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群馬 伊勢崎 途絶えた銘仙柄を現代に 若手経営者の挑戦

  • 2024年02月19日

 

色鮮やかな柄が特徴の群馬伝統の絹織物「伊勢崎銘仙」。明治から昭和初めにかけて一世をふうびしましたが、洋服の普及で衰退し、現在は生産が事実上途絶えています。その伊勢崎銘仙の華やかな柄を今によみがえらせ、全国に、そして世界に広めようと取り組む若手経営者の挑戦を取材しました。

(前橋放送局 記者 長谷川将万/2024年1月放送)

伝統の伊勢崎銘仙を洋服に

伊勢崎銘仙の着物

「銘仙織出す伊勢崎市」
上毛かるたの句でも詠まれている伊勢崎銘仙は、かつては群馬県民のみならず、全国の女性の間でふだん着として親しまれてきました。しかし、洋服の普及で衰退し、半世紀以上にわたって生産は事実上途絶えています。

デザインした服を手に取る村上さん

前橋市にあるアパレル会社の代表、村上采さん(25)は、伊勢崎銘仙を生んだ伊勢崎市の出身。地元が誇る伝統の柄を今によみがえらせ、新たに洋服として広めようと取り組んでいます。
 

「伊勢崎銘仙の1番の良さは、大胆な柄や色使いだと思うので、新しい形で文化を作っていきたいなと思っています」

きっかけはコロナ禍

コンゴ民主共和国で現地の人たちと交流する村上さん

村上さんが服作りに関わるようになったのは学生時代。大学のゼミの一環で、アフリカを訪れたことがきっかけでした。
 

コンゴ民主共和国の女性たちと

現地の女性たちが作る色鮮やかな生地に魅了され、この生地を使ってアパレル事業を展開しようと、5年前に、自身のブランドを立ち上げました。
 

伊勢崎銘仙の着物を着る村上さん

ところが、その直後に新型コロナの感染が拡大。海外への渡航はできなくなりました。国内での活動に目を向けた時に真っ先に浮かんだのが、同じく色鮮やかで、地元伝統の伊勢崎銘仙だったといいます。

「私のおばあちゃんも銘仙を織っていた織子さんでした。銘仙は私自身のアイデンティティーの1つになっているかなって感じています。衰退してしまったけれども、この着物を生地として使って、服を作ってみようと思いました」

銘仙柄の再現に挑戦

伊勢崎銘仙をいまにどう再現するか。

銘仙の復活に向け、活用したのがデジタル技術です。村上さんは、協力してくれる繊維工場と話し合いを重ね、銘仙の柄のデータ化に取り組みました。
 

繊維工場の関係者との話し合い

「このデザインの銘仙を復活させたいんですよね」

「はい、そうです」

繊維工場でのデータ化作業

柄を再現するため、オリジナルの銘仙の生地をもとにパソコンで細部まで調整。こうしてデータ化することで洋服を大量生産できるようになり、伊勢崎銘仙のデザインを多くの人に親しんでもらえるのではないかと、村上さんは考えています。

 

桐生市の織物工場で

試行錯誤を続けること、およそ1年。去年12月、柄のデータ化を終え、生地の試作品ができました。その仕上がりは村上さんの予想以上でした。

試作品の生地

「銘仙のような「かすり」の部分3Dになって出てきたんじゃないかといったイメージになっていますね。ワンピースの完成がイメージできます。絶対おしゃれ。かわいい」

銘仙の柄がワンピースに

銘仙柄の生地で作ったワンピース

「こちらが完成したワンピースです」

大胆な絵柄に、鮮やかな色合い。伊勢崎銘仙の柄がモダンな洋服としてよみがえりました。

完成したワンピースを試着する村上さん

村上 采さん
「首回りがポイントですね。シューッとなっててそこから柄が広がる感じがすごいかわいい。柄が大胆で大きいので、身にまとった時にすごくワクワクするんじゃないかなと思っています」

地元の伝統文化、伊勢崎銘仙の魅力を伝え継ぎたい。村上さんの地域への思いは今、さらに大きな目標へと向かおうとしています。
 

村上 采さん
「オリジナルのテキスタイル(生地)を通して文化をメイドイン群馬から日本全国、世界の方々が着て体験してもらって、思いを伊勢崎や群馬にはせてもらいたいなと思っています」

  • 長谷川将万

    前橋放送局記者

    長谷川将万

    2022年入局。記者2年目で県警・司法担当。大学から住む群馬での勤務。地域に密着した取材に取り組む。

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