新米師匠 雷親方の挑戦
戸部眞輔アナウンサー
2023年03月10日 (金)
宇佐市出身、大相撲の元小結・垣添の雷(いかずち)親方が、ことし2月、定年を目前にした入間川親方から部屋を継承し、
「雷部屋」の師匠となりました。初めて臨む春場所を前に相撲部屋の経営に奮闘する姿を取材しました。
県産材を使った新しい看板
宇佐市出身の雷親方。引退から11年、44歳で幕下以下7人の弟子を預かる師匠になりました。
新たに掲げた部屋の看板には、大分県産のクスノキが使われています。県内で木材業を営む弟の雅俊さんから贈られました。
「僕の宝物ですね。本当に弟が僕にいいものをプレゼントしてくれました。この看板を光らせなきゃなと思っています。師匠としては1年生。自分の経験を教えられたらいいなと思っています」
大切にしている“けがをしない体作り”
(現役当時の垣添)
現役時代、スピードを生かした相撲で、小結まで番付を上げた雷親方は、同じ武蔵川部屋の横綱・武蔵丸などとの激しい稽古で力をつけました。その一方で、両ひざのけがに苦しめられた土俵人生でもありました。そんな雷親方が大切にしているのは、けがをしない体作りです。弟子たちには、稽古開始から1時間は相撲を取らせず、しこやすり足などで体を鍛えさせます。
年齢も性格も違う7人の弟子たち。雷親方は、一人一人に声をかけ、その力士に合ったアドバイスを送るようにしています。
「自分も現役時代、両ひざを手術しました。けがをすると、気持ちは前向きでがんばりたいと思っても、体がついてこないんですよね。気合が抜けるとけがもしやすくなりますし、集中した稽古で、本場所でけがをしない体を作っていくことが大事です」
“世界一”のおかみさん
師匠ともなると、後援者との連絡や弟子のスカウトなど、相撲部屋の経営のすべてに責任を持つため毎日が大忙しです。
そんな雷親方には、強力な味方がいます。妻の栄美(えみ)さんです。
実は栄美さん、相撲の経験者で、世界大会での優勝経験もあるトップクラスの選手でした。
今は、たくさんの人に雷部屋について知ってもらうために、情報発信を担当しています。
新たにSNSのアカウントを立ち上げ、稽古の様子やオフショットを公開しています。
雷部屋では、部屋のみんなでちゃんこを囲みます。
栄美さんは力士たちとの距離を縮めようと、積極的に話しかけています。
「若い子からしたら、私はお母さんたちと年齢が変わらないと思うんですよね。少しでも支えにならなければと思っています。たぶん親方に言えないこともあると思うので、そういうことをこれからは聞いていけるようにしたいです」
稽古は厳しく 土俵を離れれば家族のように
土俵を離れれば家族のように接したいという雷親方ですが、「稽古は厳しく」というのがモットーです。
自らスカウトしてきた序二段の雷道(いかずちどう)です。
東京の強豪校で柔道をしてきましたが、相撲の経験はありませんでした。柔道の癖で投げを狙うことがある雷道。
雷親方は、相撲の基本である「前に出る攻め」を徹底させます。
こうした稽古の成果が出て、雷道は先場所、初めて6勝1敗の好成績を収めました。
「前は相撲にならなかったんですけど、先場所はまわしを取って前に出るという相撲が増えてきたので、基礎をやったから、相撲ができていると思います。親方は優しくて、ちゃんと自分たちを見てくれているいい親方だと思います。部屋で一番強くなりたいと思います」
師匠として第一歩を踏み出した雷親方には、夢があります。
「一生懸命稽古して勝った時の喜び、負けたときの悔しさ、自分が現役時代のことを思い浮かべながら指導していきたいです。稽古も私生活も大変つらいと思うんですけど、頑張れば、いいことが倍になって戻ってくると考えてやってもらいたいです。今、大分の力士が部屋にはいないんですけど、ぜひ僕ががんばって勧誘して、ひとつでも番付を上げられるような力士を、また、お客さんから応援していただけるような力士を育てたいです」