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【南阿蘇鉄道】高森駅を訪ねる

ことし7月全線開通!
  • 2023年04月28日

ことし7月に、熊本地震からの復旧を果たし全線で運転を再開する南阿蘇鉄道。
鉄道の魅力や、沿線地域の人たちの思いに迫るシリーズの第2弾です。
今回は「高森駅」を訪ねました。

「高森駅」ってどんなところ?

南阿蘇鉄道の始発・終着駅、高森駅。
駅員が常駐する唯一の有人駅です。

気温が20℃を超え、あたたかい風が吹くこの日、案内してくれたのは運転士の山本英明さんです。
熊本地震の前の年に入社。運転士のなかではベテランです。7年間、一部でしか運行できない南阿蘇鉄道をどうにか盛り上げようと、尽力してきました。

南阿蘇鉄道に運転士はおよそ10人いますが、切符の窓口や、売店の販売も担当。訪れた乗客と運転士が距離が近いことも特徴のひとつです。

駅のホームに出て北を見ると、雄大な阿蘇五岳が眺められます。

これらの山を背負うようにして列車がホームにとまっているのも、高森駅の特徴です。

(運転士 山本英明さん)
いろんな方々の応援があっての南阿蘇鉄道です。
沿線の人々の温かさが、一番生で感じられる鉄道ではないかなと思います。

車窓から見られる穏やかな景色と、沿線の人々のあたたかさが魅力の南阿蘇鉄道。

高森駅周辺の人たちも、全線再開を心待ちにしていました。

駅前で昭和30年から続く定食屋を営む秋山さん

(秋山てる美さん)
南阿蘇鉄道は、当たり前のようにあるから、無くなった時のことは考えられないです。
だから無くならなくてよかった。

復興のために高森町に移住した田中さん

田中亮介さん)
南阿蘇鉄道はローカルでとことこ走る鉄道の原点かなって。生き字引みたいなものじゃないですか。

南阿蘇鉄道、そして「高森駅」の魅力がつまった、シリーズ第2弾の2分20秒です。VTRも合わせてご覧ください。
 

南阿蘇鉄道のむかしばなし

さて、ここからはかなりマニアックな情報です。南阿蘇鉄道をより深く知るために、この鉄道や南阿蘇村・高森町(=通称「南郷谷」)にまつわる歴史をひもといていきます。

現在、南阿蘇鉄道の路線は不通の区間も含めて、南阿蘇村の立野駅から高森町の高森駅までの10駅・17.7キロです。

開通はいつ?

立野駅から高森駅まで列車が走り始めたのは、昭和3年。いまからちょうど95年前のことでした。

阿蘇地域に鉄道が届くようになったのは、それよりも10年ほど前のこと。阿蘇山を挟んで北側・阿蘇市側(=通称阿蘇谷)を走る、いまの「豊肥線」が、立野駅まで開通しました。
当時は、「宮地線」です。そして徐々に阿蘇市の宮地駅、そしてその先の大分県の方面まで繋がっていき、人々の往来を活発にしました。

南阿蘇白川水源駅に展示された写真

しかし、南郷谷の人たちが鉄道を使うためには阿蘇五岳に阻まれ、アクセスが悪い。当時、地方の発展は鉄道にこそあるとも考えられていたそうですから、“南郷谷にも鉄道を”、と地元の人たちが強く要望し、「高森線」の開通が実現したのです。

開通当初は、今よりも4駅少ない6駅でした。
立野、長陽、阿蘇下田、中松、阿蘇白川、高森。
熊本から高森までは、2時間半ほどだったそうです。
ちなみに、熊本県にはじめて鉄道が届いたのはいまから約130年前の明治24年です。開通は、熊本駅よりも玉名駅が3か月先でした。

「国鉄高森線」の誕生

その後、第二次世界大戦を経て、昭和24年に「国鉄高森線」となります。

南阿蘇地域のおじいちゃん・おばあちゃんに南阿蘇鉄道の話をすると、決まってこの時代の思い出が出てきます。というのも、昭和45年頃までは南阿蘇に行くためには大きな道路がなく、急な坂道や峠など、難所を越えて行く必要がありました。国鉄高森線は南郷谷に住む人々にとって、「必要不可欠」な交通機関だったのです。

「南阿蘇鉄道」として存続

そして昭和61年。「国鉄高森線」から第三セクターの「南阿蘇鉄道」となりました。

高森駅に展示されている写真

昭和50年代、国鉄のなかで高森線は、廃線対象の路線に指定され、バスに転換する案が示されていました。しかし地元の熱意によって、存続が決定。存続を求める署名は1万5000も集まったそうです。そして今日まで、観光色を強めた鉄道として、運行を続けています。

熊本地震の被災後も、地元の人たちの思いに支えられて、復興ができたと、関係者は口をそろえて話しています。

今も昔も、地元に根付き、愛された鉄道。それが「南阿蘇鉄道」なのです。

お便りを募集します!

番組では、みなさんの南阿蘇鉄道にまつわるエピソードを募集しています。旧国鉄時代の思い出でも構いません。
「わたしと南阿蘇鉄道」というテーマで、自由にお寄せください。お待ちしています!
投稿フォームはこちらから↓
https://forms.nhk.or.jp/q/V97ZMAES

  • 北条与絵

    熊本局記者

    北条与絵

    2019年入局
    熊本市政担当などを経て、
    阿蘇支局へ。
    阿蘇の日本酒が好き。

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