刑務官に装着式カメラ 受刑者を「さん」付け検討を 提言

名古屋刑務所の複数の刑務官による受刑者への暴行問題を受けて、有識者の第三者委員会は、全国の刑務官を対象に、不適切な言動を抑えるため、装着式のカメラを導入するほか、受刑者を呼び捨てにせず、「さん」付けにする検討を行うなど、再発防止策を提言しました。

名古屋刑務所をめぐっては、若手の刑務官22人が、おととしから去年にかけて、3人の受刑者に暴行を繰り返し、このうち13人が書類送検されています。

この問題を受けて、有識者の第三者委員会は6月21日、再発防止策を齋藤法務大臣に提言しました。

まず、原因については、刑務官が受刑者の人権を尊重する意識が希薄で、若手刑務官が処遇の難しい受刑者を1人で担当せざるをえない厳しい勤務状況にあったことなどが挙げられています。

そのうえで、再発を防ぐため、

▽全国の刑事施設の刑務官を対象に装着式のカメラを導入することで不適切な言動を抑えたり、通信機能を活用して深夜などにサポートを受けたりすることができるとしています。

また、
▽刑務官が受刑者の名字を呼び捨てにせず、「さん」付けなどにすることを検討するよう求めています。

齋藤法務大臣は「相当踏み込んだ大きな改革となる提言をもらった。それぞれの組織のトップが強い意識をもって取り組む極めて重要なカギになると思っているので、陣頭指揮をとっていきたい」と述べました。

日弁連「早急に提言実現を」

名古屋刑務所の刑務官による受刑者への暴行問題について、第三者委員会が提言書を公表したことを受けて、日弁連=日本弁護士連合会は会長声明を出しました。

「原因や背景事情について、全国の刑事施設に共通する問題として、名古屋刑務所に限った問題と矮小化せず分析した点に賛意を示す」としたうえで、再発防止策として刑務官と福祉の専門家がチームで処遇を行うべきという方向性が示されたことや、人権意識が希薄な組織風土を改革する方策などが含まれたことは適切だと評価しています。

一方で、「いずれも制度の運用改善の域を出ていないことは不十分で、懲罰や不服申し立てなどの制度改革は法改正に踏み込むことが必要で、多くの課題も残されている」と指摘しています。

そのうえで、「刑法改正により懲役刑と禁錮刑が廃止され、受刑者の個々の特性に応じた処遇が求められる拘禁刑が導入されることを踏まえると、早急に提言を実現し、刑事施設全体の改革と処遇の充実を進めることが重要だ」としています。