【南阿蘇鉄道】旧“日本一”長い駅名の駅を訪ねて
- 2023年06月27日
7月15日、熊本地震からの復旧を果たし7年振りに全線で運転を再開する南阿蘇鉄道。鉄道の魅力や沿線地域の人たちの思いに迫るシリーズです。今回は「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」を訪れました。
旧“日本一”長い駅名の駅
「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」は、現在の折り返し駅・中松駅の隣駅。7年間、不通となっていました。
2020年まで、日本一長い駅名だったので、いまでもその長い駅名を見るために鉄道ファンが訪れます。
駅舎の中には、古本屋「ひなた文庫」があります。
地震の起こる前の年に、中尾恵美さんが“地域の人と旅の人が本で交流できる場所にしたい”とオープンしました。しかし、それが1年で途絶え、駅に列車が来なくなりました。
この7年間、列車が通らないところを眺めてきて、南阿蘇の風景になにかひとつ列車の存在がかけてるなと思っていました。隣まで走っている列車が満席だったよという話を聞くと その日、ここはそうではなく、差を感じて、さみしいなという思いがありました
それでも、地元の人と一緒に、駅を管理し、不通であることを生かしたイベントを行うなどして、
営業を続けてきました。
そして、ことし4月から、7年間列車の通らなかった駅に試運転の車両が停車するようになりました。
復興を告げる、鉄道の足音です。
(中尾恵美さん)
これまで待ちに待っていたので、「もうすぐだ」と本当に待ち遠しいです。鉄道に乗るときって、本を片手に一冊もっているとそのときの思い出とか、そのとき読んでたもの景色が結びついたりすると思うんです。なのでその思い出を本と一緒に持って帰って、また行ってみようかなって思ってもらえるような思い出が作れるような場所になりたいです
駅の隣には、「きしゃぽっぽ」という定食屋があります。営むのは渡邊重行さん。
「ひなた文庫」が営業しない日は代わりに駅舎の風通しや掃除を行い、中尾さんとともに駅を守ってきました。
この場所で生まれ育った渡邊さんは、高校卒業後、和食の料理人として地元を離れて活動してきました。還暦を期に、8年前、地震の前の年に南阿蘇に戻り、店をオープンさせました。
人気メニューはちゃんぽん。当初はメニューになかったそうですが、地元の人たちが「ちゃんぽんが食べたい」とリクエスト。しかし、和食の料理人の渡邊さんにとってちゃんぽんは専門外。どうしたものかと四苦八苦しながら何度も何度も練習し、看板メニューになったそうです。ちなみに、とってもおいしいです。
そんな、渡邊さんにとって、南阿蘇鉄道は、子ども時代からの思い出も詰まった鉄道です。高森高校への通学は、近所の友達と一緒に線路を歩いて中松駅まで。そこから高森駅まで汽車にのっていたそうです。
地震で被災したときは廃線になるのではないかとおそれたといいますが、駅前の畑に、レンゲの花を植えて、訪れた人たちを歓迎。列車の通らない駅前で営業を続けてきました。
7年間、列車が走らなければ、それだけ草がはえたりしますが、逆に工事関係のかたやボランティアなど、いろんな方と交流ができて、ぜったい前に進むんだというそういう風景はみられました。
やっと全線開通にこぎつけたのは嬉しいですが、これからだと思います。“開通します”でお祭りさわぎというだけでなく地元の人たちがどんどん利用することが、今後の南阿蘇鉄道の存続を占うと思います。いまからですね。
取材した日は6月3日。この日の夜8時ごろ、ホームから蛍が光るのを見えました。近くには水源地とたんぼがあり、そこから流れてくる蛍が線路の上を飛んでいたのです。特別に渡邊さんに案内してもらい、駅舎周辺を飛ぶ蛍を撮影することができました。
全線開通後は、この時間に列車が走ります。もしかしたら、こんなに沢山の蛍が光るようすは、もう見られない風景かもしれません。
(南阿蘇鉄道のむかしばなしは、今回お休みします。
次回は、「鉄道唱歌」にまつわるお話をしたいと思います。お楽しみに!)
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