことばもなく、時間の無駄だった。党の幹部と言える議員が仕切ってきた派閥でも、政治家はお金のことには全くタッチしていないという、国民にはおよそ理解できないシステムが存在している、自民党のうすら怖さを感じた」と述べました。その上で「あす出席する4人には国民の疑問に答えてもらいたい。安倍派の仕組みを継続させてきたのは誰なのかや、使途について明確に語ってもらわなければならない。話さなければ、ほかの関係議員の出席や参考人招致など、次の段階を求めることも十分ありうる」と述べました。

立民 野田元首相「ポーズだけの率先垂範」

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立憲民主党の野田・元総理大臣は、衆議院政治倫理審査会での質疑のあと、記者団に対し「ポーズだけの率先垂範だった。窮地に陥り、局面打開でやろうとした審査会なので、予想どおり、自民党の報告書をなぞるだけでそれ以上のことはなかった。これで説明責任を果たしたことには全くならない」と述べました。
その上で、岸田総理大臣が在任中、みずからの政治資金パーティーを行わない考えを示したことについて「総理大臣になったらパーティーはやめないといけない。『勉強会』と称していたが、勉強が好きではなく、お金が好きだということだ。しつこく追及し、いやいや認めたというところではないか」と述べました。

維新 藤田幹事長「予算委と同じようなあいまいな答弁」

日本維新の会の藤田幹事長は、衆議院政治倫理審査会のあと、記者団に対し「真相を究明して次に向かっていく意味では非常に不十分だった。特に岸田総理大臣は、自民党が行った聴き取り調査の結果を解説しているだけで、これまでの予算委員会と同じようなあいまいな答弁だった。『自分が審査会に出る』と言って安倍派と二階派の5人をひきずり出した効果以外、なかった」と述べました。その上で「あすは安倍派の4人が出席するが、長年にわたり、組織的に違法行為を行ってきた経緯を明らかにすべきで、良心に従ってすべて話してもらいたい」と述べました。

公明 石井幹事長「さらに説明責任を」

公明党の石井幹事長はコメントを出し「岸田総理大臣は政治不信を招いたことを国民に率直におわびし、自民党のあり方を改革するという強い決意を示していた。すべて説明責任が果たされたとは思わないが、本人たちが知りうる立場での一定の説明はしていた。さらに説明責任を果たすとともに、再発防止策として政治資金規正法の改正をやらなければ信頼回復にはつながらない」などとしています。

共産 穀田 国対委員長「証人喚問が必要なこと明らかに」

共産党の穀田国会対策委員長は、衆議院政治倫理審査会での質疑のあと、記者団に対し「裏金づくりの真相解明という国民の願いにまったく応えないもので、疑念は払拭(ふっしょく)されなかった。岸田総理大臣の発言も自民党が行った報告書をなぞるものでしかなく、責任を持った回答ではなかった。説明責任を果たしたことにはならず、関係者の証人喚問が必要なことがいよいよ明らかになった」と述べました。