全国ハザードマップ

【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~

2022/7/25

 人の位置情報や道路の通行情報など、「発災時のリアルタイムデータ」を利活用することで、より多くの人の命や生活を守ることができるか。第2回目の検討会を6月に実施しました。今回は主に車のデータの生かし方について。自治体や救助組織、有識者、データを扱う企業の担当者など、27名に集っていただき、可能性や課題を話し合いました。

 

検討会第1回の議事録はコチラから読めます

発災時 データで命は守れるか|NHK全国ハザードマップ

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【出席者】※肩書きはオンライン検討会開催時点

〇熊本県知事公室 危機管理防災課 企画監 三家本 勝志 

〇人吉下球磨消防組合消防本部 警防課 課長 早田 和彦 

〇熊本市消防局 東消防署 警防課長代理 消防司令 小山 幸治  

 

◎東京大学空間情報科学研究センター 教授  関本 義秀 <本検討会 座長>

〇東京理科大学理工学部土木工学科 教授  二瓶 泰雄、平本 達典(B4)、窪田 利久(M1)

〇京都大学防災研究所 教授 畑山 満則

〇京都大学防災研究所 准教授 廣井 慧

〇熊本学園大学経済学部 教授 溝上 章志 

〇国立研究開発法人 防災科学技術研究所 総合防災情報センター長 臼田 裕一郎

 

〇一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会(AIGID) 大伴 真吾

〇本田技研工業株式会社 コネクテッドソリューション開発部 福森 穣、杉本 佳昭

〇(公財)日本道路交通情報センター デジタル事業推進部 杉田 正俊、小野 史織

〇特定非営利活動法人 ITS Japan 地域ITSグループ 理事  森田 淳士、部長  石毛 政男 

〇(株)ドコモ・インサイトマーケティング エリアマーケティング部部長  鈴木 俊博、副部長 森 亮太

〇(株)Agoop  代表取締役社長  柴山 和久、社長室 室長 佐伯 直美

〇TomTom Japan 交通情報サービス事業開発シニアマネジャー 水野真由己

         交通情報サービスシニアセールスエンジニア 西弘二

〇(株)レスキューナウ 代表取締役 朝倉一昌

〇損害保険ジャパン(株) 執行役員CDO DX推進部長 村上明子

 

事務局 NHK(プロジェクトセンター 捧 詠一/人事局 浅野 将/第2制作センター 中井 暁彦)

 

 

 

 

関本(東京大学):皆様、こんにちは。お忙しいお時間にお集まりいただきありがとうございます。防災減災に資するデータ利活用の促進について、国含めて、外の中立的な立場から働きかけていくことも大事だと思いますし、本検討会の第1回でも、「どうやって救助の優先順位をつけるのか」「救助リソースも限界があることをどう理解していただくか」。法律の運用上、「要支援者名簿をどうやって共有していくか」という話など、色々と意見が出ました。会を進めるに従って、どのようにまとめていくかの議論もできればと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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1.車の通行データで浸水場所がわかる?

 

関本(東京大学)本日1つ目の議題は、「令和2年7月豪雨×球磨川における車両通行実績分析による浸水エリアの把握について」ということで、二瓶教授とTomTom社との共同研究の話題提供をどうぞよろしくお願いいたします。

 

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二瓶(東京理科大学):私たちの方で元々、「車の移動情報から、洪水氾濫している状況・災害の状況が見えないか」という研究を3~4年やっています。今回、TomTomの水野さん・西さんに色々とお世話になりながら、最新の車両通行・プローブデータを使って、「洪水氾濫がどの位見えそうか」を検討しています。レスキューナウの朝倉さんとも色々と情報交換をさせていただいているという段階です。その途中経過だと思ってお聞きください。前半、私の方から概略を説明させていただき、後半は実際に研究している学部4年生の平本さんから説明させていただきます。

 

二瓶(東京理科大学):洪水氾濫の情報がある程度リアルタイムで得られたら、すごくいろんなところで役立つというのはわかりつつも、なかなかその技術が現段階では普及していないという状況です。「いつどこで氾濫しているのか」「どの道路がどの時刻までなら通行できるのか」ということがわかれば、適切な避難情報の発令や避難行動の誘導、氾濫した水を排水しなければいけない時のポンプ車の適切な配置などに役立つと思います。

 

二瓶(東京理科大学):今まで洪水氾濫が起こった場所のモニタリングとしては、例えば「冠水しているか・していないかをセンサーを使って測る」という、世田谷区さんや防災科研さんで行われている事例や、国交省でやり始めましたワンコインセンサー、浸水したら浸水した情報を察知し、面的にわかるというセンサーも行われています。持続可能性と維持管理の面で課題があります。なるべく普段から使っているデータをうまく氾濫のモニタリングに生かせないかという視点でずっと研究しております。

 

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二瓶(東京理科大学):「車両の通行情報に関するいろんな交通センシングの技術を使って氾濫モニタリングができるか・できないか」を検討しております。非常に難しいことはまだできていないんですけれども、「ふだんは通行している道路が一部分だけ車が通っていない」という情報が分かった時に、そこが氾濫エリアなんだろうと。何らかの災害が起きている状態なんだろうということは想像できますので、こういう状況を1個ずつ確認していくというのを今回やっています。道路のプローブデータに関しては、TomTomさんの方から提供いただいて、時々刻々変化する令和2年7月豪雨の氾濫状況のシミュレーションを私たちがやっています。

 

二瓶(東京理科大学):熊本県人吉市・球磨村を含む範囲でシミュレーションをやっています。入力する条件としては、地表面の高さですね。地盤の高さとか、どれくらいの水が流れ込んでいるか・流量を本川と支川でやっています。川の水位も適宜、入力条件として使って、実際に発災が起き始めたのが2020年7月4日の未明からと言われていますので、その前から、4日夕方位までのシミュレーション期間でやっています。

 

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二瓶(東京理科大学):こちらは球磨川から氾濫している様子と、流速の大きさになっています。こうしたシミュレーションの結果と、車両通行データを比べていきます。

 

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二瓶(東京理科大学):車両通行データというのは1時間ごとにまとめられたデータになっていまして、例えば午前4時台だったら1時間分のデータの中で、車両の通行速度を表示しています。速度が表示されていない区間というのは、データがないので、未通行の区間となっています。氾濫解析結果というのは1時間ごとの浸水の深さを表示しています。

 

二瓶(東京理科大学):色は2種類で、浸水深10センチから30センチと、30センチ以上で色を分けています。左上に4時から5時と書いてあるのが車両の通行データの時間帯になっていまして、左下に浸水深。4時というのは2020年7月4日午前4時の浸水深です。青や水色が浸水の深さで、この時間帯ではまだ氾濫していないはずなので、色を塗られているのが球磨川の本川と支川の山田川・万江川ですね。おもに暖色系、上に凡例に載っていますが、車の通行平均速度になっています。とある区間の、車両の通行速度を色で表示していて、濃い赤は時速10km以下です。

 

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二瓶(東京理科大学):時間とともに浸水範囲が広がっていきますが、徐々に、車が通れている範囲が狭くなっていって、浸水範囲から移動していく様子がわかるかと思います。ただ、車が通っていてもシミュレーションでは浸水しているところもあります。私たちのシミュレーションの精度も課題があります。

 

二瓶(東京理科大学):「浸水範囲の際(きわ)で車がどんな挙動をしていたのか」というのは、平本さんから説明いただきます。

目 次

1.   車の通行データ浸水場所がわかる?

2.   車の平均速度がいつもと違う」 そこに異変はあるか

3.   「データ量」が課題 少ないサンプルは誤解のもとに

4.   発災時の車データ利活用 東日本大震災が大きな契機に

5.   発災時通行実績データ提供開始 トリガーはいつがベスト?

6.   発災時利活用の研究・分析 データ提供の促進がカギに

7.   悪用・乱用の懸念も 最適なデータ連携の道とは

8.   発災時のデータ集積基地構築へ 模索が続く

9.   令和2年7月豪雨×熊本県 地図上データ可視化の試み

10.  発災時リアルタイムデータ利活用促進へ プラットフォームは?

11.  「災害時」だけではダメ 「復旧時」「平時」の活用

12.  平時のデータなくして 分析は不可能

13.  水道・電気・ガス 生かせるデータは多様に

14.  「災害がこれから起こるかも」時から データ提供は可能?

15.  消防現場の視点 「発災後72時間のデータ活用に大きな期待」

16.  誤った判断のリスクも 慎重な検討を

 

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↑第1回検討会の議論はコチラから

 

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↑洪水予測システムに関する議論はコチラから

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