【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~
関本(東京大学):ありがとうございました。続いて、「NHKリアルタイムデータ重畳の検証について」ということで、AIGID(アイジッド)の大伴さんからお願いします。
大伴(AIGID):まず、一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)を簡単にご紹介します。「産官学の関係機関が連携して、社会インフラに関わる情報の収集・配信・利活用等を推進する」団体になります。
大伴(AIGID):主な活動は4本の柱があり、1つが社会基盤情報のデータハブとなるG空間情報センターというサイトを運営しています。これはデータをワンストップで検索し入手することができるセンターです。主に地図の情報を大量に集めて配信しています。特に災害が起こったときに、災害情報のハブとしてもご利用いただいています。
大伴(AIGID):いざ大きな災害が起きると、「災害モード」と呼ぶ画面に切り替わりまして、その災害に役立ちそうな情報を収集、もしくはあらかじめ持っていたデータを提供します。1年前の熱海で起こった土石流災害でもデータを提供しました。
大伴(AIGID):それともう1つ、研究開発の一環になりますが、「民間事業者によるリアルタイム災害情報提供研究会」を開催しています。会員企業として、民間の航空測量会社さんが入っています。こういった会社では災害が起こると、被災地に航空機を飛ばして情報を収集し、斜め写真撮影や航空レーザー計測を行いまして、災害の現状把握や復興に役立てるデータ収集などを実施しています。こうしたデータをいち早く集めて提供するサービスをできないかという視点で、数年前に研究会を立ち上げ活動しています。大きな災害が起きるたびに、地図サイトを立ち上げ、集めた情報を集約しています。
大伴(AIGID):今回、NHKへの支援もしていますので、簡単にご紹介します。NHKで収集した令和2年7月豪雨の熊本県に関する人流や車両通行実績などのデータを、時空間データベース化しています。地理情報システム、GISを使って可視化・重畳表示をするということをやって、様々な検証・分析をしています。
大伴(AIGID):そもそもなぜGISを使うのか。1つは、世の中のデータのほとんどが地図に関連しているので、地図上にマッピングすることができます。2つ目は、いろんな物事を地図で可視化すると、空間的な新たな認識ができます。全く違った事象を重ね合わせることで、それぞれの事象の関連性を空間的に把握できる。あとは時系列に表示することで、時間的推移、空間的に把握することができる。こういったことができるツールなので、とても効果的なツールと思っています。
今回私たちが使ったのは、QGIS、デスクトップ型の製品で、オープンソースソフトウェアです。もう1つは、Leafletと言いまして、これもオープンソースなんですが、Webで地図を表示するライブラリになっています。この2つを使って、可視化を行いました。
大伴(AIGID):こちらは河川の水位がどんなふうに変わっていったのか。河川の洪水氾濫を可視化したもの。これも今までバラバラに表示、あるいはデータを見ることができても、いざこうやって可視化すると相関関係があるのかというのが見て取れるのかなと思います。
大伴(AIGID):続きましてこちらがですね、モバイル空間統計のデータです。人口系のデータを使って、滞留がどの時間にあったのかというところを可視化しました。
大伴(AIGID):こちらはAgoopさんのポイント型流動データを可視化しました。ヒートマップという手法を使って、「どの辺に人が密集しているのか」を表現しました。これによって、また違った見方ができるのではないかと思っています。
大伴(AIGID):最後にLeafletを使った表示です。これもAgoopさんのポイント型の流動データを使いました。人の軌跡を動かしてみる。洪水がどのへんで起こったか。その時に人はどんな動きをしていたのか。こういったことを視覚的に捉えることができるデータとして見てとれるのではないかと思います。GISのいいところというのは、いろんなデータを重ね合わせて表示することができるので、いろんな分析をできることですね。定性的にもできますし、定量的な分析もできる。ここがGISの強みだと思います。今回重畳したデータは、今後、Webでも表示できるように検証を進めております。
関本(東京大学):ありがとうございました。一つのデータをWeb上で災害のときに表示をする位であれば、今かなりできるようになってきていると思いますが、特に被災された地区でいろんなデータを重ね合わせたり、動的なデータも入ってくると、なかなかそれを、QGISではがんばればできるんだけど、Web上で共有というのは簡単にできる状況でもありません。AIGIDさんの方で、G空間研究センターのノウハウも使いながら検討をしていっていただけるといいのではと思っています。