高血圧の新対策!動脈硬化などのリスクをAIが予測&アプリで生活習慣改善

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高血圧 慢性腎臓病(CKD) 動脈硬化 循環器・血管 胸・心臓 腎臓 全身

新しい発想の高血圧対策

高血圧の「みらい医療計画」

日本高血圧学会では「みらい医療計画」という大規模なプロジェクトを実施しています。主要プロジェクトの1つが、AI(人工知能)・ビッグデータ(大勢の人から集めた大規模なデータ)・IT(情報技術)の活用です。

高血圧患者の治療を受けている人や未治療をあらわす円グラフ

日本には高血圧の人が4300万人(推定)います。しかし治療を受けて血圧を良好にコントロールできているのは1200万人だけです。治療を受けていても血圧コントロールが良くない人が1250万人、高血圧とわかっているのに治療を受けていない人が450万人、そもそも自分が高血圧だと気づかず治療もしていない人が1400万人います。こうした現状を変えるため、まったく新しい発想の高血圧対策が計画されたのです。

高血圧で起こる病気をAIが予測

京都大学大学院教授 奥野恭史さん

京都大学大学院教授 奥野恭史(おくの・やすし)さんが開発しているAIは、ある個人が今後3年間に何らかの病気になるリスクを予測します。高血圧の専門家も注目しています。

60歳男性のデータ例

たとえばAさんは60歳男性で上の血圧150・下の血圧96(mmHg)です。これらのデータのほか血糖値やコレステロール値などをコンピュターに入力します。

血糖値やコレステロール値を入力
AIの分析結果

それをAIが分析。Aさんは3年以内に動脈硬化慢性腎臓病を発症するリスクがどちらも最も高いレベル5だと予測しました。動脈硬化も慢性腎臓病も高血圧が影響し脳卒中心筋梗塞につながる病気です。

なぜ、こうした予測ができるのでしょう。このAIには青森県弘前市の住民のビッグデータが組み込まれています。住民が毎年受ける健康診断・体力測定・生活習慣の問診・詳しい血液検査・病気に関係する遺伝子検査などのデータです。すでに16年間のべ約2万人分のデータが集まっています。AIはこのビッグデータを使い、どんな人がどんな病気になるかを予測するのです。

健康診断などのビッグデータを使う

たとえば動脈硬化や慢性腎臓病を発症した住民と発症していない住民では、3年前に健康診断などのデータがどう違っていたかをAIはパターンとして学習します。それをもとにAさんの3年後を予測します。

AIが予測したAさんが発症する病気や起こる原因

より多くの種類のデータを入力すると、その人がどのようにその病気になるのかも予測できます。Aさんの場合、高血圧に加え喫煙や飲酒、持病の心臓病などが大きく影響して慢性腎臓病になるとAIは予測しました。

自分とまったく同じ人をAIは見つけてくる

高血圧の患者さんは「血圧が高いから危ないですよ」と言われても、「ほかの人はそうかもしれないが、自分は大丈夫だろう」と気にしないことがあります。しかし、AIがビッグデータを使うというのは、その患者さんとまったく同じような健康状態や生活習慣の人を見つけてくるということです。自分にそっくりの人が高い確率で動脈硬化や慢性腎臓病になっているとわかれば、「自分も高血圧を放っておいてはいけない」と身にしみて思うでしょう。

高血圧による病気を防ぐために「その人がどうしたらいいのか」もAIは明らかにします。現在は「この治療法がいいですよ」とすすめても、「ほかの人には合うかもしれないが、自分には合わないかもしれない」と受け入れない人がいます。しかし将来は「あなたにはこの治療法がベストです」ということまでAIが教えてくれるでしょう。

アプリが生活習慣をアドバイス

スマートフォンのアプリケーションが、その人の血圧や生活習慣を把握しアドバイスもしてくれる―そんな時代も近づいています。

アプリ画面
血圧のグラフ

高血圧の治療を目的にしたアプリをあるベンチャー企業が開発しています。薬を必要としない患者さんが対象です。血圧を測るとデータは自動的にスマホに送信されアプリに記録されます。

減塩のコツを紹介している画面
アプリで高血圧に関する学習ができる

アプリを使って高血圧に関するさまざまな学習ができます。たとえば「魚にしょうゆをかけるより、魚をしょうゆにつけるほうが減塩しやすい」ことをクイズで学びます。外食が多い人には「単品ではなく定食にする」「みそ汁の汁や漬け物を残す」「サラダにドレッシングをかけない」などのコツを教えてくれます。

アプリの画面のイメージ
アプリから個別のアドバイスが通知される

また、アプリとともに毎日自分の生活を振り返ります。体重・食事・運動・ストレス・睡眠などをチェックするのです。
こうして自分の情報をアプリに伝えると、アプリはその人に必要なアドバイスを適切なタイミングで通知します。たとえば「みそ汁、スープは残しましょう」「20分間ウォーキングしましょう」「6時間眠れるよう生活を見直しましょう」などです。

アプリで意識や行動が変化

高血圧の治療では生活習慣の改善が欠かせません。しかし医師が口やかましく言っても、患者さんはなかなか聞いてくれません。そこで、アプリがまったく別のアプローチで介入するのです。「アプリを処方する」という言い方もされています。

私たちはスマホを四六時中眺めています。そこに自分の血圧や生活の様子がありありと示されれば、どうしても放っておけないでしょう。アプリによるチェックやアドバイスが繰り返されるうちに、自分の意識や行動も変化し、高血圧が改善することが期待されます。

高血圧の患者さんが受診するのは1か月から3か月に一度です。その間は「アプリが医師の代わりをする」と言ってもいいでしょう。また、アプリのデータを医師がインターネットで共有すれば、患者さんの血圧や生活を常に把握できます。離れていてもお互い安心です。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ここまで来た!高血圧最新対策「AIが予測 アプリで改善」