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群馬 DV被害相次ぐ その支援は?

  • 2023年04月27日

配偶者や交際相手など、身近な人に暴力を振るうDV=ドメスティック・バイオレンス。2022年の県内の相談件数は840件に上り、前の年より増えています。DVへの対策が求められるなか、支援にあたる県内の現場を取材しました。

(前橋放送局 記者 長谷川将万/2023年4月取材)

女性と子どもの支援にあたるNPO

前橋市にあるNPO法人「ひこばえ」です。

NPO法人ひこばえ

2009年からDV被害を受けた女性や子どもを支援してきました。

NPO法人ひこばえ 茂木直子理事長

「ひこばえ」を設立した理事長の茂木直子さんです。きっかけは友人がDV被害にあったことでした。

NPO法人ひこばえ 茂木直子理事長
「私は彼女の話を聞いていました。聞いていながら何も助けられませんでした。加害者から逃げてくる際にまずは逃げてくる場所が必要だと思いました。それでまずシェルターを作って命を守りたい、そう思いました」

大学に入り直し、心理学を学び、認定心理士の資格を取ったという茂木さん。

現在、DV被害者が避難できるシェルターを県内2か所に設置。家電などが備え付けられ、子どもを連れて生活することもできます。

ひこばえが運営するシェルター

さらに、自分の被害を理解するためのカウンセリングや、自立した生活を送るための就業や住宅探しの支援も行ってきました。

相次ぐDV相談

しかし、県内ではDVに関する相談が相次いでいます。
県警察本部によりますと、警察に寄せられたDVの相談件数は2014年をピークに減少傾向になりましたが、ここ数年はほぼ横ばいの状態が続き、去年は前の年よりも14件多い、840件となっています。
相談の中には「お酒を飲んでいる夫に暴行された」や「一方的に家を追い出されて、居場所がない」などがあるといいます。

DV減らすために支援は

こうしたDVで苦しむ人を減らそうと茂木さんたちが取り組んでいることが、「加害者更生」のプログラムです。

加害者更生プログラムで使われるワークシート

「怒りのコントロール」をテーマにした講義などを開催。
相手の気持ちや自分の体の変化などを理解し、冷静に対応するための具体的な方法を学んでいます。

デートDVの被害防止に向けて作成したチラシ

そしてもう1つ、力を入れているのが、中高生や結婚前の若い世代に向けた「デートDV」の啓発活動です。「デートDV」とは、カップル間で起こる暴力で、肉体的な暴力のほか、無視や侮辱、交友関係を監視する行為など多岐にわたります。

茂木さんたちはことしから、中高生などを対象に、デートDVを学ぶ特別授業を開催する計画です。
子どもの時から何がDVにあたるのか理解してもらうことで、将来、被害者や加害者になるのを未然に防ぐのがねらいです。

デートDVの特別授業に向けて準備を進めるメンバー

この活動に参加するボランティアの1人、但※馬加奈子さんです。(※「但」の右側は「且」)
子どもたちにも身近な被害に目を向けてもらおうと活動に取り組んでいます。

ボランティアの1人 但馬加奈子さん
「DVについてわからない、知らないということがすべてのDVの根底にあるのではないかと感じました。子どもたちを誰1人、被害者、加害者、傍観者にもさせない。DVによってつらい思いをする人が誰1人いなくなるように、このデートDV講習を進めていきたいと思います」

DV相談 男性の割合増加

一方、DVに新たな傾向があります。それが男性からのDV相談の割合の増加です。

県警によりますと、県内の男女別のDVの相談の割合をみると、2013年は6.1%だった男性からの相談が、去年は24%と占める割合が大幅に高くなっていて、4人に1人が男性からの相談となっています。

なかには「妻から殴られた」や、「脅された」などの相談があるということです。

しかし、県内には男性が身を寄せるためのシェルターなどはなく、課題となっています。

こうした課題についてDV問題に詳しい専門家に聞きました。

関西大学 多賀太教授

関西大学 多賀太 教授
「DV被害にあい、逃げないといけないという男性は経済的に自立できていない人も少なくないと思うので、相談できる場所がもっとあって良いと思いますし、男性にもそういったシェルターが必要だと思う。性別問わず個別に対応していく側面も必要かと思います」

また、DVを防ぐために必要なこととして、多賀教授は以下の4点が必要だとしています。
① DV被害者の相談、保護、自立支援
② 加害者の更生
③ 未然防止(予防教育)
④ 暴力を容認しない社会風土づくり

なかでも日本が遅れている分野があるといます。

関西大学 多賀太 教授
「日本では、特に加害者の更生については海外と比べて遅れている側面があり、今後、先進事例の効果の検証や、制度化に力を入れていく必要があると考えます」

  • 長谷川将万

    前橋放送局記者

    長谷川将万

    2022年入局。記者2年目で県警・司法担当。大学から住む群馬での勤務。地域に密着した取材に取り組む。

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