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女性にも ためらわずAEDを

  • 2023年08月23日

心臓が止まった人の救命に欠かせないAED。救急車が到着する前に、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とともに使えば、何もしない場合よりも救命率が4倍上がるとされています。
しかし、AEDはパッドを素肌に貼る必要があるため、「倒れた人が女性だったらためらう」という声も。
そうした課題を解決しようという動きが、今広がっています。

社内に備える AEDと1枚のシート

名古屋市天白区に本社がある、従業員およそ500人の会社「ナカシャクリエイテブ」では、社員が働くすべての建物に7台のAEDを設置しています。
それぞれのAEDには袋が一緒に置かれ、中には1枚の黄色いシートが収められています。
倒れた人が女性だった時に、体を覆いながら救命処置をするためのものです。

社長の山口寛さんです。
8年前、ゴルフ場の受付で倒れていた男性をAEDを使って救命した経験から、その重要性を感じてきました。
女性が倒れたとしても、AEDを迅速に使えるよう、シートの設置を決めました。

ナカシャクリエイテブ山口寛社長
「当社は女性の社員が多いですから、こういうものがないと、いざという時にちゅうちょしてしまう。1分1秒を争うので、少しのちゅうちょが本当に命取りになるので、少しでもそういうことをなくせるようにと思って購入しました」

女性に低い使用率を改善したい

シートを作ったのは、現役の大学生です。
有志が集まって、命を守る活動をしています。

松村美優さん
「これが一番古いもので、最初にできあがったデザインのもの」

4年前、AEDの使用率が男女で差があるというデータを知ったことがきっかけでした。

学校で心停止になった子どもにAEDのパッドが装着された割合は、小中学生では男女で有意な差はないものの、高校生では、女子生徒が男子生徒に比べて30ポイント近く低くなっていたのです。

AEDが女性に使われにくい状況を改善したい。
倒れた人にかぶせるシートの制作に取り組んできました。
どうしたら女性の肌を露出させずに、AEDのパッドを素肌に貼ることができるか。
重ねた試作品は10以上。さまざまな素材、大きさ、デザインを試しました。

松村美優さん
「最初は切り目とかもなくて、横からパッドをこのまま入れることを考えていたんですが、それではどうしても場所が見えづらくてずれてしまって。
心臓を挟み込むように(パッドを)貼らなければいけないので、位置がずれてしまうとよくないということで、このような形になりました」

最終的に、切り込みからAEDのパッドを貼り、貼った後はテープでとめて、肌をしっかり覆えるようにしました。

琴浦陽南さん
「(工夫したのは)いかに時間のロスを少なくしながら、適切に救命処置を行いながら、女性の体が見えてしまう、丸見えになってしまう抵抗感をなくしていくというところですね。この切り込みを作ったり、さっと開けるように裏面にガイドを作ったり、そういう点にたどり着くまでにいろいろ試しました」

女性の命を守る、助けようとする人の勇気を守る。
そんな思いを込めて、「まもるまる」と名付けました。

松村美優さん
「心臓突然死で亡くなる人を1人でも多く減らせたらと思います」

女性への配慮のしかた 講習会で学ぶ

「まもるまる」を設置した名古屋市内の会社では、7月救急救命士を講師に招き、救命講習を開きました。

講師の救急救命士
「ちゅうちょしてAEDを使うのが遅れるくらいだったら、これ(まもるまる)を使って早くAEDを使いましょう」

講師が強調したのは、1秒でも早くAEDを使うこと。
パッドは素肌にさえ貼れれば、下着をずらして貼ったり、貼った後に服などをかけてもいいことを伝えました。

講習会に参加した男性社員
「女性に対して容易に配慮ができることがわかりましたので、今回の講習を生かして女性でもちゅうちょなくできればいいと思います」

講習会に参加した女性社員
「女性に対して女性の身であっても戸惑うと思うので、自分が勇気を出せるように頑張りたい」

編集後記

倒れたのが女性だったために、AEDが使われず、重い脳障害が残ったケースが実際に起きています。
「まもるまる」を開発した大学生たちの取り組みは、女性でもAEDが使われるのが当たり前で、そのためにどうしたらいいかを具体的に考えなければいけないという気づきを、私たちに与えてくれています。

最近、講習会の中でも、倒れたのが女性だった場合の、配慮のしかたなどについて触れられることが増えてきました。
私たちにできる配慮はこちら。
・人垣を作ったり、毛布などを使ったりして、周りから見えないようにする。
・下着をずらしてパッドを素肌に貼る。
・貼ったあと、服などをかける。
何より重要なのは、1秒でも早くAEDを使うことです。

男女を問わず、AEDが使われるべき人に使われ、1つでも多くの命が救われることを願います。
 

  • 松岡康子

    NHK名古屋放送局記者

    松岡康子

    静岡局、豊橋支局、名古屋局、科学文化部、生活情報部を経て、2013年から再び名古屋局。 
    主に医療分野や介護分野の取材を担当。 
    愛知県小牧市出身。2人の息子の母。

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