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熊本冬点描② 「寒そうめん」づくりにかける職人

撮影:福山孝幸カメラマン
  • 2023年02月08日

カメラマンが冬の表情を映像で切り取るシリーズ 第2弾

江戸時代から続くそうめん作り

江戸時代から続くそうめんの産地、南関町。この地で作られるそうめんは「南関そうめん」と呼ばれ、かつては将軍家の献上品にもなりました。今も10軒の製麺所がそうめんを作っていますが、そのうちの一軒、「雪の糸素麺 猿渡製麺所」10代目の師富慶太朗さん(35)に今回密着しました。師富さんは、社会人として就職しましたが、30歳の時に先代で祖母の井形朝香さんに弟子入りし、3年前に井形さんが亡くなってからは、製麺所の後を継ぎました。「代々つないでくれた先祖に感謝して、そうめん作りに励んでいます。」と師富さんは語ってくれました。

そうめんの産地 南関町

徹底した手作業へのこだわり

師富さんが作るそうめんは、機械ではなく、すべて手作業で行っています。作業は小麦粉、塩、水を混ぜ合わせて練り混み、大きな小麦粉だんごを作ることから始まりました。体重をかけて練り混む作業は重労働です。だんごは平たく伸ばされ、ひも状に切られると麺のもとが作られます。麺のもとは、はじめは直径5センチほどあります。この後、ねじりを加えながら伸ばす「ヨリ」という作業で細くしていきます。時間をおいて同じ作業を繰り返し、直径1センチほどまで伸ばされます。

小麦粉のだんごをひも状にする「板切」の作業

コシの秘密は「ヨリ」にあり

翌朝、一晩寝かせた麺は、2本の竹の棒に八の字状に巻き付けながら、さらに細く伸ばしていきます。「掛巻」という作業で、麺はさらに直径5ミリ程度まで伸ばされます。この時も「ヨリ」をかけながら伸ばしていきます。しばらく寝かせてから、いよいよ最後の工程「手延べ」の作業にかかります。1メートル70センチほどに伸ばされた麺を横向きにかけ、その間に2本の竹の棒を入れて、麺を引き裂きながら伸ばしていきます。この作業を何度も繰り返すことで、麺はどんどん細くなっていきます。しかし、途中で切れることはありません。何度も「ヨリ」がかけられていたため、強じんな麺になっていました。

ヨリをかけながら伸ばす「掛巻」の作業

雪舞う日の工夫

手延べ作業は本来なら冬の天日のもとで行いますが、この日は、昼間から雪が舞うあいにくの天気。部屋の中で炭をおこし、その上で手延べ作業が行われました。乾燥が早く進むため、作業は時間との勝負。師富さんは麺が切れないよう慎重に、かつ素早く竹を操って、そうめんに仕上げていきます。師富さんは「良いそうめんができたと思います。寒そうめんは、町の風物詩 季節の風景の一部になれているのは嬉しいです。昔のそうめん屋の活気を取り戻していきたいです。」と話してくれました。

「手延べ」で極限まで細くされる

寒そうめんのお味は

その師富さんがつくったそうめんを試食させていただきました。食べた時の口の中いっばいに広がる小麦の香り。そして麺の一本一本が感じられるコシの強さに驚きました。正直、今まで食べたことがないそうめんでした。これまで、そうめんの味はつゆで決まると内心思っていましたが、「主役は麺にあり」とあらためて感じさせてくれました。

機械でも不可能な細さ

動画はこちら

  • 福山孝幸

    熊本局・カメラマン

    福山孝幸

    カメラマン歴25年 
    季節の話題が好き


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