すい臓がんの早期発見につながる「IPMN」とは 発見手順、生存率

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すい臓がんも早期発見すれば生存率は高い

すい臓

すい臓がんは早期発見が難しく生存率は低くなっています。すい臓が腹部の奥まった場所にあり通常の検査ではがんが発見しにくいことや、腹痛などの自覚症状ががんの早期には現れにくいことが、その理由です。

しかし言いかえれば、すい臓がんも早期発見さえできれば生存率は高まります。特に、ごく小さい1cm以下の段階で発見して手術すれば、5年生存率は80%と報告されています。

IPMNという特殊な腫瘍に注目

IPMN

すい臓がんを早期発見するために、最近注目されているのはIPMN(すい管内乳頭粘液性腫瘍)です。すい臓にできる特殊な腫瘍で、多量の粘液を分泌したりポリープを形成したりします。IPMN自体はがんではありません。ところが、IPMNはがんにゆっくり変化することがあるのです。またはIPMNがあると、IPMNとは別の場所にすい臓がんが発生することもあります。
したがって、IPMNが見つかったら慎重に経過観察します。それによりすい臓がんを早期発見できることがあります。

IPMNがすい臓がんに変化!

70代男性のIPMN

IPMNがすい臓がんの早期発見につながった70代男性の例を紹介します。

左は、IPMNが見つかったときのCT画像です。直径2cmのIPMNが認められます。その後、男性は半年に1回精密な検査を受け、IPMNの観察を続けました。
右は10年後の画像です。IPMNは4cmに拡大し、その壁面にがんを示す7mmの結節が見られました。ただちに手術を行い完全に取り除くことができました。なお、IPMNは1~2年でがんに変化することもよくあります。

すい臓がん早期発見の手順

すい臓がん早期発見の手順

一般に、すい臓がんの早期発見は次の手順で進めます。

  1. すい臓がんのリスクやサインをチェックします。「血縁者にすい臓がんの人がいる」「慢性すい炎である」「糖尿病が急に悪化した。または高齢で急に発症した」などです。当てはまる人は、次に進みます。
  2. 簡単な検査で「すい臓がんが疑われる病変」がないかを調べます。おなかの上から超音波を当てる「腹部超音波検査」がよく行われます。病変とは「すい管の拡張」、または、すい臓の中で液体などが袋状にたまる「すいのう胞」です。どちらもすい臓がんでない場合が多いのですが、すい臓がんが隠れている場合もあるのです。これらが見つかった人は、次に進みます。
  3. すい臓の精密な検査を行います。超音波内視鏡を使った検査が最も有効とされています。内視鏡を口から消化管に挿入し、内視鏡の先から超音波を発生させ、胃や十二指腸の壁を通してすい臓をすぐ近くから観察する検査です。CTやMRIの検査を行うこともあります。これらの検査を行えば「ごく小さい段階のすい臓がん」も発見できます。これらの検査で、がんではなくIPMNが発見されることもあります。

すい臓がんのQ&A

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年8月 号に掲載されています。

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