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群馬 職場にテントやジム!? 記者が行く オフィス改革最前線

  • 2023年02月09日

職場のみんなでテントでキャンプ気分満喫
仕事のリフレッシュにジムへ!!

これ、オフの日の予定ではありません。
オフィスでの話です。

働き方の見直しと生産性向上をどう両立させるか。
それを実現するため、大胆なオフィス改革に乗り出す企業が県内でも出始めています。

その最前線を取材しました。

(前橋放送局 記者 長谷川将万/2022年10.11月取材)

オフィスの中にテント!?

高崎市にある文具やオフィス用品を扱う会社です。

新型コロナが日本で流行する直前の2020年の初め。当時業績が伸び悩んでいた会社を活性化させるために打った手の1つがオフィス改革でした。オフィスに入ると、目を引くのが人工芝の上に張られたテントです。

テントの中で行われているのは営業戦略のミーティング。ちょっとした非日常の気分でリラックスでき、会議の活性化につながっているといいます。
 

テントの中で会議をする社員
篠崎真央さん(社員)

「気分も上がりますし、きれいなオフィスで働けるって楽しいし、ワクワクします」

「言える化」が進む空間に・・・

上司と部下のコミュニケーションも取りやすくなっているということです。

伊藤尚さん
(上司)

「硬いコミュニケーション、プラスちょっとリラックスして話ができるスペースができましたので、使い分けをすることで、部下との関係性も築きやすくなりました」

篠崎真央さん
(部下)

「テントを使う場面ってキャンプなど心がほっとするような場所で使いますよね。オフィスで使っても心がほっとして、話す内容が変わったり、自分の伝えたい内容を素直に伝えられる感じがします」

なぜテントを?

昔のオフィス

以前は、よくある一般的なオフィスだったこの会社。
社内の意思疎通をよりスムーズにしたいと模索していました。

そうしたところ、テントのミーティングルームを取り入れたことで社内のコミュニケーションが活発になり、業績も上がった企業が県外にあると聞き、導入。
コロナ対策も徹底しながら進めているオフィス改革に手応えを感じているといいます。

見えてきた成果は

廣瀬一成 社長
「コミュニケーションの種類が増えたりだとか、多様な人間関係が得られたりだとか。結果として売り上げの中の粗利が変わりました。つまりそのお客さんに対する提案の品質ですとか、内容が良いものに変わってきているということです。これは間違いないかなと思っています」

働く場所に選択肢を

一方、コミュニケーションに加え集中をオフィス改革のキーワードとして取り組む企業があります。

オフィスを紹介する 青木稔 社長

教育や医療機関向けのデータ管理システムを手がける、こちらのIT企業。
2021年、オフィスを新築した際に目指した1つが、社員の集中力があがる職場づくりです。

ABWという働き方とは?

社員が働く場所を自由に選べる ABWの“集中”スペース

2階建てのオフィスは5階層に区切られていて、階層ごとにテーマが異なっています。

社員が集中できる環境を自主的に選んで働く=ABW(Activity Based Working)という働き方を取り入れています。社員は開放的な空間や少し暗くて落ち着いた空間など、仕事内容などにあわせて場所を選んで働くことができます。

仮眠スペースも

オフィス内に設けられた仮眠スペース

さらにソフト開発などで行き詰まった時にもう一度集中力を高めてもらおうと「仮眠スペース」も設けられています。

気になる作業効率は?

増山さんお気に入りの作業スペース

エンジニアの増山翔太さんはこの広々としたスペースでよく業務を行うといいます。

増山翔太さん

「視界が開けているというところもありますし、自分の空間っていうので仕事ができるので、ここはお気に入りの場所です。1.2倍とか1.5倍とか、そういったスピード感で仕事が進んでいきますので積極的に使っています」

社内にトレーニングジム!?

また、社内にはこのトレーニングジムがあり、増山さんも休憩時間などに利用しています。

増山翔太さん

「私にとっては、ストレス解消。頭をすっきりさせて生産性のある仕事に取り組めています」

残業20%減 入社希望2倍近くに

この会社では、社員が集中して業務に取り組むようになった結果、残業時間は以前よりも20%も削減され、生産性も高まったといいます。
また、オフィス改革前の2020年に比べて2021年は入社を希望する人が1.8倍に急増するなど人材確保にも成果が出ているといるといいます。

青木 稔 社長
「売上利益というのも伸びましたし、社員に定期的にとっている満足度アンケートの結果としても、いいスコアが出ているので、そういった意味ではオフィスを変えたことの効果というのは、大きいと思います」

今後のオフィスについて 専門家は

京都府立大学 石川敦雄 准教授

取材をしていて、オフィスで働く人たちがなぜ、楽しそうに仕事をしているのか理由を知りたくなり
環境が人に与える影響について研究をしている 石川准教授に話を聞きました。

長谷川記者

「コミュニケーションがはかどるオフィスには何が必要なのでしょうか」

石川敦雄 准教授

「心理学では、印象形成といって、人を取り囲む環境が人の印象に影響を与えることがわかっています。私が行った研究ですと、明るく暖かい印象の空間にいると、その人が協力的で寛容な思いやりのある人のように感じられるという研究成果があります」

「また、自然がある環境にいると心の距離が近くなるという成果も出ています。今はバイオフィリックデザインといってオフィスに自然の要素を取り込もうとする取り組みが増えています」

「自然が大事だということはわかりました。キャンプ用品の活用はどのようなことが期待できるのでしょうか」

「実は、人間は環境の持っている意味に影響を受けるんです」

「どういうことですか?」

「海外の研究に図書館の写真と、駅の写真を事前に見せて、その後の声の大きさを計るという実験がありまして、図書館の写真をみた人は、声が小さくなるという結果になりました」

「なるほど、、私も声を小さくしてしまうと思います」

「キャンプというもの意味を考えると、自由やリラックスして打ち解けるといったイメージが沸くかと思いますが、そういったイメージが仕事上のコミュニケーションにもプラスに働くといった可能性はあるのではないかと考えられます」

「自分の働くスペースを選べる取り組みが広がっていますが、どういった効果があると思いますか」

「人によって集中できる場所は異なるので、自分で選べるということが大切です。
また、これまでの研究で我々の幸福を何が決めているのか、といった研究がありまして、年収や地位といったものよりも、『自分で自分のことを決められること』が幸福に1番関わっているという研究成果が出ています」

「ABWなど働き方を選べる環境を整備して従業員を幸福にすることがまず大切です。従業員の幸福度が上がると、結果的にパフォーマンスも向上すると考えられます」

「フィットネスや仮眠室が社内にあるのはうらやましいなと感じますが」

「現代はグローバルに競争が進んでいることや、情報化が進んで仕事のスピードがますます速くなっているんです。これまでの週休2日でリカバリーするといった考え方から、もっと短い間隔でリカバリーをするといった考え方に変わってきています。オフィスの中にリカバリーの要素を含めていくかといったことは非常に大事になります」

取材を終えて・・・

オンライン会議ツールの普及など、自宅でも働ける環境が整いつつある今、オフィスに求められているものも変わりつつあると感じました。リモートワークによって、自分の好きな場所で働くという考え方が広まり、オフィスの中でも、自分の好きな空間を選ぶことが社員の満足度につながっていると取材を通して実感しました。

また、現代の働き方における地方の可能性も見えてきました。

働く人の話を聞くと、満員電車に乗らず、車通勤でプライベートな空間で好きな音楽などを聴けることで、通勤は苦ではないという人が多くいました。また、広大な土地を確保できABWなどの多様な空間をオフィス内に設けることができるというのも、地方のオフィスの可能性を感じました。

一方、地方の現場では若者の人材確保に課題を抱えている地域が多く、オフィス会改革を通じて地方で働きたいと思う人が増えることを期待します。

  • 長谷川将万

    前橋放送局記者

    長谷川将万

    2022年入局。記者1年目で県警・司法担当。大学から住む群馬での勤務。休日はキャンプや登山など群馬のアウトドアを満喫。

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