全国ハザードマップ

【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~

2022/7/25

4.発災時の車データ利活用 東日本大震災が大きな契機に

 

220731_23_sekimoto2

関本(東京大学):次の議題に移らせていただきます。「昨今の発災時車両通行実績把握・活用状況について」ということで、ITS Japanさんが、東日本大震災のときからかなり長く取り組まれていると思います。

 

220731_24_morita1

森田(ITS Japan): ITS Japanは、1994年に設立した任意団体です。2005年にNPOの法人格を取り、ITS Japanという名称になりました。カーメーカーと電機系のメーカー、IT系のメーカー、部品系のメーカー等、学の先生方も含めると257の会員数となっています。そのうち、企業は160社くらいです。

 

220731_25_its1

森田(ITS Japan):主な活動は、ITS(高度道路交通システム)を普及させていくために、民間団体として、便利な世の中・事故のない安全・安心な世の中を目指していきたいということをファシリテートしていくことを役割としています。民間団体ですので、省庁さんとの繋ぎをやったり、あるいは企業さんと検討会をやったり実証をやるという活動を行っております。また、ヨーロッパ、アメリカ、アジア・太平洋地域とそれぞれにITS推進団体がありますので、連携をしながら世界会議等で情報交換をするなど活動も推進しています。

 

220731_26_its2

森田(ITS Japan):通行実績という活動ですが、東日本大震災がデータ提供のきっかけになります。東日本大震災が起こったということで、カーメーカーと我々で協力をして、「どこが通れたのか」「通れていないのか」ということがわかる情報を提供しようということで活動を始めております。

 

220731_27_its3

森田(ITS Japan):東日本大震災をきっかけにした通行実績データの提供活動の結果を踏まえて、当時ITS Japanのホームページにいくつかの提言の掲載をしています。「道路の情報をうまく収集して使いましょう」、「平常時の仕組みを使って災害時もデータ提供できるようにしましょう」など。「固いシステムと柔らかいシステムを融合する」というのは、リアルタイム性、「早い情報が出るんだけど情報の精度が粗い」SNS系の情報ですとか、「出元はしっかりしているんだけど即時に出てこない情報」などをうまく使い分けながらいい仕組みを作っていけばいいんじゃないかといったことを提言させていただきました。

 

220731_28_its4

森田(ITS Japan):こういった提言を社会実装していくために、東日本大震災での活動経験を踏まえて、委員会を設置して、「災害の情報や避難所の情報等をカーナビに出す」という実証実験を静岡県と一緒に実施し、非常に有効ではあるという点も確認しました。

 

220731_29_its5

森田(ITS Japan):この活動も踏まえて、新たに2019年に提言書を作りまして、経産省・内閣府などに提出しました。

「ドライバーに災害の情報や避難の必要性を伝えることが必要ではないか」、「適切な避難を行うための情報を提供する必要がある」、「ドライバーの個々の避難行動と、地域の人の避難の最適化」など、こういった提言を行いました。

 

森田(ITS Japan):通行実績に関してはHONDA、パイオニア、トヨタ、日産の協力で始めていますが、その後、トラックメーカーにも参画いただいて、いまは乗用車系とトラック系と両方のデータを出せるようになっています。内閣府防災、国交省等と協定書を結ばせていただいて、「どういう条件でデータを出すのか」「どういう使い方をするのか」など相談し、使い方を両者で合意していきました。

 

5.発災時通行実績データ提供開始 トリガーはいつがベスト?

 

220731_30_its6

森田(ITS Japan):通行実績データを提供する条件としては、震度6弱以上、東京23区は震度5強以上という条件を設定しています。現状は無償提供となっていますので、各社のベストエフォート(可能な限りの努力)で、「夜中に発災したからすぐ出す」ということではないが、できるだけ速やかにやれる範囲でという条件にしております。

 

220731_31_its7

森田(ITS Japan):2021年の福島の地震のときの通行実績情報の図ですが、青い道が乗用車の通った実績になります。常磐道の地図の色が緑色になっていまして、ここは常磐道で法面が崩れて通行止めになりまして、「通れていない」ことがデータを可視化することで見た目でわかります。

 

220731_32_its8

森田(ITS Japan):この図は、先日の能登の地震のときのもので、緑色の点がトラックで、通れたところが点の軌跡になっていますので少ない台数が通ったということです。

 

220731_33_its9

森田(ITS Japan):こちらは2020年の7月豪雨のときの状況です。7月4日に起きていますが、データを出す・出さないは国交省や内閣府防災に確認しながら対応する部分もありますので、この時は結果的に7月5日の16時ごろにホームページに出しました。ITS Japanのホームページに出すのと同時に、内閣府防災や国交省にデータを提供している状況です。この令和2年7月豪雨については、その後九州北部に大雨の状況が広がりましたので、8月の時点では九州全域の情報提供をするといった対応もしました。

 

220731_34_its10

森田(ITS Japan):データがどう使われているかですが、1つは国交省経由で九州地方整備局のホームページに、道路啓開情報を掲載する地図を作るときにデータを活用していただいていると聞いています。内閣府防災では、ISUT(災害時情報集約支援チーム)が活動される際に確認する地図等に使われていると聞いています。

 

220731_35_its11

森田(ITS Japan):私どもよりも渋滞の規制情報なども含めて詳細に出しているのが日本道路交通情報センターの災害時情報提供サービスで、私共は通行ができたかどうかだけですが、日本道路交通情報センターでは通行ができない状況・情報も提示されている状況です。

 

220731_36_its12

森田(ITS Japan):通行実績の情報の流れは、渋滞情報含めて平常時は道路管理者の情報等が日本道路交通情報センターに入って車などに情報が来ますが、災害が発生すると、乗用車系・トラック系OEMからITS Japan、警察庁にデータがいって、そのデータがITS Japanからは内閣府防災・国交省に提供する。警察庁経由では日本道路交通情報センターに集まって、災害時情報提供サービスに適用されるという現状です。

目 次

1.   車の通行データ浸水場所がわかる?

2.   車の平均速度がいつもと違う」 そこに異変はあるか

3.   「データ量」が課題 少ないサンプルは誤解のもとに

4.   発災時の車データ利活用 東日本大震災が大きな契機に

5.   発災時通行実績データ提供開始 トリガーはいつがベスト?

6.   発災時利活用の研究・分析 データ提供の促進がカギに

7.   悪用・乱用の懸念も 最適なデータ連携の道とは

8.   発災時のデータ集積基地構築へ 模索が続く

9.   令和2年7月豪雨×熊本県 地図上データ可視化の試み

10.  発災時リアルタイムデータ利活用促進へ プラットフォームは?

11.  「災害時」だけではダメ 「復旧時」「平時」の活用

12.  平時のデータなくして 分析は不可能

13.  水道・電気・ガス 生かせるデータは多様に

14.  「災害がこれから起こるかも」時から データ提供は可能?

15.  消防現場の視点 「発災後72時間のデータ活用に大きな期待」

16.  誤った判断のリスクも 慎重な検討を

HOME
記事一覧
使い方
よくある質問
ハザードマップを見る