原発 処理水 海洋放出 早ければ24日開始

東京電力福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、政府は関係閣僚会議を開き、早ければあさって24日、放出を始めることを決めました。

午前10時ごろから総理大臣官邸で開かれた関係閣僚会議には岸田総理大臣をはじめ、西村経済産業大臣や渡辺復興大臣らが出席しました。

処理水の放出計画をめぐって政府は、先月、IAEA=国際原子力機関から「国際的な安全基準に合致している」と結論づける報告書が出されたことも踏まえ、国内の漁業者などに加え、各国への説明を続けながら、放出を始める具体的な時期を検討してきました。

そして、岸田総理大臣は、放出時期を判断すべき最終段階にあるとして、おとといは原発を視察し、きのうは全漁連=全国漁業協同組合連合会の代表者らと面会して重ねて理解を求めました。

政府は、国内外で計画への理解は進みつつあるとして、安全性の確保や風評対策を徹底していくことを改めて確認した上で、早ければあさって24日、放出を始めることを決めました。

これを受けて西村経済産業大臣が福島県を訪れ、内堀知事や福島県漁連の幹部らに伝えることにしています。

放出時期の決定経緯をまとめました

福島第一原発では、2011年の事故で溶け落ちた核燃料デブリを冷却する水や、原子炉建屋へ流れ込む雨水などから、放射性物質の大半を取り除いた処理水がたまり続けています。

処理水には、除去するのが難しい「トリチウム」などの一部の放射性物質が残るものの、敷地内で保管できる量にも限界があるため、どう処分するかが課題となり、国のもとに設けられた有識者らによる組織で、2013年から検討が始まりました。

2020年に有識者らは、処理水を基準を下回る濃度に薄めるなどし、▼海に放出する方法と、▼蒸発させて大気中に放出する方法のいずれかが現実的で、海に放出する方が確実に実施できるとした報告書をまとめました。

これを踏まえ、翌2021年に政府は、処理水を薄めて海に放出する方針を決め、東京電力に対し、2年後をメドに放出を開始する準備を進めるよう求めるとともに、IAEA=国際原子力機関による調査を受けることになりました。

そして2年後にあたることし1月、政府は処理水の放出開始時期を春から夏ごろを見込むと確認。

7月にはIAEAが処理水の放出計画は「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表したのに加え、海に放出する設備も必要な検査に合格し、準備が整いました。

ただ放出計画には、漁業関係者などから反対の声が出たため、政府は、安全性の確保や風評対策を徹底する方針を繰り返し説明し、理解を求めてきました。

また周辺国にも反対や懸念の声があり、特に中国は「処理水」を「汚染水」と表現して強く反発し、日本産食品の輸入規制を強化する動きをみせていることから、日本政府は、科学的根拠に基づいた対応をとるよう重ねて求めてきました。

政府は、国内外へのできる限りの説明や情報発信は尽くしてきたとする一方、処理水を保管できるスペースはなくなりつつあり、これ以上は計画を先送りできないとして、放出開始を決めました。